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今度のマ・ドンソクはワルいぜ!

大きな体と優しい人柄で愛されるマ・ドンソクが全身刺青のヤクザの親分役に!?暴力刑事とバディを組んで殺人鬼を追い詰めるバイオレンスアクションスリラー『悪人伝』

オールジャンルをどん欲に盛り込んだ一大エンタメ作

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無差別殺人鬼に襲われて一命を取り留めた凶悪なヤクザの親分ドンス(マ・ドンソク)と、組織のはみ出し者の暴力刑事チョン(キム・ムヨル)がバディとなって殺人鬼を追い詰める…というバイオレンスアクションスリラー。お話の中心はこの二人の凸凹バディものではあるのですが、例えば殺人鬼の足跡を追う犯罪捜査ものとしてのワクワク感、暴力団の権力抗争を巡るマフィアものとしてのスリリングさ、いくら無差別とはいえ巨漢のヤクザを滅多刺しにするほどの異常性を持つ殺人鬼のサイコスリラー的な恐ろしさ、この殺人鬼の残忍な手口や佇まいに漂う猟奇殺人ものの不気味さ、そしてド派手な喧嘩やカーチェイスなどのアクション映画としての楽しさもあるということであらゆるジャンルの面白い部分を盛りに盛った豪華丼のような映画になっています。

ワルい!強い!怖い!でもかわいい!みんな大好きマ・ドンソクの魅力が全開

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マ・ドンソクといえば持ち前の大きな体と優しい人柄で「気は優しくて力持ち」的なキャラクターで愛される俳優です。ある時は張り手で犯罪を取り締まる刑事、ある時は腕っぷしの強い愛妻家、ある時はアメリカ出身の腕相撲チャンピオン、などなどその丸太のような腕と巨大な拳を正義のために使う印象があります。しかしこの『悪人伝』で演じるヤクザの親分ドンスは凶悪かつ狡猾な極悪人。彼の登場シーンはボクシングのトレーニングから始まりますが叩いているサンドバッグの中から血が…!とか、別の組の生意気な部下を殴るのかと思いきや前歯を…!など"絶対に敵に回してはいけない怖い奴"であることを見せつけてきます。それでもバス停で雨に困っている女学生に自分の傘をあげたりするような愛嬌もあり不思議な魅力を持つキャラクターとなっています。

まさに全員悪人!一筋縄ではないワルいキャラクターたち

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ドンスと手を組むチョン刑事を演じるキム・ムヨルは元々線の細いソフトな印象の俳優さんですがマ・ドンソクとバディを組んだ時のバランスを考えて15kg増量したとのこと。(身体づくりの参考にしたのがトム・ハーディというのもいいエピソードです)猪突猛進な熱血刑事という感じですが悪人を追ううちに善と悪の境界線に立たされる微妙な心情を見事に演じています。そして殺人鬼役のキム・ソンギュが怖い!まるで爬虫類のように冷たい表情で獲物を襲う様子に震えあがりますが、瞳の奥には怯えた少年がいるような独特の佇まいが印象に残ります。このように「悪党と悪党が手を組んでさらに凶悪な悪党を倒す」という筋書きに強烈な説得力を持たせるそれぞれの"ワルい奴ら"が最高です。

大胆なかつさりげない演出で物語に奥行きを持つ意欲作

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ストーリーだけ見るとシンプルな犯罪捜査ものという感じですがグイグイ引き込まれるのは大胆かつ丁寧な演出が兼ね備わっているからです。例えば冒頭から何度も夜の都市をなまめかしく映すことでこの物語の舞台はただの町ではなく魔物が住む場所のような印象を与えます。撮影技術も冴えわたっていて、序盤の事件現場に到着したチョン刑事がスクーターから降りて被害者の遺体を見るまでは長回しになっており観客の緊張感を高めます。このような丁寧な演出の積み重ねが最高潮に達するのがこの映画のラスト!多くは語りませんが、映画史上に残る爽やかさと愛らしさと残忍さが同居する素晴らしいラストシーンです。ぜひご自身の目でご覧ください。

Text/ビニールタッキー

ビニールタッキー プロフィール

映画宣伝ウォッチャー。ブログ「第9惑星ビニル」管理人。海外の映画が日本で公開される際のおもしろい宣伝を勝手に賞賛するイベント「この映画宣伝がすごい!」を開催。Twitter:@vinyl_tackey

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