これも親ガチャ?(第17話)

以前、この部屋で勉強会をした時に使った棚を
俺の部屋から持ってくると身動きはできないが、
ちょうど6人がご飯を食べれる状態になった。
そして、真奈と中華料理がちょうど同時に届いた。
それから5分ほどで、真奈のお母さんと弟も着いた。
『相田君、気が利く!真奈もうお腹がくっつきそう!』
真奈は覚悟を決めているのだろう、
お父さんを気にせずマイペースを続けた。
『お姉ちゃん、自分家(じぶんち)より、楽しんでない?』
あまりの真奈の遠慮のなさに、弟も軽口をたたいた。
『おいしい!』真奈と茜がハモる。
『うん、美味しいわね。』
真奈のお母さんも、にこやかに話した。
‘女性の方が、腹が座ってるな~’
俺もお腹が満たされ始めて、そう思うことが出来た。
『河合真奈さん、なぜ、レジュメの結論を2番にしたの?』
俺は、真奈にふった。
『え~、食べ終わってからじゃダメ?』
真奈が仏頂面になった。
『だって、相田君が、柔軟に考えろって言ったじゃない。』
『確かに、柔軟だ。とても中学生の感覚とは思えない。
親の事もしっかり考えてる。
真奈さんは、大したもんだよ。
高校時代に蓄えを作ることによって、
世の中の変化に対応する準備が出来てる。
普通科に行くことによって、
専門学校や工業大学、就職の有利な大学と選ぶ余地ができる。
中央高校に行くよりも、受験に特化しない時間が作れる。
ただ、自分で勉強するのは大変じゃない。』
俺は、真奈のお母さんが理解しやすいようにと
ワザと解説を入れながら話した。


‘後日談だが、
弟の方が話をしっかり聞いていたらしく。
彼の進学時に、この時の話が出て3人で大笑いしたのよ!
『あの時のエビチリ最高だったんだよ!』
って弟が言うのよ。’と真奈が俺に話すのは翌年の事だ。


『相田君、褒めてくれて、ありがとう。
私も、たくさん考えたの。
中央高校に合格したからと言って、
いい大学に合格できる訳じゃない。
私は本当に中央高校に行きたいのかって自問したは!
そして、いい大学が私の欲しいスキルを
くれるのかは判らないって考えたの。
じゃあ、一番、損のない時間の使い方をしよう。
そう考えたら、単位制高校で、
夕方に授業を集めて、午前中にパートと探し物。
高校は1番で卒業。
これが、私のベストプランになったの。
結果は親が一番望む形になったけれど、
3年後に公務員に就職するとは限らないし、
茜さんみたいな看護師の可能性もあるし・・・・。』


俺は、そこで、話を止めた。
そして、食べることに専念するように促した。
みんな、黙々と食べて、
多めに注文したはずの中華は完食されてしまった。
真奈のお父さんが、
『ごちそうさまでした。』と言った。
『ごちそうさまでした。あははは!』
みんなの声がハモって、真奈の笑い声で終わった。

玄関で真奈家族を見送ると、
『お兄ちゃん、バイバイ』と真奈の弟。
『ごちそうになって、すみません。
受験が終わったら、真奈と2人であいさつに来ます。』
そう話したお母さんが、一番ホッとしていた気がした。
『私は、ム~君に、あんなに一生懸命、
親代わりできてないな~。』
茜が呟いた。
俺も真奈たちを見送りながら、呟いた。
『あかね~、俺はかなり感謝してるんだよ。
ありがとう。』
『ええ、そうなの!
じゃあ、肩でも揉んでもらおうかしら!』
『この感動的な展開で、そんな事言うかな~。』
俺は、調子に乗った茜に一言言ってから、玄関を閉めた。
かなり疲れたので、ゴミをゴミ袋に入れると、
洗い物をシンクに浸して
風呂に入り、早々にベッドに潜り込んだ。
珍しく夢を見た。
夢に出て来た男の子が誰だか解んないけど、
『ム~君、ありがとう。
僕も真奈ちゃんに何か恩返ししたかったんだ。
真奈ちゃんが後悔せずに済みそうで、
良かった。』
夢の男の子は確かにそう言った。
そこで目が覚めると
茜が俺に抱き着いて眠っていた。
なるほど、寝苦しかったのは茜のせいなのね。
今夜は、茜の頭をヨシヨシすることにした。
『ム~君、大好き。』寝ぼけた茜がつぶやいた。
俺は、15分くらいだろうか、
そのままの状態でリラックスしてから、
目覚ましを止めて、起きることにした。
1時50分。
ベッドから出て着替え始めた時に、初めて気づいた。
メチャクチャ勃起していた。
ジーンズを履くのに苦労したのよ。

今日は、有難いことに新聞配達だけで
終われる日だった。
部屋に帰り着くと、
茜はまだ俺のベッドで眠っていた。
その姿を見て、俺は更に
どっと疲れが出てきた感じだった。
俺がこんなに疲れてるのは初めてかも知れない。
ゆっくり寝たかったから、
タオルケットだけをベッドから抜き取って
俺はソファーで眠るつもりだった。
すると茜は寝ぼけて
『ム~君・・・おか・・えり・・グ~』と
俺に抱き着いて、妙な態勢のまま眠っている。
胸元がおもいっきりはだけていた。
茜の胸は結構大きい。
それが俺の下半身に密着して、丸見えなのだ。
普通なら、襲わない男なんていない!
そんな状況でも、
今までの俺は身体から反応を許されなかった。
ところが、珍しく俺の身体は、反応を始めた。
『えっ、なんで?』
俺は、永遠に
相田勉の呪縛は続くものだと思っていた。
ところが、今朝の相田勉は違った。
‘こんな美味しいシチュエーション、
これを逃がすともう無いかも!’
と眠たい眼を擦り、俺は思い直して、
茜を優しくベッドに戻したが、
まだ、茜は寝ぼけている。
次の瞬間、俺はめまいでその場に倒れてしまった。

トゥルルルル、トゥルルルル
俺は電話のベルで起きた。
『ハイ・・・・』俺は寝ぼけていた。
『相田君?どこか体調が悪いの?
連絡はちゃんとしないと!』
森先生の声だった。
『あっ、すみません。寝坊したみたいです。』
俺がたどたどしく答えると
『もう、お昼よ。顔を洗って、急いで学校に来なさい。
この時期の欠席は、痛いわよ。
それに、相田君目当ての生徒が、
もう、20人は職員室に来てるわよ。
最後まで、面倒を見てあげなさい。』
電話を切って思った。
‘なんで、目覚ましをかけてなかったんだろう?’
そんな事を考えながら、顔を洗って、部屋に戻ると
部屋のドアにメモが貼ってあった。
『ム~君、おはよう。
早く起きないと、遅刻するよ。
私は仕事に行きます。別に、怒ってないから。』  だった。

『メモで、起きれるかよ。で、怒ってないって、何?』
そう呟いて初めて記憶が蘇った。
そうだ、俺は不覚にも、
茜のベッド横に倒れ込んだまま
睡魔に襲われて気を失ったのだ。
遅刻は下半身を立てたまま爆睡していた俺への
嫌がらせなのだろう。
『はあ~』どっと疲れが増した気がしたが、
昼まで寝たから身体は元気になっていた。

つづく

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