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中学聖日記をリアルに検証してみる【短編小説】

「スマホ買ったんだけど、あたし全然分からないから、吉田ちゃん代わりにインスタ入れてくれない?」
「ついにガラケー壊れましたか?」
「違う違う、インスタで岡田健史垢作るの」
「アカとかよく知ってましたね。いいですよ」
「帰る前にごめんねー」
「いいですよ、別に。つうか、もう終わっちゃいますね、中学聖日記」
「観てる? 吉田ちゃんも」
「観てますよ、毎日」
「毎日! 吉田ちゃんもやばいね」
「やばいですよ」
「でもさ、吉田ちゃん中学生の息子いるじゃん。拒否反応とかないの?」
「いやいやいや、それはそれ、これはこれ、ですから。村井さんだって、大学生の息子さんいるでしょ」
「フィクションはフィクションだしね」
「不倫ものもゾンビものも好きですよ」
「ゾンビ?」
「はい、これがインスタのアプリです。ここで岡田健史って検索すると……」
「おお」
「ここをこうすると…‥保存されて、ほら、ここに」
「あぁ、へぇ〜、ホントだ。ありがとう。もおー明日から健史ロス決まりだし、よかった」
「ウチの息子、今15歳なんですけど。もし担任が息子さんが好きですって言ってきたらって、ふと考えたんですけど」
「うんうん」
「リアルに考えたんですけど、別にいいかなって」
「いいの?」
「だって、公務員で稼ぎも安定してるし。いまどきボーナス出るのありがたいですよ」
「え、結婚も許可できるの? 寛容だなぁ」
「つまりね、聖と晶も愛子さん次第なんですよ。許されない恋なのかどうかは。ウチは大丈夫です」
「でも、なかなか認められないでしょ」
「村井さんだって、息子さんが早く結婚するのと、いつまでも結婚しないの、どっちがいいですか?」
「そりゃぁ、まぁ、早くしてほしいけど。実は、あたしもリアルに考えてることがあるんだけど」
「はい」
「ドラマでは19歳の岡田くんが15歳の黒岩くんを演じてるわけじゃない? あの容貌でぐいぐい来られたら、そりゃぁ好きになるよ。でも、リアルな15歳に……」
「なるほど、理解しました。じゃぁ想像してみましょうか、リアルに。私たちだってほら、環境的に中学生と恋に落ちるチャンスはあるんですから」
「まあね。でも、中3男子が給食のおばちゃんと恋に落ちるって、どう?」
「ギャップですよ。給食のおばちゃんなんて、と思ってたら、なんか可愛い人がいるって」
「リアルじゃないよ、吉田ちゃん」
「でももし、私たちが今、中3男子に恋に落ちても、理性は保てますよね」
「だって、25歳じゃないしね」
「じゃぁ、帰りがてらリアル中学生見てみません?」
「なんか、犯罪じみてるけど、賛成」

「3年生はさすがにもう部活やってませんね」
「あ、でも下校する子たちが」
「私、実は授業参観とか苦手で、最近は全然行ってないんですよ。だから、驚いた。以外とみんな完成されてる」
「なんか、大筋出来上がってるね」
「見て下さい、あの子とか」
「へぇ〜、少年というか、もう青年だね」
「あの子がもし、村井さんのこと好きになっちゃいました、って言ってきたらどうです?」
「ちょっと、あたしに振らないでよ」
「考えて下さいよ。私はもう決まってます」
「え~、じゃぁ一緒に言う?」
「せーの」
「ありがとう」「ありがとう」
「だよねー」「だよねー」
「はぁー」
「……」
「……」
「吉田ちゃん。リアルには、無理だわ」
「無理ですね」
「なんて言うか……」
「分かりますよ。25歳だったら行けてたかもですね」
「……尊いのよ」
「尊いですね」
「尊いって感情がすごくリアルにわかったわ」
「汚してはいけない。汚れたおばちゃんが触れてはいけない」
「うん、そうだよね」
「じゃあ、帰りますか。リアルにゾンビがいる世の中を想像しながら」

   完

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