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竹林と筍(たけのこ)2 (短編小説)

 少女は当たり前のように玄関を開けて、ちらとこちらをみると、奥へと進んでいった。
 玄関をくぐると、実家に帰ってきたような懐かしい匂いがした。昔ながらの土間は広く、使った形跡が無いほどに綺麗にしてある。靴を脱いで奥に入ると、十二畳ほどの畳部屋に少女は正座でちょこんと座っていた。

「あなた、どうしてここに?」

 今まで声を聞いていなかったこともあって喋り出したことに驚いてしまった。少女にしては落ち着いた、暗い印象の声だった。

「この場所が興味深くてね。この辺りの地質を調査しているんだ。」

 私は大学に通う一人の学生である。学生といっても、今年で三十になるわけだが、どうしたことかこの土地の事が気になり5年近く調査をしている。

「そう。」

 まるで興味がないかのように、暖色の障子に目をやった。彼女の黒い着物と髪は、背景に穴が空いたようにぽっかりと切り取られ、実態のない空気と対話しているようだった。

「家族はいないの?」

 家族という言葉は正直嫌いだ。血の繋がりを嫌でも連想してしまう。私にとっては、優しく育ててくれた彼女が大切で、それを簡単に壊してしまったあいつらを殺してやりたいと今でも思う。

「どうして、そんな怖い顔をするの?」

「どうして、こんなところにいるの?」

「どうして、ここまできてしまったの?」

 彼女は壊れたように疑問を並び立てながら、こちらにゆっくりと近づいてくる。スッと眼前に彼女の顔が迫る。

「どうして、私は生きているの?」

 彼女の顔は首筋から茶色に変わり、パリッと音がすると、一枚ずつ剥がれ落ち、見慣れた顔付きとなった。

続く。

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