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ある男性編集者からのメッセージ

何度もしつこいが、新しい展開があったので、先日書いた文章について、もういちど取り上げておきたい。

ありがたいことに、読んだ人から久しぶりに感想を寄せてもらうことができた。古い女友だちは、他の用事のついでに、こんなメッセージをくれた。

「隅々までUくんらしさが出てましたw」

いつもなら、テキストと作者を同一視しないように、と釘を指すところだが(ウソ)、これはこれで嬉しい評価だ。

30代前半の女性編集者からは、こんなメッセージが来た。

「以前投稿されていたクロード・レヴィストロースの作品、初心者はどれから読むと良いでしょうか?」

今回はレヴィ=ストロースについて書いてないけど(笑)何かの刺激になったのであればよかったなと素直に思う。

実はもうひとつ、ひとまわりほど若い男性編集者からは、こんな物騒なメッセージが来た。

「あまり好き勝手書いてると刺されますよ」

Hagexさんの事件の後だから寒気がしたし、激怒してもいいかなと思った。

しかし、どうやらヤケ酒を飲んで泥酔していたときにあれを読んでしまったということで、後になって危害を加えるつもりもないしと詫びられたら、酔っぱらいに寛容ではない自分も許すしかなかった。

なぜなら、おそらく彼は、内容も理解せずに「いいね!」や「スキ」を押した人たちよりも、ずっと読めていると思ったからだ。

あの文章で使わなかった言葉で、あそこに込めたメッセージを書くと、こういう悪態になる。

「おいおい、林真理子と村上春樹と江國香織くらいしか読んだことがないやつが、編集者とか名乗るわけ? マジで? バカじゃねえのか?  顔洗って出直してこいよ」

「え、こんな鼻水みたいな薄い作文で、エッセイ名乗って1万5000円も取るの? ありえないだろ。女は20代のうちはチヤホヤされるかもしれないが、30でこの芸風は無理だわ。壁にぶちあたる前に結婚に逃げて、子どもにありもしない過去の栄光を語るつもりかよ。汗水たらして工場で働くお父さんに謝れ、トイレ掃除のパートであんたを大学にやってくれたお母さんに謝れ」

たぶん彼は、そういう言外のメッセージを受け取って、義侠心から腹を立てて、あるいは自分のかなり痛いところを突かれて反発したのだと思う(違うかもしれないけど・笑)。

そりゃ僕らの若いころにはパソコンもインターネットもスマホもなかったから、読書量も自然と増えた。

もちろん、いまの方が安く大量に読もうという意思があれば可能なのだけれど、消費資本主義の世の中では、誰もそんな面倒でまどろっこしいことはしない。

なので、さらっと読める林真理子の他には、せいぜいインスタのハッシュタグや、はあちゅうのツイートくらいで、それ以上文字を読む時間なんでないというのが現実だろう。

最近は編プロを経てライターになる人も結構いるが、昔みたいに幅広く大量に書かされながら鍛えられるという訓練もせず、有名人に話を聞いてそのまま書き写してインタビュー3万円一丁上がり、私ってスゲー(スゲーのはお前じゃなく話した人だろ)みたいな感じの下手くそな原稿が蔓延している。

しかし、いやしくもライターだの編集者だのを名乗る人間は、もうちょっとまともな読書体験がなくていいの? そんなクソ狭い観測範囲しかないのに「自分は自由に書いている」なんて言ってていいの? というメッセージがあそこにあったのは確かだ。

常日頃から、彼のような編集者を密かにバカにしていたのも確かだ。それを彼は敏感に読み取って、あまりの悔しさから逆上して失言をした――。本当はどうだか知らないけど、そう理解して温かく見守るしかない。

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