マガジンのカバー画像

耽美な、あまりに耽美な

10
しゅき……ってなった文章たち
運営しているクリエイター

#短編小説

【超短編小説】眠り姫、もしくは不眠症患者が見た夢

【超短編小説】眠り姫、もしくは不眠症患者が見た夢

 コネチカットの大学に通っていた一時期、ぼくはひどい不眠症に悩まされたことがあった。眠り姫を見たのはそれとちょうど同じ頃だ。

 秋の午後、ぼくは木立に囲まれた図書館にいた。レンガ造りの壁には木漏れ日がまだら模様を作り、閲覧室では広々とした空間を静けさが満たして、あるかなきかの咳払いや囁きだけが空気を震わせていた。立ち上がった時、ぼくの視線はふとひとりの女子学生に惹きつけられた。彼女は机の上に突っ

もっとみる