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詩 poem『時』(504字)過去はもはや存在せず、未来はいまだ現れない

俺に残されている時間は、あまりにも少ない
俺の過去は俺の皮膚にのって、俺の体にあまりにも密着しすぎている
俺には過去はない
未来はもう見放されている
俺に残されているのは現在でしかない
未来を信ずるのは、愚かなことだ
未来とは希望そのものであり、俺はあらぬ希望を放擲したのだ
俺に残されているのは、過去の希望そのものであった現在でしかない
鏡をのぞいてみればすべての時間がわかる
鏡は永遠であり、過去と未来を照らす魔法の器具なのだ
我々が永遠の時間を獲得するのは、現在という時間の迷路の中でしかない
我々が鏡の前に立つ時、現在は茫漠として、その時を失うのだ
我々の体験は無価値なのだ
迷路の中でいくらあがこうと、我々の行為はすべて無価値なのだ
価値は畢竟、廃墟にしかありえないのだ
俺は狂気に走ろうというのか
いや俺の頭脳は明晰で、俺の行為と言葉は意味に満ちている
どうして俺が狂っているといえよう
俺はますます真実を見、ますます狂気を見つめるのだ
過去は俺にとって薄っぺらい皮膚のようなものだ
俺の体にピタッと貼りつき、一刻一刻と死んでははがれてゆく
俺の毛穴を通して皮膚の下にもぐり込んでゆく鄙猥なものもある
俺はそれを経験と呼んで軽蔑してやるのだ

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