HuiFa ホイ・ファ

クリエイター名(pen name)は、地上のとある場所から命名。  原義は flowe…

HuiFa ホイ・ファ

クリエイター名(pen name)は、地上のとある場所から命名。  原義は flower market

最近の記事

掌編小説『おじいちゃんと呼ばないで』(858字)初夏 日曜日の散歩。児童と子犬の風景。一話完結

 雪国の春はほこりっぽいが、初夏の頃は何度かの雨に洗われて、街並みも木々も輝くようになる。  日曜日、洗濯や掃除を終え、昼食前散歩に出かけた。  公園の階段を一段飛ばしに駆け上がる。右膝に疾患があり、ジョギングは出来ないが、階段を駆け上がるのは苦ではない。木々の間から住宅が見え隠れする。「こんにちは」。すれ違う人と挨拶する。台地の上の芝生に陽光が射す。端に展望台がある。そこで息を整える。公園内を一周する。桜やツツジの季節は終わり、並木道に日の光が揺らぎ、すがすがしい。  散

    • テクノロジー『IT革命前夜』(827字)元システムエンジニアの思い出。読み切り

       アラン・ケイというIT革命史の上で欠かせないエンジニアがいる。  私は退職後、放送大学に入り理工学系の学び直しを始めた。その中で面接授業・情報科学史を受講。  講師は、アラン・ケイが描いたという絵をスライドに映した。子ども二人がそれぞれアイパッドのようなものを持っている。マシン上に複数のロケットが踊っている。講師が聞く。「この子たちは何をしていると思います?」描かれた年は一九六八年。未来を予言している絵だという。  受講者はお絵描きソフトで遊んでいるんだろう、と答えるのが

      • 掌編小説『ふんわり』(773字)失踪したA君。彼が語った奇跡。一話完結

         A君が出社してこない。電話にも応答しない。どうしたのだろうと、同じ班の男女二人が彼のアパートを訪ねた。  チャイムにも応答しないので、管理人に連絡を取り、合い鍵で中に入った。  ドアを開けた瞬間、三人とも声にならない声を上げた。目の前にゴミの壁がそそり立っていたのだ。同僚の女性は、彼の軽妙な一面を知っていただけに、異臭の山を一瞥して「怖い」と立ちすくんだという。  意を決して同僚二人が靴のままゴミ山に分け入る。孤独死の可能性を感じながらも彼を探し回ったが、見つからなかった

        • 詩 poem『時』(504字)過去はもはや存在せず、未来はいまだ現れない

          俺に残されている時間は、あまりにも少ない 俺の過去は俺の皮膚にのって、俺の体にあまりにも密着しすぎている 俺には過去はない 未来はもう見放されている 俺に残されているのは現在でしかない 未来を信ずるのは、愚かなことだ 未来とは希望そのものであり、俺はあらぬ希望を放擲したのだ 俺に残されているのは、過去の希望そのものであった現在でしかない 鏡をのぞいてみればすべての時間がわかる 鏡は永遠であり、過去と未来を照らす魔法の器具なのだ 我々が永遠の時間を獲得するのは、現在という時間の

        掌編小説『おじいちゃんと呼ばないで』(858字)初夏 日曜日の散歩。児童と子犬の風景。一話完結