『つめたいよるに』収録、デュークを読んで

江國香織さん、『つめたいよるに』に収録されている、デュークという短編の感想を述べてみたいと思います。この作品は、高校時代に現代文の授業で読んで以来、心の本棚にずっと大事にしまってあるもので、ふとした拍子に読みたくなって、この本を手に取りました。

「私」は、死んでしまったデューク(飼っていた犬)が好きだったもの、彼を彷彿とさせる場所を、電車で出会った少年と巡って一日を過ごす。デュークにところどころ似ている少年は、彼を失った「私」の寂しさを紛らわす存在。
何も語らない、感情や思いすらも持っているのか分からないデュークが人間の姿で現れ、今までずっと楽しかったよ、と言葉にし、伝えにきてくれた少年にきゅんとした。今日一日ではなくて、「今まで」のことについて触れ、少年(デューク)のあたたかさと優しさを感じた。それと同時に、生きていた頃によくしてくれた、「私」への感謝の意をも表しているのではないかと思った。
こんな素敵な少年と、一日だけでもいろんなところに行ってみたいし、生きているうちにこんな素敵な経験をしてみたい。

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