小学校受験体験記(7)面接の心構え

 慶應義塾幼稚舎のように面接がない学校もありますが、たいていの小学校受験には面接がつきものです。面接は服装からカバン、スリッパにいたるまで「こうでなくてはならない」という噂がたちやすいですが、基本的には紺や黒を基調にした飾り気のない布のものであれば問題はないはずです。家で使っているであろうややくたびれたベージュの柄入りのスリッパを持参されていた方は目立っていましたが、紺や黒の布地の無地のスリッパであれば素材がやや光っていようといまいと、高さがあろうとなかろうと細かいところは関係ないように思います。

 それよりも大切なのは、面接できちんと答えることができるように練習をしていくことです。お子さんに毎日3問くらい「お名前は?」「好きな食べものはなんですか?」「お母さんにしかられるのはどんな時ですか?」など質問して、気軽に答えられるようにしておくと良いと思います。模範的な答えを練習させる必要などはありません。訓練されたような答え方はむしろマイナスになると思います。あくまで自然に質問に答えるための準備体操として頭をほぐしておくようなイメージです。

 親も練習が必要です。一番いいのは第三者に両親ともに模擬面接をしてもらうことです。特に偉い立場にあるお父さんであればあるほど、この模擬面接を受けることをお勧めします。部屋への入り方、座り方、座り姿が偉そうになっている場合があります。具体的に言うと、背中を垂直にして座っているのではなく、少しそっくり返っていたりします。こういう姿勢や仕草は、家族など近い立場の人は慣れていて気がつかなかったり、気づいても指摘しずらかったりします。普段通っているお教室でなく、模擬面接だけ他のところで受けてズバズバと指摘してもらうというのもいい方法だと思います。もちろん、どなたかに頼めない場合は夫婦でお互いに質問しあって練習するのも良いことです。

 実際に模擬面接で質問されると、事前に考えていた内容が口をついてでてこないことに驚かれる方も多いと思います。頭で認識していることと、話せることはイコールではありません。面接の練習をすると、そのあたりの連携がよくなるように思います。それでも予測できない質問がくるのが面接ではありますが、練習していたのとしないのとでは大違い。たとえば練習の時に想定外の質問に慌ててしまったことがあれば、「そうですね、その点についてですが」と言いながら答えを考えようなどと、自分なりに対策をたてることができます。質問に答える練習をしていたことは必ず助けになります。

 内容については、お子さんの性質について夫婦で共通認識を持っていることも大事です。受験前の時期は「ここを直して欲しいなあ」というところが目について、お子さんの長所を見失ってしまっている方が少なくありません。日々の暮らしの中で、お子さんの「ここが素敵!」というところがあったら、エピソードとともに記しておいて、面接の前に見返したりすると、「どんなお子さんですか」といったような質問があった時に自然にアピールできるように思います。短所も長所の裏返しといったかたちで認識して話ができると、親のあたたかな視点が伝わると思います。

 願書はコピーをとって手元にあるかと思います。願書をよく読み返し、学校の志望理由とお子さんのアピールポイントをしっかり頭に入れて臨みましょう。学校側はものすごく願書を読み込んでいます。小学校だけの学校は6年間、中高や大学まである学校ならもっと長い年月にわたって関わりを持つ生徒を選ぶわけですから、本当に真剣です。願書と矛盾したことを言ったりすると願書の信頼性も揺らいでしまいます。小学校入試では面接がペーパーテストに負けないくらい重きをおかれているように感じます。しっかり準備して熱意と自分たちらしさを伝えることができ、そこが学校の意向ともマッチした時に合格に大きく近づくのではないかと思います。

 面接の練習は大事ですが、お子さんにあまりプレッシャーをかけすぎないのも大切です。お子さんへの面接の練習は常にやわらかい雰囲気で行い、言いよどんだり、変な答えを言っても、萎縮するようなしかり方などは決してしない方がいいです。当日はどんなことがあるかわかりません。お子さんなりに「失敗した!」と思ったら、おもらしをしてしまったり、泣いたり、何も話せなくなってしまうことすら起こり得るでしょう。理想の受け答えでなかったとしても、そのお子さんが自然に自分を出して対応することが一番です。

 ある小学校の学校説明会で「受験は水物です」と言われたことが記憶に残っています。まだ5、6歳のお子さんは体調も気分もちょっとしたことでものすごく変化します。とても良い状態の時にあたれば最高の評価、ちょっとどこか調子が悪かったらよくない評価がついてしまうのは仕方のないことです。体調管理や気持ちをうまくもっていく努力をするのはもちろんのことですが、それでも状態の変わりやすい幼児はどういう状態で面接に臨めるのか当日まで、いえ、もっといえばその時までわかりません。

 どうであれ、お子さんを責めないで欲しいと願っています。そして人生は幼稚園や小学校では決まりません。小学校受験のときに全然ダメと言われ、実際すべて受からなかったお子さんで、大学は超難関大学の医学部に進学した人もいます。小学校受験で合格した人の中でも進学した小学校をやめて公立小に転入し中学受験した人、日本を飛び出して海外の学校に行った人などいろいろです。どんな結果が出てもお子さんに寄り添って、その時のベターな選択をサポートしてあげることが大切ではないかと思います。

 国立小は抽選があります。私立小は校風との一致不一致が重視されます。そう考えると努力だけではない要素もからんでいるのが小学校受験です。できる限りの準備をして、でも気持ちを楽にして臨まれるのが一番かと思います。これを読んだ方にとって一番いい進路が見つかることを祈っています!

 


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