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『☆』を読み終えたので未読の人にオススメしたい

◼️どこから書きはじめればいいのか

『☆』(ezdog.press/star)を読み終えた。最高だった。マジで。『☆』は間違いなく面白い。

もし見ず知らずのあなたがこの一文を読んで素直に「読んでみようかな」と思ったなら、ここから先の私の文章を読む必要は全くない。すぐにリンクを辿って読み進めることをオススメする。
すべて無料で読めるし完結している。

もうちょっと『☆』のことを詳しく紹介してよ、という人はこの先の駄文にお付き合い願いたい。どれくらいこの小説の魅力を伝えられるか自信はないけれど。

既に読んだよ!という人はなおさらこのnoteを読む必要はない。『☆』を何度でも周回すればいい。私もこれを書き終えたら2周目に入る。ただしこれをきっちりと書き終えてからだ。読み終えたものの義務として書く。あるいは使命として。

◼️あらすじ? あらすじぃぃぃ!!!

通常であれば、物事の順番としてあらすじなんかを書くのであろうが、ここはひとつ、あえて言わせていただくとすれば「あらすじなんか必要ねえ! そんなものはワニにでも食べさせてしまえ!」である。

読書を趣味にしていると、読みたい本はそれこそ降って湧いてくる。巷に本はあふれている。Twitterでは読書アカウントが色んな本を紹介してくれるし、検索すればAmazonだって Wikipediaだってあらすじ登場人物ネタバレすべて教えてくれる。それを見て「ああ、こういう本なら好みに合うな」「好きそうな感じだから読んでみたいな」とかそうやって本を選ぶのが当たり前になってる。

何の前情報もなく、私が目にしたのは「最初の一行でヤバい」(Twitterは誇張の宝庫だ)「今なら全て無料で読める」(娯楽はタダにかぎる)そしてTOP pageに掲げられた「架空のロック歌手を巡る…ドタバタ劇!」それだけだった。
そしてその情報のなさが、いかに素晴らしい読書体験をもたらしてくれたことか! 感謝します!
あらすじなんかな、読み進めればついてくるんだよ!(自明)
なので私も内容については多くを語らずにいたい。ごめんね。

◼️じゃあどうやって『☆』という小説を紹介していくのか

まさかとは思うが、みんな筋だけが小説だと思っちゃあいないだろう?
私が最初に『☆』に参っちゃったのは文体のリズムだった。

作者のイシュマエル・ノヴォーク氏は『☆』を

おおよそ23万字の日本語で構成された一枚の音楽アルバム

氏のTwitter @TetheredXn3hb から

そう表現した。
アルバム。それは1枚のdisk。
ただし私にとってはBlu-rayだった。
文章のリズムが、私の脳みそから勝手に、なけなしのアメリカのイメージを引っ張り出してくる。普段、海外ドラマも洋画もほとんど見ないのに、貧弱な記憶を繋ぎ合わせて『☆』を映像化してしまう。

こんなことってある?
文章を読むスピードよりも頭の中の映像化を早く感じるだなんて!

比喩も固有名詞も理解しなくていい。文章のリズムの心地よさに全部任せて身を委ねてイメージの船に乗せられてどんどん加速していく。スプラッシュマウンテン!
ジェットコースターとは違うんよ。もうちょっと緩めの快感で「ああ〜ずっと浸っていたい〜」って思ってしまう感じ。そのくせ「もっともっと」と加速していこうとする。脳が、勝手に。

そんな感じだから、脳内メモリがぎゅんぎゅん食われちゃって、7話まで読んだ1日目はともかく、2日目は14話で1回お昼寝しないと次に進めなかった。1時間半で起きようって思っていたのに2時間半寝てるしよ! 夜は夜で『☆』を24話まで読み終えて、就寝しようとしたら脳みそのバックグラウンドで何かがメモリを食ってて眠れないんだわ!(2時間半も昼寝したせいです) めっちゃ『☆』に関する感想が浮かんでくるから布団のなかでスマホにメモしてた。

ていうかこんな自分のことは本当はどうでもよくって。どうでもいいんだが、自分語りをしないとこの小説がどういうものなのかを伝えることができない。私の力では。
最初は、小説の筋と表現を追っていって書く形式も考えたけれど、オタクなのでそれをすると『☆:注解』みたいなのができてしまう。(それはそれで読んでみたい気がする。自分が書くのでなければ) そんなん一生書き終わらんでしょう。

そんなわけで、7話まで読んだ時点で私は一度、最初に『☆』に接した印象を忘れたくなくてnoteを書いている。
“全くわからない固有名詞が出てくるわけでもない“
そう書いた。しかし読み進めるうちに、聞いたこともない知らない固有名詞はバンバン出てきた。けれどもそれは小説の面白さには何の関係もない! それを知らなければ読み進められないか? 否。断じて否。
とはいえ、モケーレ・モベンベってなんだよ、気になって調べたわ。コンゴのUMAだったよ。ひとつお利口になったわね。物語を読む流れをとめたくなかったから、ほかはろくすっぽ調べなかったけど。

だけどね、全く逆のことを言うようだけど、この固有名詞の積み重ねがリアリティをつくるのよ。過不足ない丁寧な描写と登場人物のテンポのいい会話、洒落ているけど突飛でない比喩。知っていても知らなくってもいい固有名詞が、そういうのにちょっと付随してるだけで「物語がここある」って感じるわけ。神は細部に宿る。
と同時にストーリーはファンタジーでもある。話自体はシリアスな気もするけど、とにかく明るくって気持ちいい。

そしてラストまで読んで、私は「あ」ってなった。それからタイトルを見て笑っちゃうわけだ。
この小説はタイトルにルビがない。あるのは記号。だから「ほし」と読む人もいれば「スター」と読む人もいるだろう。ロック歌手の話だから、と私は「スター」と読んでいた。なんと読んでもいいと思うし、間違いではない。ただ本当に最後まで楽しませてくれた!と思っただけだ。

◼️おわりに

Twitterでは言葉はインフレする。オタクは平気で強い言葉を使う。私もオタクの端くれだから強い言葉を使ったりするけれど、のべつまくなしってわけじゃあない。時と場合を選ぶ。そして今がその時だと思う。
イシュマエル・ノヴォーク氏は『☆』を生み出した創造神である。だから今後、氏を神と呼んでもなんら差し支えない。
普段は可憐にひっそり咲く堅香子のようにインターネットのすみっこに佇んでいる私が、今回ばかりはこのように言わせてもらう。

『☆』を読むべし!
OKに同意、と言え!

というわけで、これで心置きなく2周目に入れるんだわ♡ 30話までは脳みそに変なブーストがかかっていたから、ちゃんと読み直します。
ここまで読んでくれた人ありがとう。

追記
無料公開期間は終了しちゃったので、興味を持った方は書籍を買って読むしか方法はないよ。


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