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仕事を利用したトレイルランニングにおけるメンタルトレーニング

建築設計監理の仕事は、図面を引くだけではない。複雑なプロジェクト管理、クライアントの要望に応えるための綿密な計画、そして細部への徹底したこだわりが求められる。これに加えて、時には納期との戦いが加わり、精神的な負荷も少なくない。そんな中、私が見つけたストレス解消法がトレイルランニングだ。だが、ただ走るだけではつまらない。どうせなら仕事で培ったスキルを生かして、メンタルのトレーニングとして活用してみようと思い立った。

まず、ランニング前にコースを設計図のように緻密に分析する。高低差、急カーブ、障害物の位置、すべてを頭の中でシミュレーションする。ちょうど、建物の設計図を頭の中で組み立てるのと同じだ。こうして、走る前からトレーニングは始まっている。実際に走り出すと、仕事のように全てが計画通りにいかない。登り坂が急すぎたり、予想外の泥道に足を取られたり。それでも、ここで培われるのが「設計ミスから学ぶ力」だ。ランニング中の失敗も仕事と同様、修正しながら進むしかないのだ。

最初の急勾配に挑む時、頭の中でクライアントとの打ち合わせを再現する。「このデザインは少し難しそうですが、どうにかなるはずです!」なんて強気な自分を思い出しながら、重い足を引きずって進む。おかしなことに、走りながら頭の中では次のプロジェクトのアイデアが浮かんできたりもする。頭のクリアさが走りで磨かれていくのを感じる瞬間だ。

また、走る途中で遭遇する予期せぬ課題――たとえば、倒木や崩れかけた橋。これらを見て思わず、「おお、ここにも設計のミスか?」と一人ツッコミを入れてしまう。こうした障害を乗り越えるのは、まるで現場での予期せぬ問題に対処するのと同じだ。実際の現場でも、設計通りにいかないことはしょっちゅう。それでも、どうにかして解決策を見つける。このプロセスは、ランニング中でも同様で、体力だけでなく頭も使わなければならない。

下り坂に差し掛かると、もう一息。だが、ここでも油断は禁物。まるでプロジェクトがほぼ完成している時に発生する突然のトラブルのように、何が起こるかわからない。足を滑らせないように慎重に進む。これも、精神のトレーニングだ。無理にスピードを出すのではなく、安定感を保ちながら進むことが重要だと自分に言い聞かせる。

最終的に、ゴール地点にたどり着いた時の達成感は格別だ。仕事でもそうだが、やっとの思いで一つのプロジェクトが完成した時の感覚に近い。振り返ってみると、トレイルランニングの全過程が仕事そのものと重なっている。計画を立て、予期せぬ事態に対応し、最後まで諦めずに進む。これが、建築設計の仕事とトレイルランの共通点だ。

「仕事を利用したトレイルランニングにおけるメンタルトレーニング」は、私にとってただの運動ではない。設計のスキルと忍耐力を同時に鍛える一石二鳥のトレーニングだ。そして、山道を走り抜ける度に、また新しいデザインやアイデアが浮かんでくる。それが仕事に戻った時、また一歩前に進む力となるのだ。

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