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走るとバカになる?ジョギング中の脳内パーティー

走ると頭が良くなる、なんて言うけれど、本当にそうだろうか?ジョギングを始めたばかりの頃、私はランニングを通じてクリアな思考や新たなアイデアを期待していた。ところが、現実はまるで逆だ。走り始めると、頭の中はまさにカオス。脳内では大パーティーが繰り広げられ、まったくもって賢くなるどころか、バカになる一方なのである。

まず、走り始めた直後にやってくるのが、やる気満々の「自己啓発スピーチおじさん」だ。「よし、今日は自己最高記録を出すぞ!限界を超えろ!君はやればできる!」とやたらと大声で叫び、やたらと熱血。普段の私ならそんな熱い言葉に感動するかもしれないが、ジョギング中の私は完全に別人。汗だくで息も絶え絶えなのに、このおじさんのハイテンションについていくのはしんどすぎる。それでも「もう少しだ、ファイト!」と脳内で大騒ぎしている彼の声に、つい自分も騙されてしまう。もうすぐ倒れるんじゃないかってくらい走り続けるのだが、実際のところ、その「もう少し」は果てしなく遠い。

そして次に登場するのが、「ついに解放されたダメな自分軍団」。やたらと楽観的で適当な連中が続々と現れ、あれこれとサボりの言い訳を考えてくる。「今日は無理しない方がいいよ。昨日の自分よりちょっとだけ走れれば合格だし、何なら途中で歩いたっていいじゃん!」と、甘い囁きのオンパレード。どうやら彼らはソファとポテチとコーラが大好きな過去の私の仲間のようだ。歩道のベンチを見つけると「さあ、休憩しよう!あのベンチ、最高だぜ!」と声をかけてくる。いつもなら一蹴するところだが、今日はそのベンチが妙に魅力的に見えて困る。

さらに走り続けると、脳内パーティーの参加者はますます増えてくる。「今夜の夕飯、何にしようかな?」という食いしん坊のクッキングおばさんが現れ、次々とレシピを提案してくる。「やっぱりカレー?それともパスタ?」と、関係ない話を始めてしまう。なぜこのタイミングでカレーかパスタの選択を迫られなければならないのか。どう考えてもジョギング中に考えるべきことではないが、無視しようにもおばさんの声は止まらない。あまりの執拗さに、ついには「今日の夕飯はカレーで決定!」と走りながら一人で宣言する始末。

そして、極めつけは、「音楽DJの謎のラジオ体操軍団」。彼らは突然現れて、頭の中で適当なBGMを流し始める。何故か「ジョギングに合う曲を」とは一切考えず、全くランニングに不適切な選曲を繰り出してくる。ラジオ体操の音楽をランニングのリズムに合わせるのは至難の業であり、頭の中でバランスを崩す自分が目に浮かぶ。でも不思議なことに、この軍団の音楽が流れてくると、ついつい足が止まってしまい、体操のポーズを決めたくなる。走る目的が完全に見失われる瞬間だ。

結局、走り終えた後に得られるのは、スッキリとした頭ではなく、ただの疲労と無駄に盛り上がった脳内パーティーの残骸。ジョギングをして頭が良くなるという話はどうやら誤解らしい。むしろ、走ることによって解き放たれるのは、隠れていたバカな自分たちの集まりであり、どんなに足を動かしても、脳内パーティーの終わりは見えないのであった。

それでもまた走るのだ。なぜなら、このバカ騒ぎこそが、私のジョギングの楽しみなのかもしれないから。

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