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4-6 スペインのディープな食とお酒の旅ベテランスペイン撮影コーディネーターのぶらり旅

5月11日 7日目 Girona(ジローナ)
  
今日からはTemp de flor 花祭り。今年は町の109箇所で花のインスタレーションが見られる。どんな風に飾ったのだろう?
まず手始めにサン・ダニエル修道院に行く。ここは普段訪れることができない修道院だが、この時期は花を飾り開放する。今年は白い糸を巻いた丸いフレームに赤い花を飾ったもの。古い建築物にとても似合っている。帰りに修道女から薦められ、彼女たちが作ったスポンジケーキを買う。修道女たちのレシピはどこでも伝統的で、素朴だがおいしいものが多い。Jardin de angelの辺りまで車で送ってもらい、私達はここから徒歩で回り始める。

回廊

大きな古い建物の入り口に人が少し並んでいるので私達も加わる。聞けば回廊だという。入っていくと楽器を使った花の飾りがあちこちにあり、生のクラッシック音楽が演奏されている。列を進み、ふと回廊を見ると、そこを横切る人が。なんとこれは大聖堂の回廊で、それは13年前にインタビューしたこの大聖堂に住む人だった。私の近くにいた人が彼と話しているので「Hola」と言うと、「いったいどうして君はこのジローナにいるんだい?」とすぐにわかった様子。信じられないような偶然、そしてご縁を感じる奇跡の再会を喜ぶ。「大聖堂の下は見たか?」「いいえ、今さっきこの辺りから見始めたので」「今年は日本人がすてきな花飾りを作ったから是非行ってみて」と薦めてくれた。これもまた偶然。お別れして列に戻り、外に出て、大聖堂の外階段を下から眺め、彼の言った所に行く。ひとつはアヤメを扇方に絵のように作ったものとその周りを飾る花器やインスタレーション。日本人の共作。その横にももう一つ日本人の作品があった。

日本人の共作

この祭りは1954年から始まったが年々あらゆるところから参加の申し込みがあり、大人気。日本からも参加者がいるとは。

 その後もあちこち見て回り、小休止にロカ兄弟のやっているRocambolescでグルメなアイスを食べる。私はこの祭りの期間限定フレーバー。ブラッドピーチ,白桃と煎じたバニラティー味のシャーベットにトッピングは桃のカタンビーナ、蝶々の形の蜂蜜のマシュマロと花びら。小さな幸せ。

アートなアイスクリーム

 この間ずっと考えていたのは、この街で大聖堂の彼に会ったからにはもう一人会いたい人がある、それはこの祭を1954年に始めた人。13年前の「世界ふれあい街歩き ジローナ」番組撮影時には既にご高齢だった。しかし彼女の家は今年も会場になっているので兎に角行ってみる。ユダヤ人街の細い路地の横にある家のパティオには、3つの異なったインスタレーション。一つはコルクの上に乾燥した蓮の花などをまるで海底のイソギンチャクや海藻のように仕立てたもの。もう一つは蘭などをふんだんに使ったピンクのインスタレーション。今まで見た中でこれが一番ゴージャス。もう一つはブラックライトを使った自然素材で作った大きな造花。どれも独創的で手が込んだ素晴らしい作品。

ブラックライト作品
蘭をふんだんに使ったゴージャスな作品
コルクベースの海底の作品

会場出口のボランティアの女の子に、「こちらの建物のオーナーはご健在でしょうか?」と聞くと、その横にいた女性が、「はい」と答え、以前日本のテレビで彼女の家でインタビューをさせてもらった事を話したら「今から会いますか?私は彼女の家の鍵を持っているの」とどんどん誘導して、遂にその方の家に連れて行ってくれた。実はこの女性がここのインスタレーションを作ったそうだ。またしても素晴らしい偶然。

ここを登ると彼女が

お目当ての女性はもう100歳で、耳は遠いが頭ははっきりしていて、私達の来訪をとても喜ばれ、30分以上も話した。その中でよく聞き取れなかったのが、実は彼女が良くする天照大神の話だと、後から来た息子さんが教えてくれた。彼女は他にも「水は答えを知っている」の著者、江本勝さんをとても尊敬していて、昔彼をスペインに呼んで、カンファレンスをした事があり、私が江本さんの事を随分前に知ったのはAちゃんの母親からだったという、こちらもご縁のあるつながり。私達に人生のアドバイスまでしてくれて、この奇跡的な再会のご縁にまた感謝したのだった。

反射板を効果的に使った作品

 新市街の方に段々移動していき、色々行ってみたがこちらの方はがっかりする物ばかりだった。最後にAちゃんが昨夜飲んでとても気に入ったお酒、ジローナ名産ラタフィアを買う。原材料は、6月24日のサン・ホアンの夜に採った緑の胡桃、スパイス、ハーブ。これらを乾燥しブランデー、シロップ、アニス酒に浸して、軽く蓋をして太陽の当たる屋外に40日置いて、漉して樽などに入れ2ケ月したら漉して出来上がり。蜂蜜のような香りと上品な味わいで、口の中に残る甘い後味がとても印象的。この土地の人たちは大切な約束をする時に握手をして、ラタフィアを一杯飲む。ラタフィアの意味は署名をした=約束した。ディープなお酒という彼女の旅のテーマにぴったり。

 Aちゃんの電車の時間前にSと駅で待ち合わせ、荷物をピックアップして駅でお茶を飲む。ここからマドリッドは4時間弱。そこはAちゃんが生まれてから高校卒業まで暮らした街。早速今夜から帰国までびっしりスケジュールが埋まっているらしい。彼女との旅はここでおしまい。


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