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"ドラ1上田希由翔は救世主になれるか"マリーンズの2023ドラフトを振り返る③

 大学選手権優勝投手の常廣羽也斗、最速158キロ左腕の細野晴希を中心に大豊作として注目された2023年ドラフト。今季オリックスに大差をつけられ2位に終わった千葉ロッテマリーンズは、来季の逆襲に向けドラフト1位で上田希由翔内野手(明治大)を獲得。今季チーム打率4位のマリーンズ打線を救えるのか考察していきたい。

-大学生内野手の1位指名は希少価値が高い

 近年の大学生野手の1位指名は以下の通りである。

2023 ロッテ   上田 希由翔 内野手(明治大学)
2022 西武    蛭間 拓哉  外野手(早稲田大学)
2022 阪神    森下 翔太  外野手(中央大学)
2021 中日   ブライト 健太 外野手(上武大学)
2020 阪神    佐藤 輝明  内野手(近畿大学)
2020 西武    渡部 健人  内野手(桐蔭横浜大学)
2018 楽天    辰己 涼介  外野手(立命館大学)
2016 阪神    大山 悠輔  内野手(白鴎大学)
2016 巨人    吉川 尚輝  内野手(中京学院大学)

 一覧からわかるように、投手や高校生の野手に比べて指名選手が極めて少ないと言えるのが大学生野手のカテゴリとなる。割合で表すと以下の通りである。


2010~2023のドラフト1位指名ポジション

世代に問わずドラフト1位のポジションについて見ていくと、投手が約7割を占めている。

カテゴリごとに見ていくと、高校生投手と高校生野手の割合をほとんど変わらないが、大学生投手の指名が非常に多いことがわかる。社会人は年齢の面から指名人数は15%ほどである。その中で大学生野手は10%ほど、さらに内野手に限ると4%と極めて少ない。希少なカテゴリとして上田には大きな期待がかかる。

-六大学野球の打者比較

 2011年~2023年ドラフトで指名された六大学野球出身(大卒プロ入りの支配下指名のみ)打者(全34人)と上田の大学4年間の通算成績について比較していく。

2023年指名の2選手比較

 まず2023年ドラフトで指名された廣瀬隆太(ソフトバンク3位)と比較すると以上の通り。本塁打こそ廣瀬の方が多いが、打率、出塁率、打点とすべて廣瀬を上回っており、今季の六大学野球を代表する打者であることは間違いない。

 全34選手の中で、打率.312(9位)、出塁率.409(8位)、OPS.922(5位)、BB/K 1.21(7位)と全て高水準である。その中で打点74は1位であり勝負強さが光る(打席数は11位)。

 ではその中で上田は現在活躍する選手で誰とタイプが重なるのか主成分分析を用いて調べていく。今回は積み上げ式の安打、打点、本塁打などではなく割合式の打率、出塁率、長打率、OPS、BB/K、K%。BB%、HR%、IsoD、IsoPを用いて比較していく。これらの数値を用いて主成分となる2つの変数を作成し、散布図にまとめた。その結果が以下の通りである。

 右に行くほど、長打が少なく、上に行くほど三振が少なく四球が多い打者という傾向が見られる。上田の近くに位置するのは、伊藤 隼太岡 大海茂木 栄五郎であるか。その中でも岡 大海は出場試合数が少ないため、茂木 栄五郎伊藤 隼太に酷似していることがわかる。


過去12年の六大学出身野手


3選手の成績比較

 成績から見ても非常に酷似していることがわかる。ここで茂木栄五郎伊藤隼太のプロ一年目の成績を見ていこう。

茂木 栄五郎
 117試合 打率.278 安打118 本塁打7 打点40 OPS.738
伊藤 隼太
  22試合 打率.148 安打8 本塁打1 打点5 OPS.401

 かなり対照的な数字であるが、茂木は1年目からショートのレギュラーを奪取しOPS.738を記録。チームの主軸として成長した。対する伊藤隼太は成績を残せず。レギュラー定着とはならないまま退団となった。結果から、必ずしも成績が予測できるわけではないが、茂木栄五郎のように1年目からレギュラーを張れる可能性は大いにあると考えて良いだろう。

-過去の大卒ドラ1

 近年の主な大卒ドラ1野手について1年目の成績を見ていくと以下の通りである。

西武 蛭間 拓哉 外野手(早稲田大学)
(1軍) 56試合 打率.232 安打46 本塁打2 打点20 OPS.573
(2軍) 41試合 打率.298 安打45 本塁打3 打点23 OPS.827

阪神 森下 翔太 外野手(中央大学)
(1軍) 94試合 打率.237 安打79 本塁打10 打点41 OPS.691
(2軍) 27試合 打率.364 安打36 本塁打3 打点20 OPS 1.021

中日 ブライト 健太 外野手(上武大学)
(1軍) なし
(2軍) 46試合 打率.211 安打30 本塁打3 打点10 OPS.600

阪神 佐藤 輝明 内野手(近畿大学)
(1軍) 126試合 打率.238 安打101 本塁打24 打点64 OPS.749
(2軍)    8試合 打率.273 安打9 本塁打1 打点5 OPS.749

西武 渡部 健人 内野手(桐蔭横浜大学)
(1軍) 6試合 打率.063 安打1 本塁打1 打点2 OPS.368
(2軍) 90試合 打率.228 安打71 本塁打19 打点64 OPS.772

楽天 辰己 涼介 外野手(立命館大学)
(1軍) 124試合 打率.229 安打72 本塁打4 打点25 OPS.639
(2軍) 9試合 打率.273 安打9 本塁打2 打点3 OPS.869

阪神 大山 悠輔 内野手(白鴎大学)
(1軍) 75試合 打率.237 安打47 本塁打7 打点38 OPS.723
(2軍) 49試合 打率.232 安打33 本塁打1 打点14 OPS.621

巨人 吉川 尚輝 内野手(中京学院大学)
(1軍) 5試合 打率.273 安打3 本塁打0 打点0 OPS.545
(2軍) 103試合 打率.258 安打95 本塁打4 打点39 OPS.698

阪神 高山 俊 外野手(明治大学)
(1軍) 134試合 打率.275 安打136 本塁打8 打点65 OPS.707
(2軍) 2試合 打率.143 安打1 本塁打0 打点0 OPS.286

ロッテ 中村 奨吾 内野手(早稲田大学)
(1軍) 111試合 打率.231 安打62 本塁打5 打点21 OPS.610
(2軍) 5試合 打率.350 安打7 本塁打1 打点3 OPS.931

 チーム状況との兼ね合いで出場機会に差はあるが、1軍である程度出場した選手は打率.230、OPS.650近辺を記録している。試合に出られればこのあたりの数字を期待したい。

-大卒ルーキー80安打・50打点の難しさ

 実際に上田が目標として掲げる「80安打・50打点」を達成した大卒ルーキー選手は過去10年にどれほどいるのか。調べた結果は以下の通りである。

(80安打)
2023 門脇 誠(巨人)83安打
2021 牧 秀悟(DeNA)153安打
2021 佐藤 輝明(阪神)101安打
2019 中川 圭太(オリックス)95安打
2017 京田 陽太(中日)149安打
2016 高山 俊(阪神)136安打
2016 茂木 栄五郎(楽天)118安打

(50打点)
2021 牧 秀悟(DeNA)71打点
2021 佐藤 輝明(阪神)64打点
2016 高山 俊(阪神)65打点

 80安打達成者は7人、50打点達成者は3人と非常に希少である。中でも、50打点達成者は新人王・新人特別賞を受賞しており、一気に飛躍できる可能性が高い。そう簡単な数字ではないが、達成者は数年レギュラーとして活躍し続けた選手が多く、ロッテで数少ない不動のレギュラーの座を掴むためにはクリアしておきたいところだ。

-まとめ

 今季は中村 奨吾が3塁コンバートし、ソト(前DeNA)が加入。昨季CSでサヨナラ打を放った安田 尚憲など1,3塁のポジション争いは激化。しかし、昨季は中村、安田ともに精彩を欠き打率は.230ほど。OPSは.650近辺であり、過去の大卒ルーキーの数字を見ても上田には狙える数字である。オープン戦から勝負強い打撃をアピールし開幕スタメンをつかみ取れるか上田 希由翔に注目していきたい。

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-参考



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