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自由の女神の足元は

2019年10月の終わり。私は母と弟とアメリカ合衆国のニューヨークに行っていた。ニューヨークを拠点に仕事をしている母の古い友人が、かねてから私たちを招待してくれていたからだ。思えば、その数か月後にはコロナウイルスの流行が始まったので、このタイミングを逃したらアメリカに行くことも自由の女神を拝むこともなかったかもしれない。

え?なんでアメリカ?

私が「ニューヨーク旅行に行く」あるいは「ニューヨーク旅行に行った」と、私と付き合いの長い友人たちが知るとみんな「え?なんで?」と驚いた。私が学生時代は中国語が専門で、中国に数回行ったりしていたので、私の行動傾向とアメリカやニューヨークが結びつかなかったのだ。

私もそれまで「いつかニューヨークに行こう!」と心に決めていたことはなく、招待してくれた母の友人が、ご自身の自宅を拠点に観光を勧めてくれていたからこそ、せっかくの機会だからと思って行ってみたのだった。

現地に滞在したのは数日間だったが、住んでいる人じゃないと行かないような場所へ行ったり、自分たちで地下鉄やバスなど公共交通機関での移動をしたり、ちょっとディープな旅だった。今回はその中であえてニューヨークのシンボル・自由の女神像を見に行った時の事について書きたい。

バッテリーパークからの出発

自由の女神像は、ニューヨークのマンハッタン島からフェリーで行くリバティ島にある。マンハッタン島南端のバッテリーパークからフェリーがでており、リバティ島まで20分程度だったか。

出発地のバッテリーパーク自体が紫色のアスターの花がたくさん咲く素敵な公園だった。そこにいたリスは人間に慣れすぎてて、通りすがりの観光客に直接両手を出して「餌をください」とねだっていてびっくりした。ディズニーランドにいるスズメよりも厚かましい仕草。

フェリーから臨むバッテリーパーク

リバティ島行きのフェリーに乗る前のセキュリティチェックは、9.11後の国際線搭乗前並みに厳しかった。たしかに自由の女神像はアメリカやニューヨークのシンボルなので、万が一のことがあってはいけない。

バッテリーパークからうっすら見える自由の女神

私が行った日は曇天、時々小雨でタイミングが良ければ、乗船前から自由の女神が遠くに見えた。フェリーで近づくにつれ、自由の女神が当たり前だがどんどん大きくなって見えてきて、わくわくした。

昔、英語の教科書に自由の女神についての説明文(in English)が載っていて、それを勉強していた頃は自分が本物を肉眼で拝む日が来るなんて思いもしなかった。そう思うと急に感慨深い気持ちになった。

世界的観光名所だけあって、フェリーにはいろいろな人種、国の人がいた。アジア系はとても少なく、自分たち以外に日本語を話す2人がすれ違った時は「お!」と思ってしまうほどだった。

たぶん世界一不味い〇〇は自由の女神の足元に

リバティ島に着くなり、私たちは空腹で船着き場近くの売店のテラス席で、軽食を買って食べることにした。具の少ないバゲットサンドを食べていた弟は「何か不味い」と言った。少しもらったら、たしかにバゲット自体も挟んであった具も味気ない。しかし挟んであった具の記憶が吹っ飛ぶほど、私の買った「蕎麦」がとんでもなくまずかった。

Vegan Soba Noodle

改めて「Ingredients」を抜き出して見ると、

Vegan Soba Noodles (Soba Noodle (Wheat Flour, Buck Wheat, Tapioca Starch, Water, Salt), Celery, Red Bell Pepper, Red Cabbage, Edamame, Scallions, Maple Syrup, Soy Sauce, Rice Vinegar, Vegetable Oil, Ginger, Sesame Seeds, Garlic, Paprika, Salt) Contains Soy, Wheat, Sesame

太字にした原料が不味さの元凶だった気がする。パスタじゃなくて、蕎麦で食べる不味すぎるペペロンチーノという感じで、半分も食べることができずに終わった。きっと世界一不味いそば。帰国後友人たちには、「世界一不味い蕎麦は、自由の女神の足元にある」と吹聴した。

自由の女神の本当の姿

不味すぎる軽食で腹ごしらえできぬまま、自由の女神像を見に移動した。自由の女神像をぐるりと回って見られるように遊歩道があり、そこを歩いて行くとリバティ島自体を一周できる。

私たちは自由の女神の右手側から、ちょうど反時計回りに歩いて見学した。自由の女神像は映像などを見て知っていたはずだが、思っていたよりも美しくて感動した。でも私たちは自由の女神像を見ながら、「自由の女神像をニューヨークで見ている」実感が無くて、お互いに記念写真というよりも証拠写真として自分たちと自由の女神像をスマホの画像に残した。

ゆっくり歩いて回り、自由の女神の後ろ姿を見て私は驚愕した。

右足!

彼女は直立してなかった。この瞬間まで自由の女神は直立していると勝手に思っていた。右足の裏側(サンダル)が見えていて、左足で一歩踏み出したところだったのだ。

私たちはリバティ島上陸までの予約(早くから予約すれば自由の女神像に上ったり、博物館も見学できる)だったので、見ることができていないが、実は足元には鎖もあるそうだ。その辺りも含めて「自由」を象徴しているのだろう。

かつて英語の教科書に載っていた説明文は、成り立ちや自由の女神の手元のアイテムについては書いてあったが、足元については記憶にない。ちゃんと授業を聞いていなかったのかなと思ったが、当時の同級生たちに「自由の女神像は直立じゃない」と言ったら、みんな驚いていて知らなかったので、私が忘れていたわけではなさそうだ。

こんなに有名な像なのに、知らなくて申し訳なかった。そしてニューヨークで現地に行かなかったら、知らずに終わってたかもしれない。

百聞は一見に如かず

「ニューヨークに行って自由の女神像を見て来た。」

この一文だと普通で定番の旅行をしてきたように感じる。でもその通りでありつつも、実はちょっと違ったりもする。現地で見て初めて認識することや発見することもある。私の場合は、それが蕎麦と自由の女神の足元だった。

この自由の女神像の見学は、私のニューヨーク旅行のちょっとした1コマでしかなく、自由の女神像はアメリカのシンボルだが、アメリカという国のほんの小さな場所でしかない。ここだけでも、いろんな発見や面白さがあった。つまりニューヨークという街、またアメリカという国をよく見て、楽しむにはまったく足りてない。

ニューヨークにそこまで行ってみたいと願ってきた訳では無い私が、もっといろいろ見て回りたい、アメリカの他の場所にも行ってみたいと思うようになった。行ってしまったことでより深く知りたくなる。アメリカは行った国であり、また行ってみたい国になってしまった。

余談・思わぬ収穫

ニューヨークを舞台にしたアメリカのドラマは多い。滞在中は「海外ドラマの世界に迷い込んだ気分」とよく言っていた。

自由の女神像以外にも、タイムズスクエアや地下鉄を乗り間違えて偶然通りがかったグランドセントラル駅、グッゲンハイム美術館やニューヨーク近代美術館も訪れた。

公共交通機関と自分たちの足で移動したので、私たちはその結果、帰国後以降ニューヨークを舞台にした海外ドラマを見ていると「あ!あそこは!!」と、背景を見てどこかわかる時がある。リバティ島へ行くフェリーが出るバッテリーパークの一角を見かけたこともあった。グランドセントラル駅や、その他に行った場所へ行く道すがらの通りも。

ほんの数日しかいないのに、知っている場所みたいに思うのも変な話ではあるが、思い出が鮮明でよく覚えているからだろう。ドラマの舞台になっている海外の街に自分が行ったことがある、っていう状況も楽しい。

#行った国行ってみたい国

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