符亀の「喰べたもの」 20221030~20221105

今週インプットしたものをまとめるnote、No. 111です。

各書影は「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

逃げ上手の若君」(8巻) 松井優征

鎌倉時代から室町時代への狭間、死を栄誉とする武士の時代に、生き延びることで英雄となった一人の少年の物語。第八十一回以来の登場です。なんでこの巻だけ版元ドットコムさんの画像が灰色一色なんですかね。

平野将監入道のキャラが良すぎました。回想と名乗りの2ページ、フリを入れても3ページでここまでキャラに感情移入させる手腕が見事すぎます。

最近ずっとロマンについて考えているのですが、その「ロマンの作り方」の大きなヒントになる描写だったと思います。まず、ロマンは何かが変化するところ、ストーリー上の「しかし」に当たる部分で生まれうる。そしてその変化には、キャラの意志が介在することが望ましい。別に「しかし」にせず「そして(現状維持)」でもよかったところを、あえて変化させようとするからロマンを感じる。例えば仲間が死にそうなときに臆病なキャラが奮起するのは、そのキャラの成長面では熱くてもロマンではないのかもしれません。

そういう意味で、この名乗りの変化というのは実にロマンチックです。別に瘴奸のままでも構わないにも関わらず、平野将監という武士の名を名乗る。その「あえて」を感じるからこそ、ここにロマンが宿るのでしょう。その前のページで「楠木正成のキャラクター描写、ギャグ、将監を名乗る意味」を「兼ね」ながら提示し「防御力」を高めているのも、実に見事です。


HUNTER×HUNTER」(33~37巻) 富樫義博

連載再開ありがとうございます。普通に話忘れたので今の家にある分も読み返しました。

分析しようとすればするほど、なぜこれで面白いのかわからなくなる作品です。定石におけるすべからず、例えば多すぎる文字や情報量をやらかしながら、それでも面白いからヤバい作品、ヤバい作者だと思います。

ただ一つ気づいたのは、この作品が基本会話またはモノローグで進むためか、どのコマもつながっていて唐突なコマがないんですよね。論理において振り落とされる瞬間がなく、つながり的に欲しい情報が来るので文章量が桁違いでも読めてしまう。

ですが、これはあくまで「防御力」的観点であり、本作を面白くする「攻撃力」についてはよくわかりませんでした。再チャレンジしたいので早く次の巻をください。


なんか、今週のインプットは論理論理しているというか、すごく頭でっかちな感じがして嫌ですね。これで的外れだったらもう本当に救いがないので、誰か正しいと太鼓判押すかいっそ殺してくださらないでしょうか。


一般書籍

経歴ゼロから始めるゲーム製作」 こっち屋

「『ゲームを科学的に分析し、理論に基づいた上で、最低限の努力で最大限の結果を得る』ことを目標に技術解説を目指」した一冊です。両日出展だと思い込んでいたためにゲムマで買えず、後日イエローサブマリンさんで購入しました。

ボードゲーム製作を夢見る方が読むには癖と毒が強いかもしれませんが、あけすけさとスケール感的にちょうどいい本な気がします。もちろんある程度の製作歴がある人にも有用な本だと思いますし、少なくとも私は年数回読み返したいと思いました。あとは委託でここまで売り上げられる方法を書いてくださると完璧。

個人的には、「原始的な気持ちよさ」として「優位性の宣言」が挙げられていたのが非常に勉強になりました。「原始的な気持ちよさ」を映画の文脈で学んだためか、これまでそれと「優位性の宣言」を結びつける発想がなく、特に衝撃を受けました。

これは余談ですが、各章で書かれている内容にあまり関連がない箇条書き形式の本であるにもかかわらず、各章が短い (のと内容が面白い) おかげでダレずに読みきれたのもよかったです。最近こういう箇条書き形式というかTips集のような羅列形式は途中で飽きてよくないと考えていたのですが、すぐ次に行ってくれればそこまで離脱しないものだとわかったのも収穫でした。


Designer Notes Let’s play! Oink Games #1 #2」「Designer Notes Durian」 Oink Games

オインクゲームズさんのデザイナーズノート2冊です。こっちは他10冊以上と共にゲムマで買えました。

体験をデザインすることがとにかく上手いなと思いました。特に、「ドリアン」の「ドラマを起こす」というキーワードは大事だと思いましたし、正直最近の拙作にはその考えが足りていない気もするので、もう一度意識し直したいですね。

他にもいっぱい買ってるので、定期的に読んではここに書いていきたいですね。まあ執筆時点で他ほぼ全部積んでるのですが。


Web記事

ゲームマーケットに初出展したけれど爆死せずに済んだ話

ミスボドゲームズの秋山さんの、ゲムマ2022秋出展レポートです。

有料記事ですので内容はぼかしますが、全体的に仮説を立てて事前準備をしたうえで臨まれたうえで結果への反省もなさっているのが伝わってくるnoteで、そりゃ初出展で完売するわなと感じました。特に、各ポイントごとに工夫された点を挙げられているブース設営の章は非常に参考になり、価値のあるnoteでした。


【ゲムマ2022秋】初出店の失敗と失敗と失敗とちょっと成功

アップグレードキット (ボードゲームのコマのような豪華版コンポーネント) を頒布された徹夜朗読会さんの、ゲムマ2022秋出展レポートです。

アップグレードキットだからこその課題が多い印象でしたが、「作品の展示は動線に合わせる必要があった」の部分は身につまされるところがあり、私も反省しなくてはならないなと感じました。


ゲームマーケット、Tweet見てると潮目が変わってるのかなあと感じたので私見と仮説のメモ

ガブル」の製作者であるAkiさんが、近年のゲームマーケットや個人でのボードゲーム販売について見解をまとめられたツイート群です。

基本的にインディーズとしてしっかり販売していきたい人向けの内容かとは思いますが、「ゲームルールに一貫性があるもの(マダミスや大喜利)や、説明だけでわかるものが売れやすくなって」いるのではという部分などは個人的にも興味深いですね。


自分の中でゲームマーケットのときに意識してること

遊びゴコロさんが、これまでの売り子経験を踏まえてポイントを6つまとめられたツイート群です。

基本的に私のやっていることに近く、同意できる内容でした。「流れを説明した後にそのゲーム独自のポイントを述べる」部分は、このゲムマ2022秋ではできていたものの言語化できていなかった内容であり、ノウハウ化していただいてありがたかったです。おかげで、この順番で話すと「ABTテンプレート」の形にもなるためストーリー形式になってわかりやすいのだろうと、さらなる考察もできました。


いち来場者個人が体験したこと・発見

サイコロヒーローさんが、出展者目線ではなく来場者目線からゲムマについて感じたことをまとめられたツイート群です。

終盤に紹介されている「スケッチブックに特大フォントで『ワンフレーズ』書かれたものを掲げる」というやり方が、面白いなと思いました。制作コストが低いうえ入稿が不要でタイムリミットが事実上ないにも関わらず、情報量が比較的多く参加者さんに楽しんでいただくこともできそうと、非常に優れた方法に感じました。もし私が2023春でスケッチブックを振っていたら、そういうことだと思ってください。


第2回 新作マーダーミステリー大賞 募集要項

グループSNEさんの「新作マーダーミステリー大賞」の応募要項です。審査基準部分が「これが審査員が考える『マーダーミステリーのおもしろさ』」であると評するツイートを受けて読みました。

特に、「全体目標と個人目標との間でジレンマを感じられるか」という視点はなかったため、面白いなと思いました。マーダーミステリーを制作する機会が来ましたら、再読しようと思います。


マスク不着用で即負け? ゲームルールと大会ルールと運用ルールとジャッジング~アナログゲームマガジン~

規定にあるマスク着用をしていない時間が長いため反則負けになった」件を踏まえ、ルールの分類や意図について書かれたnoteです。

プレイヤーが知れるべき「ゲームルール」「イベント大会ルール」と明文化が必須ではない「運用ルール」「ジャッジング」に分類し、それぞれの重要度を優先付けする体系が、実に勉強になりました。私は「ゲームルール」のみ考えればいい段階のはずですが、今後必要に迫られた際は見返したいnoteでした。


週に1度の質問で単語を当てるゲームをやったら大変なことになった

週に1回しか回答できないアキネイターを企画したらルールをハックされたというレポートnoteです。

ルールの隙間を突くことの恐ろしさを表しつつ、単に読み物としても面白い良記事でした。この記事の教訓として、「ルールとは制約であり、その範囲内でありながら制限されているように見える権利を拡張することがゲームを壊すタイプのルールハックである」と言えるかもしれません。


先週に引き続き、今週もゲムマ終わりっぽい記事や本からのインプットが多かったですね。ちゃんとボードゲーム制作者っぽいことしててえらいね。

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