符亀の「喰べたもの」 20210207~20210213

今週インプットしたものをまとめるnote、第二十一回です。


漫画

僕の心のヤバイやつ」(4巻) 桜井のりお

ラブコメのヤバイやつ。厨二病真っ最中の男子市川とスクールカースト頂点の女子山田とのラブコメ。破壊力がヤバイやつ。

恋愛強者っぽいけど天然な山田の設定がうまく、山田の行動にたぶん市川への好意が隠れているはずだけどワンチャン偶然でやっただけかもしれないという塩梅で、SNSでの考察をうまく盛り上げられています。市川も、序盤のギャグ描写からくるヘタレ感が話数を重ねるとかわいさに変わり、読者からの好感度を稼ぐと共に「スクールカースト最上位が陰キャに惚れる」という設定への補強としても働いています。てか今1話見返したら市川むっちゃかわいいなおい市川お前。


君は冥土様。」(2巻) しょたん

元伝説の殺し屋、今はポンコツメイドさん。そんなコメディー。1巻は第四回で紹介済。

メイドさんだけでなくメインキャラほぼ全員がかわいい作品ですが、基本的な絵柄がかっこいい&キレイ系な分高密度でかわいい描写が飛んできても胃もたれしにくく、新鮮な気持ちでカワイイの大量摂取が可能です。コマ割りやアクションの上手さも光り、強みがあるうえにバランスもいい名作だと思います。


異世界失格」(4巻) 野田宏(原作)、若松卓宏(作画)

太宰感のある作家が異世界転生して死に場所を求めるコメディー。第四回第五回で紹介済。

斜に構えながら王道展開をやってくれるおかげで、狂った描写は浮いた印象を与えず十全に機能し、王道描写がくれば普段のズレの分より熱く感じる。どっちつかずになりそうなところですが、どっちかの要素を出す際には画力やギャグの火力でしっかり殴ってくれるので強烈な印象を覚えやすく、結果どちらも頭に残って両立できているように感じやすいのも上手いところかと思います。

ヒーローコンプレックス」 タイザン5

オリンピック選手を目指して挫折した兄と、彼をモチーフに描いた漫画がアニメ化した漫画家の弟とを描いた読み切り。

1つ目の山場である25~30ページのコマ割りはもっと緩急をつけられたかもしれませんが、2つ目の山場であるクライマックスが見事なので言うことはありません。PCだと37、38ページを同時に見せてからの見開きを全画面で表示させ、スマホだとこれらを順に見せて3回あの単語を重ねたうえでの40ページのあの表情で〆る。どっちで読んでもおいしい(スマホ版だとさらに疑似的なGIFアニメ的効果もある)のが素晴らしいですね。ストーリーもしっかり面白いです。


いじめるヤバイ奴」(1~45話) 中村なん

クラスで行われる壮絶ないじめ。しかし、実はそのいじめには裏があり…という話。

無料公開を機に読ませていただきました。私は暴力描写を好まない心優しい存在なのでnot for meな作品なのですが、それでも面白さはビンビンに伝わってきたのでヤバイ奴だと思います。

twitterで話題だったようにどんどん「ヤバイ奴」が投入されていくのが面白さなわけですが、その反面一気読みするにはカロリーが高すぎる印象も受けました。先が読めない展開が続く魅力も、向かっている方向性すら見えないと「ここまでは読もう」という目標の無さに繋がり、単行本でブロック単位で読む読み方がメインの私には少々辛いものがありました。

このように私の好みにも読み方にも合っておらず機会(読み放題を知ったのが終了前日かつ予定のある日)にも恵まれませんでしたが、それでも面白かったのは確かです。現時点で読める5話まででも面白さの一端は伝わるかと思いますし、その5話のヒキはなかなか強いので、やっぱここまで読んで単行本買うのが作品を楽しむためには一番いい気もします。


今週読んだ単行本は続刊のみでしたが、どれも期待を上回る面白さで非常に満足しています。実は某売れ線作品2つを最初数巻だけ買っており、インプットの準備だけは済ませているので、来週~再来週に作業がひと段落したら読み始めたいと思います。



一般書籍

一般ではないですが、

江戸時代日本における天道信仰 : 陰陽道の影響を中心に」 加藤みち子
西周時代における天の思想と天子槪念 : 殷周革命論ノート(3 上)」 高島敏夫

以前からちょくちょく名前を出している「天道思想」についての、論文と学術書です。

上は日本の江戸時代における「天道思想」に陰陽道の影響が見られるとした論文で、リンク先から無料で読める(ただしpdfをダウンロードするので注意)うえに「天道思想」の概略も載っています。非常に読みやすく、学説も(素人目には)斬新かつ信頼性があって面白いのでオススメです。

下は立命館白川靜記念東洋文字文化研究所紀要という紀要の2012-17年版に収録されており((9)、25-39、2016-01)、入手難易度がえげつないので学生さんか国会図書館が近くにある方以外にはオススメしません。なぜか旧字体で書かれている部分もあって読みにくいですし。ですが内容は面白く、殷時代には見られなかった「天子」の表記が周時代には登場していることから、周時代に「天」の概念が浸透したことを裏付けています。なお同紀要に(3 下)も収録されており、そちらも「天子」概念への更なる考察や白川靜氏の暫定案(「天の概念は東方系由来のものである」)への否定など大変興味深い内容となっています。しかし私の興味とはやや外れる内容が中心であり、そのため一部を読み飛ばしたので、ここに挙げるには不十分と考えてリンクのみの紹介に留めます。


Web記事

ボードゲーム考察:ナナワリさんの『マドリーノ』という作品が面白い

タイトルにもある「マドリーノ」というボードゲームの面白さが、「自分へ向けたゲームである=自分事感」が強いことから来るのではないかと考察されたnoteです。

この概念自体は私も感じていましたが、「自分事感」という名づけは上手く、汎用性があるかと思います。また、私のゲームは極力面白さがプレイヤーに依存しないように制作されており、そのため「自分事感」も感じにくいように作っていました。しかし近年は面白さの非属人性と「自分事感」の両立は可能なのではないかという考えにもなってきており、その考察を深めるにあたって用語化していただいたのは個人的ながらありがたく思います。


「初めての自作ボードゲーム【その2:いくらで売るか、いくらで作れるか?】」

透明コマのツイートがバズってらっしゃった方が、原価を抑えるために行った施策についてまとめたnoteです。

最後に採用された業者さんがまとめられており、そのリスト部分も合わせて勉強になるnoteだと思います。


『俺、陰謀論を信じかけていたんだよ』俳優はなぜ、告白したのか?
なんで自分が…。“生存率7割”を告げられたアナウンサーが『人に迷惑をかけない』をやめた理由

BuzzFeed Newsより、千葉雄登氏が担当されたインタビュー記事2本です。

氏のインタビューは、取材対象への敬意を感じさせつつ聞くべきところや聞くと面白いところが的確に質問されていて、クオリティが高いと思います。釣り記事にはならない程度にタップを誘うタイトルも、好印象です。


好奇心を原動力とする研究

ワイツマン研究所所長・Daniel Zajfman博士が行われた、科学への投資についての講演の日本語訳です。

こういう「役立ちそうな研究にお金突っ込むのはダメだよ」論は、一般的にじゃあどうすればいいのかという対案のあやふやさやそれへの根拠不足(ダメな理由は挙げられてもそうするといい理由は挙げにくい)ため、科学者以外にはあまり支持されにくいかと思います。ですがこの講演では、ダメな理由をわかりやすい例(ろうそくに投資しても電気照明はできない)を挙げて説明し、よい投資先の基準をキーワードレベルまでは明文化し、さらに自研究所の実績という根拠も提示しています。この論理に否定的だった方こそ、一度読んでみていただきたい邦訳です。


メルカリが検索に『売り切れ品』を置く理由、初期のLINEが友だち追加を『電話番号マッチング』に絞った理由など、アプリのマーケティング施策まとめ30

アプリマーケティング研究所さんが、2017年〜2020年(+α)に取材した記事より今でも参考になりそうな施策などをまとめられたnoteです。

マーケティングの教科書に載っているような内容の実例から膝を打つアイデアまで、成功の実例が30個まとまっている無料とは思えない記事です。


ネットメディアの編集を20年やっていて考えた『読みやすい文章』の本質

電ファミニコゲーマーの編集長であるTAITAIさんが、読みやすい文章とは何かをまとめられたnoteです。

「わかりやすい文章」という漠然とした内容が簡潔にまとまっており、とても勉強になります。後半は担当された記事のまとめで終わってしまいやや尻切れ感がありますが、おそらく2本目以降のnoteに繋がっていくと思うのでブックマークして待つことにしました。


今週は地味にやることが多く、なのに某所に9000字越えの長文を叩きつけたりしたのでインプット不足に思えていたのですが、ふたを開けてみたら意外と読んでいました。まあその「やること」をまだ終えられていないので来週もしんどそうですが、なんとか生き延びようと思います。

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