符亀の「喰べたもの」 20211212~20211218

今週インプットしたものをまとめるnote、第六十五回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

銀狼ブラッドボーン」(16巻(完)) 艮田竜和(原作)、雪山しめじ(作画)

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元伝説の吸血鬼ハンターである老年の主人公が、「骨喰い」と呼ばれる化物の出現を機に再び立ち上がる物語。第五十六回以来の紹介です。完結おめでとうございます。

ネタバレになるため何も言えませんが、最高のラストでした。多少そうはならんやろ的な展開になったとしても、テーマを貫けば興奮に飲み込まれて粗には見えず、ただただロマンと感動を浴びるように味わえるのだと教えてくれる素晴らしい最終巻でした。クソ強いジジイが好きな方は今からでも読んでほしい、名作です。


ダンジョンの中のひと」(2巻) 双見酔

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異常な強さの父に育てられたシーフの少女が、父が消えたダンジョンに挑む話。と思いきや、モンスターとの戦闘中の事故でダンジョンの「中のひと」と出会ったのをきっかけに、運営側として働きはじめる話。第二十四回以来の紹介です。

1巻も良かったですが、2巻は本当に面白かったです。メインキャラ全員が実力者であり、だからこそ出せる雰囲気がしっかり読者に伝わってきます。

おそらくその鍵は、「ダンジョンの中のひと」として何度も予想外の裏事情に遭遇しながらも冷静に状況を分析する、主人公にあるのでしょう。まずはダンジョンっぽくない仕様に対して読者と一緒に驚き、しかしすぐにそれにどう対処するかを考え、「次」を見せてくれます。お約束メタをメインにせず、それを前フリにして次につなげる展開が見事です。メタ部分に飽きて本作のテーマに関心が無くなるリスクも抑えられますし、単純に1ネタで二度おいしいので面白さの密度も増します。上司であるダンジョン管理者が実力のわりに幼い反応を示すのも、冷静な主人公とのバランスをとっていて、本作に不足しがちな「動」の部分を補ってくれています。やや地味な感じはありますが、噛めば噛むほど味の出るスルメ作として、打ち切られずに頑張っていただきたいです。


かぐや様は告らせたい」(24巻) 赤坂アカ

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アニメ3期決定おめでとうございます。

捨てゴマ的に挿入されるセリフのないコマが、キャラの反応を用いたギャグにもなっているのが上手いですね。会話劇が多い本作で文字数が増えすぎないように調整しつつ、そこにギャグをねじ込んで作品の密度は落ちないようにされている。24巻読んでそれなりに分析してきたつもりでしたが、まだ見逃していた基本テクニックがあったことに未熟さを感じながら、それよりも本作の凄さに感服します。


完璧な最終回を迎えた「銀狼」、独特な持ち味を十全に発揮してきた「中のひと」、安定の「かぐや様」と、今週インプットできた作品はどれも今年ベストに入りうる傑作でした。ありがとうございました。


一般書籍

1ページも読めなかった。でも一冊新書買った。バカなのか?


Web記事

【Board Game Design Advent Calendar 2021】戦略ゲーム論考

Board Game Design Advent Calendar 2021 11日目の記事です。中重量級ボードゲームの面白さを、付随する要素を極限までそぎ落としたモデルから考察されたnoteです。

ゲームルールそのものを解析しようとするリプレイ派の楽しみ方である「研究」と、ただ今回のゲームプレイを良くしたいノンリプレイ派の楽しみ方である「意思決定」との分類が、興味深かったです。カジュアルとガチ以外の分類からリプレイ/ノンリプレイ派の楽しみ方を分析できれば、目的のゲーム体験をより正確に味わってもらえる可能性が上がるでしょう。今後の考えの基盤として、とても有用な考察でした。


雨乞い式ボードゲーム制作

Board Game Design Advent Calendar 2021 14日目の記事です。アイデアが降ってくるまで悩み続ける「雨乞い式」制作法のレポートのようなnoteです。

7章に至る構成が予想外で笑ってしまいました。読者の期待を思いっきり裏切る展開ですが、すぐ作者に「裏切られたと思ったよな!俺もそう思う!」と肩を抱かれると、案外悪い気にならないものだなと思いました。でもこんなんアリかよ。


『スマホUIに影響を受けたパソコンUI』を眺める

designing plus nine Advent Calendar 13日目の記事です。「過去の技術が現在の技術に影響を受ける」例として、スマホが登場した結果変化したパソコンUIをまとめたnoteです。

「古さを感じさせないことが主目的」「ユーザーの慣れに合わせることが主目的」の2つの理由によって古い技術のUIが変わりうるというまとめがわかりやすく、UIを考える際の予備知識としても有用に感じました。


【Unity】失敗するゲーム開発には〇〇がない

サイバーエージェント Developersアドベントカレンダー 2021 8日目の記事です。「ゲーム全体のUIルール」であるUIレギュレーションを最初に作ることの重要性を述べられた記事です。

書かれていることはある意味当たり前ではあるのですが、自分がこの記事無しでも怠らないかと言われれば怪しいですし、当たり前のことをちゃんと言語化してもらうのも重要だと思いますので、改めて読めてよかったです。


トリックテイキングの『手札運』をどうする?~アメリカンブックショップの回答~ 新澤大樹インタビュー

「アメリカンブックショップ」のPR記事として書かれた、ゲームデザイナーの新澤さんへのインタビュー記事です。

0のカードの効果について書かれている部分が、特に面白いと思いました。拙作でも0のカードを使ったことはありますが、「0にしかない役割」はちゃんと考えておらず、そこを考え直すのも面白いなと思わせてくれた記事です。


競りゲームの盛衰、そして復権(The rise and fall (and rise again) of auctions)

競りゲームについて論じた「The rise and fall (and rise again) of auctions」の邦訳です。

後半の競りの分類が面白いと思います。何を競るかとどういう役割の競りかがごっちゃになっていて博物的な分類としては微妙かもしれませんが、実用的にはわかりやすく、面白く学ばせていただきました。


ゲーム開発 プロジェクトマネジメント講座

株式会社スクウェア・エニックスCTO(2011年当時)の橋本善久氏が作られた、プロジェクトマネジメント講座の資料です。

前半の理念的な部分と後半の実践的な内容との両方に、高いクオリティと熱量を感じる資料です。特に「2点見積もり」とその重要性には学ぶ部分が多く、自身のスケジューリングでも使うべきと感じました。


”理路整然” の誘惑

「誤解を生まずに伝えきる」ために全てをしゃべろうとしてしまい、窮屈で届きにくいメッセージになる問題について書かれたツイート群です。

問題の認識から解決策の提示まで、全て私の考えになかったものであり、非常に勉強になりました。


私が『ゴブリンスレイヤー』という作品を評するなら

「ゴブリンスレイヤー」という作品の凄さは、「読者の『過去のゴブリン像』が、ゴブリンスレイヤーという作品の語る『過去のゴブリン像』」になった点にあると語ったツイート群です。

私がやりたいことの一つの成功例を見事に言語化されており、改めて自分が何をすべきか考え直すきっかけを与えてくれたツイートでした。


明日のテストプレイ会に向けて新作のモックを準備していたのですが、正直かなりいいゲームになりそうです。と、まだ見ぬ新作を褒めたたえるつもりでしたがなんかフラグになりそうな気もしてきたので、明日試すまでは何も言わずにおきます。

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