符亀の「喰べたもの」 20220501~20220507

今週インプットしたものをまとめるnote、第八十五回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

株式会社マジルミエ」(2巻) 岩田雪花(原作)、青木裕(作画)

事前準備と記憶力には自信があるが空回りを続ける就活生の主人公が、ひょうんなことから魔法少女として働きだす物語。第七十二回以来の登場です。

1巻でも出てはいましたが、この世界における魔法が現実世界におけるプログラムと同様に扱われている設定が、面白さにつながっているなと感じました。主人公は零細ベンチャー企業に所属しているのですが、零細企業なのに漫画らしい派手な仕事をすると、企業規模と合っておらず違和感を生じやすくなるリスクがあります。しかし、プログラムは(大規模開発の話を除けば)それを書ける人間が1人いればでき、ベンチャーに凄腕のプログラマーがいるというのも現実離れした設定には感じにくいでしょう。作品世界における仕組みに現実の何かを投影させることで、設定を全て説明しなくても、投影させている現実側の情報量が勝手に奥行きや説得力を与えてくれる。覚えておきたい業です。


マッシュル-MASHLE-」(11巻) 甲本一

ハリー〇ッターの世界でムキムキのマグルが下剋上する話。第七十六回以来の登場です。

本作、「魔法の使えない主人公VS魔法の使える敵役」の構造がひたすら続くのに、単調な印象を受けにくいのを不思議に思っていました。11巻目にして、ようやくその理由の1つが分かった気がします。それは、主人公と敵役の対立軸が戦闘開始時に示され、かつその軸が毎試合変わることだと思います。

例えばこの巻では、「父親の役に立たないと愛してもらえなかった敵」と「魔法が使えず血もつながっていないのに育ての親に愛された主人公」との対比が、戦闘中何度も出てきます。一方前の巻では、「自分が勝つためなら周囲の人間を利用してきた敵」と「封印されていたが仲間の協力により戦えるようになった主人公」という対立軸が、戦闘前に示されています。「この試合はどういう2人の戦いか」が毎回変わることで、やることは筋肉で解決するだけで毎回同じでも、ストーリー的には別の話になっています。さらに、決着後にその対立軸を生んでいた要因を壊すことで、敵キャラを許す展開も作りやすくしています。足腰のしっかりした漫画だなと感じます。


るろうに剣心─明治剣客浪漫譚・北海道編─」(7巻) 和月伸宏、黒碕薫(ストーリー監修)

元伝説の人斬りにして人を守る流浪人となった緋村剣心の活躍を描いた本編から5年後、北海道を舞台に新旧のキャラが登場する続編です。第四十一回以来の登場です。

この巻は正直あまり面白く感じていなかったのですが、最後の話で一気に手のひらを返しました。その話において、「マッシュル」と同様に「何と何の戦いなのか」が明示されたのが、その理由だと思います。逆に、この巻で中心キャラになっている斎藤一は常に「悪・即・斬」を貫くキャラであり、彼と敵との対比が不鮮明になるのが、絵面はかっこよくてもイマイチのれなかった理由なのではないかとも思いました。原本が手元にないので正確な引用はできませんが、裏話コーナーで斎藤が「キャラ殺し」的に書かれていることが多く、その理由はこれだったのかもしれません。


ここに載せていない分も結構読め、インプット自体は悪くなかったと思います。一方それをうまく文章にまとめられていないのは否めず、文章力の方も磨かなくてはと感じています。


一般書籍

SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」 ブレイク・スナイダー(著)、菊池淳子(訳)

映画脚本作家である著者が、脚本の書き方や優れた脚本を作るための法則をまとめた一冊です。脚本術の古典とも言える本であり、第四十五回で紹介した「ストーリーのつくりかたとひろげかた」でも引用されていました。そこから10ヶ月経ってようやく購入、拝読しました。

古典とされているだけあり、学びの多い一冊でした。上記の「マッシュル」や「るろうに剣心」で考察した主人公と敵役の対立軸の話も、本書の内容を受けてのものです。よく引用される15のビート(BS2)は当然として、いいログライン(一行要約)の作り方のようなはじめの一歩の踏み出し方からシーンの取捨選択の基準などの添削面まで、詰まったときに見返せばとりあえずヒントが載っていそうな良書でした。個人的には、筆者さんが「面白さが原始的か(原始人がわかるぐらい、本能的なものに結びついているか)」を重要視していたのが、私がここ数年意識していることもあり印象に残りました。

最後に、この本に載せられていた法則の一覧を、自分用メモとして残させていただきます。法則の内容は、本書を購入してご覧ください。

SAVE THE CAT!
プールで泳ぐローマ教皇
魔法は一回だけ
パイプの置きすぎ
黒人の獣医
氷山、遠すぎ!
変化の軌道
マスコミは立ち入り禁止!

「Chapter 6 脚本を動かす黄金のルール」より


Web記事

『いやどす』の試遊委託から学んだこと②

作者が地方在住のため、代わりに東京で「いやどす」の試遊を受け持った筆者さんが、試遊時の説明法を台本風にまとめたnoteです。

実際に試遊させてもらいましたが、勝者の決め方をクイズ形式で聞いて理解度をチェックしたり、まずチュートリアルゲームで処理を体験してもらってから本番を始めたりと、参考にさせていただきたい点が多く勉強になりました。


読みたい本は最低限読め、積読も少しは崩せたので、及第点なゴールデンウィークだったかと思います。また仕事が増えてきて、それに取り組み始めるまでの時間も長くなってきているので、休みモードから仕事モードに切り替えないといけませんね。

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