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「勝ちにこだわる」指導が実は一番お手軽である理由

小中学生のスポーツ指導でも「勝ちにこだわる」という指導者が多くいますよね。

この指導法は実は一番お手軽で薄っぺらい指導だと思っています。

子供たちがスポーツから学ぶこと

もちろん、そのスポーツがクラブチームや私立の強豪校である場合は話が違ってきます。

逆に言えば、アスリートとしてその競技を極めたい子供には、いくつも所属する場所の選択肢があるのです。

しかし、そのスポーツを楽しみたいという子や、初心者として入り口に立ったばかりの子供には、学校の部活しかありません。

いわば、そんな子どもたちの最後の砦が学校の部活なのです。

そのように、ある程度住み分けされていれば問題は起きませんが、例えば野球の場合、

硬式にいくのはダルい、体のために成長期は軟式で、などの理由でそこそこ上手い子も入部します。

このご時世、金銭的な理由もあるのかもしれません。

すると、指導者は「今年は行けるんじゃないか」と色めき立ち、安易に他の生徒を退けます。

そして言い放つのです。「勝ちにこだわる」と。

その競技の楽しさをこれから知るはずだった生徒は試合というチャンスから除外されます。

人生の大きな楽しみを奪われて、仲間とともに汗を流し、日頃の練習の成果を思う存分発揮するチャンスをはなから奪われる子がいます。

そして毎回、試合というチャンスに恵まれるのは、決まったメンバーとなります。

これで何を学べというのでしょうか。人生の不条理でしょうか。

これでも部活動が教育の一環なのでしょうか。

勝ちにこだわるメリットとデメリット

勝ちにこだわるチームのメリットは何でしょう。

●勝ったときに気分がいいこと

これです。しかも、脳科学的に言えば成長期の子供は勝ちの快感を翌日には忘れます。

さらに、勝ったときの高揚感は試合に出た人だけのものなので、ベンチの生徒は何も感じることはありません。

練習さえも、ランナーだったり、球拾いだったり、内容が違うため、レギュラー陣の養分となります。

平等に教育を受ける権利があり、嬉しさも悔しさも等しく享受する権利も有しているはずの生徒です。

自分のことのようにチームの勝利を喜べるのは、給料のかかったプロ選手だけです。そのことを多くの指導者はわかってません。

ずっとベンチの生徒は、それっきり野球を辞める確率が高くなります。

この子達に指導者、いえ大人としてどんなことが教えられたのでしょう。

ではデメリットは何でしょう。

●子どものやる気を奪う
●チームの連帯感を希薄にする
●好奇心、探究心の芽を摘む
●限りない才能を握りつぶす
●無気力にさせる

こんなにもデメリットばかりの指導を何故してしまうのか。

それはお手軽で簡単だからです。麻薬のように安易に快感が得られるからです。

勝利は形として見えやすい。いい指導者と呼ばれるためには近道です。

しかも、選手を1から育てるよりも簡単です。最初から才能のある子だけを使えばいいからです。

初心者を育てたり、ちょっと鈍い子を育てるのには手間も根気も必要です。そして勝てる確率も下がるでしょう。

あの指導者はさすがだ、とも言われにくいかもしれません。

しかし、

試合にみんなで出て勝てたときのことを、使ってもらえた生徒は一生忘れないでしょう。その指導者のことも。野球の楽しさも。

子供が生まれたとき「野球はいいぞ」と心から言えるでしょう。

プロにはなれなくても、草野球や子どもの少年野球など、何らかの形でずっと関わっていくのではないでしょうか。

教育者としてどちらを選びますか?

スポーツは技術を磨くためだけではない

成長期のスポーツは特に、心を育むものでなければなりません。

特に部活動において、勝ちにこだわる指導は教育の理念から反するものです。

また、レギュラー=努力している
補欠=サボっている

このようなイメージが未だに残っているのも原因でしょう。

成長や進歩、そして能力には当然個人差があります。それは常識です。

レギュラー以上に努力をしている補欠は腐るほどいるのです。

そこを分かって、いつ芽を出すのかわからない種に水をやり、肥料を施し心から楽しみに待つことこそ、教育ではないのでしょうか。

安易にきれいに咲いている花だけを集めて、コンテストを開いて、大人だけがお手軽な満足感を味わう。

種は種のまま無造作に捨てられしまう。夢と希望と一緒に。

そんなことが公然と行われていることに疑問を感じざるを得ません。

部活は最後の砦です。

みながスポーツに親しみ、試合の緊張感を享受して然るべきものです。

そこからはみ出す生徒、まして最終学年の生徒を、一人たりとも出すべきではありません。

その体験をもとに、生徒はそれぞれに甲子園を目指したり、趣味で野球を楽しんだり、スポーツクラブ、草野球など、自分にあった選択肢を選ぶのだから。

一人一人の人生を決めるという意識をぜひ持ってもらいたいものです。


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