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「魑魅魍魎」が読めないヨーカイ

爽やかな朝。私は学校の門をくぐる。
いつもの友達が挨拶してくる。白い肌、黒い肌様々な見た目だ。我が学園もグローバル化の波を受けているのか?そうではない。
次に来たのは真っ赤な肌のリンだった。背は180センチ、角も二本生えている。
「おっはー!ユリエ」
「おはよう!…どう、そろそろ馴染んできた?」
「うん、もう大変だった!急に身長でっかくなっちゃって服全部買い換えないといけないし。そもそもこいつのせいで服着づらいし」リンは頭の角を指で弾く。
「それくらいならまだいいわよ…」後ろからイツコが声をかけてきた。「こんな風になってみなさい、顔に付けるものは全部特注品なのよ」
イツコは目が一つしかない。いや隻眼なのでなく、顔の真ん中に大きなのが一つ。
「でも視力治ったんしょ?それにぱっちりしてて結構イケてるよ」
「まぁそれは…お陰でメガネの世話にはならなくなったし」イツコは髪で一つ目を隠す。まだ新しい肉体に慣れていないようだ。
「そういえばユリエはまだキてないよね」「そうだね、まだキてない」
彼女達は皆妖怪変化だ。世界人口のほぼ全てが何らかの妖怪因子を持ち、その因子は大体思春期頃に発現する。そうすれば彼らは第二の肉体を持つことになる。見た目は様々だ。様々すぎる。
だがユリエにはまだそれは起こっていなかった。どんな変化が起こるのか。彼女は胸を高鳴らせた。憧れ半分、怖いのが半分。
「かわいいやつが良いなぁ」
「大丈夫だって、ユリエならきっとかわいいヤツになるよ…ピンクとか」
「何それ!…あっ、授業始まっちゃう、急がなきゃ!」
3人は走り始める。大きいだけあってリンが一番速い。ユリエは彼女についていこうとして…転んだ。
いや違う。転ぶ自分を見た。友人二人も授業の事なんかすっかり忘れて彼女を見ている。
彼女も自分を見た。転んだ方でない自分を。青白い半透明の肉体がそこにあった。
「えっ…」
今彼女にそれは起きた。彼女は幽霊であった。

【続く】


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