現金給付を政府からの出資と考えてみる。


社会全体からの視点でみると、新コロナウイルスにより仕事がなくなってしまった事業者とその従業員については、単に既存の生産体制を維持しながら休んでもらうよりは、空いた時間で人的資本の蓄積(簡単に思いつくのは語学・データ分析・プログラミング言語の知識など)をしてもらった方が、社会全体の生産性が上がるので望ましいです。

その場合、人的資本の蓄積は、将来の所得増につながるので、休業中の事業者の支出については、給付ではなく、特別融資で対応するのが筋になります。

ただ、実際に将来所得が増えるかどうかには不確実性もあります。この点については、政府が特別融資と並行して休業補償の給付をすれば、将来的には人的資本の蓄積が成功して所得が増えた事業者だけから税金の徴収額を増やすことになるので、政府が休業中の事業者が負うリスクを一部共有することになります。よって、休業補償の給付と特別融資の関係は、通常の出資と融資の関係と似たものと捉えることができます。

このような目的で休業補償を給付する場合は、特別融資と給付をパッケージで提供して、休業中の事業者の人的資本の蓄積を促すことが必要になります。この点は、議決権を伴う通常の出資を融資と別に実行できる点とは異なります。

以上は頭の体操ですが、休業補償には、各個人の生活保護的な機能もあり、そちらは別の話になります。一般論として、今回の危機を契機として、単に政府が金を出せばよいというのではなく、さまざまな政府財政の機能を高度化するための議論ができるとよいと思います。