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森の土を未来へ繋ぐ -炭素貯蓄で未来の食糧を担保する-

カーボンサイクル物語(4)

2030年は地球の未来への分岐点になるのをご存じだろうか?

急激に進む温暖化や土地の荒廃が、増え続ける地球人口を支えられなくなる。食料生産に適した農地が萎んでいくのが見える。フードクライシスが間違いなく起きる。どうすれば危機を食い止めることができるだろうか?

ユーカリの海外植林研究に長年携わった。ベトナムではかつての亜熱帯雨林が焼き畑で切り開かれ、乾いた草原(グラスランド)が眼下に広がっていた。西オーストラリアでは、牧畜で大量の肥料が使われ、土地は塩漬け、おびただしい数の塩湖ができていた。もちろん水は干上がり、塩が噴き出た土地には樹はおろか草一本も生えていなかった。

地球の炭素の貯留場であるインドネシアの熱帯雨林やブラジル・アマゾンの密林も同じ運命を辿らないと信じたい。

下の図をご覧いただきたい。

KTH OCとN

これはインドネシアのユーカリ植林地で調査した土の中の有機炭素量(オーガニック・カーボン OC)と総窒素量(Total N)との関係である。

焼き畑などで地表の森林土壌が流され荒廃した土地には、有機炭素や窒素はほとんどない。このような土地では食物は育たない。ところが荒廃地にユーカリやアカシアなどの早生樹を植林する。樹は根を張り、幹を太らせ、万の葉を着ける。葉はルビスコと呼ばれる光合成タンパク質を使って、太陽の光をエネルギーに二酸化炭素を還元し、有機炭素に変換する。それらは地表に落葉して、窒素と有機炭素を豊富に貯蓄した森林土壌を瞬く間に再生することができるのだ。

森を造ることは、土を作る。土を作ることは私たちの未来の食糧を創るのである。

(口絵写真:岐阜県高山市荘川の森にて、クマザサで覆われた土地を地拵え。飛騨高山高校の生徒たちと未来へ繋ぐドングリの苗を植える。)

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