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狭くて深いインターネット

炎上が絶えないTwitter、いいね数の表示を廃止したInstagram。行動経済学のFast&SlowのFastな特性を刺激したアテンション経済は大きな曲がり角に来ているように見えます。では、どういうインターネットがあれば、みんなハッピーになれるのでしょう。

15億を売り上げるUdemy講師

Udemyにデータサイエンスの専門家による人気講座があります。全受講者数は約130万人。仮に全ユーザーが割引価格の1200円で購入したとしても、実に15億円の売上!ここまで影響力のある個人はインフルエンサーといえるでしょう。しかし、日本で専門領域をディープに追求した、このタイプのインフルエンサーは存在しません。なぜいないのか?それは市場規模が関係しています。

日本語のインターネットの構造的問題

インフルエンサーというと一見きらびやかなように見えます。しかし、国内のインフルエンサーのタイムラインを見てみると罵詈雑言に埋め尽くされている姿をよく見かけます。(見ているだけで辛い…)

なぜ、このようなことが起きるのか? なぜなら市場が小さいからです。日本市場で多くのユーザーにリーチするには、広く浅く伝えるか、広く分かりやすく伝える必要があります。狭いまま、深いままでは広がらないのです。分かりやすい言葉、強い言葉、より多くの耳目を集め、共感を得れるテーマ。専門領域の人であってもワイドショーのコメンテーター的な分かりやすさに最適化されがちです。俗に言うバズる技術です。中には炎上をうまく扱い、過激な言葉で耳目を集めようとする人も出てきてしまいます。

インフルエンスの質

STPというマーケティングのフレームワークがあります。Segmentation(市場細分化)、Targeting(ターゲット設定)で的をしぼり、Positioningを決める手法です。リーチした数が増えたとしてもセグメント、ターゲットから外れていたら意味がないと考えます。例えば、運動が興味がない人、むしろ嫌いな人に、スポーツ用品を薦めても効果はないですよね?ところが、日本語のインターネットではSTPがずれたところにリーチしている風景をよく見かけます。これは前述のバズる技術の弊害です。そうなるとコミュニケーションはすれ違い、罵詈雑言の世界に突入します。広がる幸せ<伝わらない不幸な誰得な世界です。リーチ数は増えても伝わらないのであれば、インフルエンスは上がっていません。つまり、インフルエンスの質が低いのです。

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言語の壁が溶けると市場が広がる

Udemyに話を戻しましょう。先程の講師の一部講座はなんと11言語に対応しています。人力で11ヶ国語に翻訳しているわけではなく、自動翻訳によるものです。対応言語が多くなればそれだけ市場も広がります。狭くて深いまま、広く伝えることができます。ターゲットにはまっているため、インフルエンスの質の高さも維持できます。日本語→他の言語の翻訳精度はまだまだですが、近い将来、自動翻訳が進化すると言語の壁はなくなっていくと予想されます。

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マッチングの精度があがると狭くても量が増える

もうひとつ技術の進化により期待できるのはレコメンデーションです。小さい市場の狭い領域に向けたコンテンツは今まで成立しませんでした。しかし、マッチングの精度があがると狭くても多くのユーザーとマッチすることができます。ターゲットとのマッチ精度が高ければ、自然とインフルエンスの質も高まります。

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専門家が専門家のままで影響力をもてる世界

Udemyの人気講師の講座を見ると、そのディープさに驚きます。分かりやすさと共に、専門的な深さが何よりも重要なのです。専門家が専門家のままで影響力を持てる。愚直に自分の専門分野、興味のあることを追求していけば本人も講義を受ける人もみんなハッピーになる。バズるなんて考えなくてもいい。狭くて深いインターネットが増えると、ハッピーになれる人が増えそうです。ここnoteも狭く深いテーマやマニアックなテーマでも、ゆるやかな広がりがあり居心地がいいですよね。いまインターネットに求められているのは狭さと深さなのだと思います。

Cover Photo by Ludde Lorentz on Unsplash

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