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東京ユアコインから考える信用スコア

中国では信用スコアが社会インフラとなりつつあります。善行によりスコアが上がり、スコアによりその人が社会的な恩恵を受けられるようになる。善行がメリットを生む社会です。信用スコアを使った興味深い実験が日本でも始まりました。

行動経済学からの視点

この視点は深津さんのTweetに端的にまとまっているので引用しておきます。

たしかに問題がありそうですねぇ。ただ、行動経済学は、あくまで個人の行動をベースにした科学です。もう少し広くエコシステムという切り口から見てみるとどうでしょう?

信用スコアは安心安全のエコシステム

中国で信用スコアが広がったのは、ローン、進学、就職などでの優遇に加え、社会的背景も大きく影響しています。いままで社会に「安心・安全がなかった」のです。この記事が状況をよくあらわしています。


「害人之心不可有,防人之心不可無」(人を害する心があってはならないが、悪人を防ぐ心はなくてはならない)このことわざが示す通り、中国社会は基本的に性善説で成り立っていない。これは中国政府も、「社会の信用意識とレベルが低く、誠実で信義を重んじる社会的気風が醸成されていない」(「社会信用体系建設計画要綱(2014-2020年)」)、と率直に認めている。
毎日の買い物や外食などでだまされたり、不利益を被ったりしないよう、つねに注意を払わなければいけない社会では、とても安心して暮らすことはできない。日本でよく言われる「安心・安全」な社会は、中国人も望んでいるのだ。

日常的に騙されるリスクがある社会なら、信用スコアの不安より安心・安全を取りそうですよね。さらに中国ではAI付きの監視カメラネットワーク「天網」が導入されつつあります。

「天網」には人工知能(AI)による顔認証技術などの最先端テクノロジーが駆使されている。中国メディアによると、その性能は、「毎秒30億回の照合が可能」「一対一での識別精度は99.8%」と驚異的なレベルに達しており、身分証番号と紐づければほとんどの国民を、監視カメラを使って特定できるようになるだろう。

「そんな監視社会嫌だ!」と日本人的感覚から見ると思いがちですが、ここにも信用スコアの不安 < 安心・安全な社会背景があるようです。

日本ではあまり想像できないかもしれないが、中国ではいまだに、児童誘拐や人身売買が大きな社会問題となっており、年間約20万人の子どもが行方不明になっているとの報道もある。実際、私が住む北京の集合住宅地の中には幼稚園と小学校があるが、登下校の時間帯には正門周辺が黒山の人だかりとなる。誘拐を心配して両親や祖父母が送り迎えしているからだ。また、ネットショッピングやフードデリバリーの普及に伴い、交通ルールを守らない配達員による電動バイクの事故も多発。無断駐車や暴走運転などで渋滞を引き起こしているドライバーも少なくない。

我が子の誘拐…となると喜び勇んで個人情報をも差し出しそうです。エコシステム的に見ると信用スコアが解決した課題は「安心・安全」。個人的な動機も大きいですが、それ以上に大きな社会的動機が広がりに関係していそうです。つまり、信用スコアには個人的動機、社会的動機の2つを組み合わせたエコシステムのデザインが必要。では、エコシステム的に見てどういう社会的動機があれば日本でも上手くいくのでしょう。

同調圧力という名の安心・安全

働き方改革、自宅勤務OK、副業解禁など、働き方の多様性は現在猛アップデート中です。一方で「同僚の目が…」「自分だけ自宅なのは…」など制度はあれど実施しにくい現状も耳にします。特に大きな会社になればなるほどその傾向は強い。いわゆる同調圧力です。同調圧力は集団の中で排除されないためのもの。集団の中での安心・安全を担保するための人類が培ってきた行動様式です。行動経済学だとハーディング現象と言われます。特に日本はこの圧が強い。この障壁の緩和には強い社会的動機がありそうです。

では、どうするのか?

ポイントの主体を個人から企業に変える。


のはどうでしょう。多くの人が時差勤務するほどその企業にポイントがたまり、ポイントの財源を企業の税制優遇に当てる。(必要な財源が2桁がぐらい違ってくる気もしますが…)なんといっても時差通勤=会社(みんな)のためにもなる。という大義ができます。会社的にも優遇があるなら社をあげて推奨する動機もできます。個人的にもいくらかのポイントをもらえるよりも、誰の目も気にせず時差通勤ができる状況の方が嬉しいのではないでしょうか。言わずもがな、満員電車は東京人の圧倒的なペインですし、誰もが解決したいと思っているはずです。

SDGsは素晴らしいテーマです。ただ、文字通り持続してなんぼ、実証実験も結果から学んでなんぼです。なので、前向きに次に繋がる議論やアクションがおこるといいですよね。税制優遇だと財源が限られてきてしまうので、より資本主義にコミットしたエコシステムが築けると上手くまわりそうです。他に何があるかなあ。


 Cover Photo by Arif Riyanto on Unsplash

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