かけ算のアップデート
授業のアップデート
娘が小学校に通いだして、自分の小学生時代と、現在の小学校の教育があまり変わってない現実に驚きました。てっきり、もっとデジタル化されてアップデートしているものだと思っていたのです。
例えば、こちらは某プロジェクトで作ったプロトタイプです。最新の音声認識を使うと昔ながらの足し算カードも、いろいろアップデートできそうです。
ただ、このデジタル化していない流れも2020年のプログラミング教育必修化で変わりそうです。
プログラミング教育必修化の誤解
プログラミング教育は、プログラムの書き方を習う授業があるわけでも、プログラミングという科目が増えるわけでもありません。今までの授業にデジタル教材を取り入れていくという理解の方が近そうです。例えば、このような授業が模索されています。
実施事例B一覧 | 小学校を中心としたプログラミング教育ポータル
九九表のアップデート
コンピューターの先祖は電卓。計算機がルーツです。算数とプログラムは、もともととても相性が良いものです。最もプログラミング的要素を取り入れやすい教科だとも思います。ということで、今回はかけ算の九九表を、プログラムの力でアップデートしてみました。できたものはこちら、さわれる九九表です。
この九九表は、こんなプログラムからできています。
アナログ vs デジタル
デジタルで教材がアップデート? デジタルが教育に取り入れられることに抵抗がある方もいらっしゃると思います。デジタルに触れさせるには、まだ早すぎるんじゃないかと。古き良きアナログの良さがあるのだと。アナログの世界の中でも、教える方法は日々研磨されアップデートされてきているのだと。このように、アナログとデジタルは、アナログ vs デジタルと対立軸で語られがちです。でも、デジタルはアナログの対立勢力ではないと私は思っています。デジタルは今までのアナログな世界を拡張するものなのです。
デジタルで拡張
さわれる九九表で何を拡張しているのか、しくみ視点で見ていきましょう。
まず、値ごとに色をつけています。1を黄色。一番大きい81に増えるにつれて緑色を混ぜていく着色をしています。するときれいなグラデーションが描かれます。拡張の1つ目は、色の力で同じ値がわかるようにしています。
色がついたおかげで構造が分かりやすくなりました。九九表は対角線を中心に同じ色、つまり、同じ値になっています。九九は半分覚えれば良いと気が付きます。2x5=10ですし5x2=10。九九を復唱して覚えていたあの頃に知りたかったものですね。拡張の2つ目は、色の力で構造が分かりやすくなっています。
触れると反応することをインタラクティブと言います。ぱっと見ただけで九九表が対角線上に反転した構造を持っていると気がつくのは難しい。でもインタラクティブ性があると、小さいお子さんでも触っているうちに自分で関連性に気がついたりします。拡張の3つ目は、規則性に気がつきやすくしていることです。
さらに、九九表には四角形の面積の概念も隠されています。横9cm 縦3cmの長方形と、横3cm 縦9cmの長方形。どちらも同じ面積27平方cmです。いきなり面積を教えるのは難しいです。学習指導要領によると、掛け算は2年生、四角形の面積は4年生で習うようですが、くるっと回転させると同じ四角形が隠れている規則性になら気がつく子もいるかもしれません。
まとめ
2020年のプログラミング教育必修化。プログラムの概念をどう教えるかの議論が偏りがちです。
でも大切なのは、プログラムそのものを学ぶより、プログラムから何を学ぶか?プログラムによりアップデートされた世界に適応する視点だと思います。
文部科学省のプログラミング教育の手引きにもこうあります。
プログラミング教育のねらい
①「プログラミング的思考」を育むこと
②プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータ等の情報技術によって支えられていることなどに気付くことができるようにするとともに、コンピュータ等を上手に活用して身近な問題を解決したり、よりよい社会を築いたりしようとする態度を育むこと
③各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、各教科等での学びをより確実なものとすることの三つと言うことができます。
[小学校プログラミング教育の手引(第二版)]
この②の「コンピュータ等を上手に活用して身近な問題を解決したり、よりよい社会を築いたりしようとする態度を育むこと」が重要です。
電話、メール、LINEとコミュニケーションはデジタルでアップデートされました。同じように教育も社会もアップデートされていくのだと思います。多くの人がプログラマーになるわけではありません。でも、プログラムに慣れ親しんでいる人ほど、これらのアップデートしたツールを深く自由自在に使いこなせるはずです。
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