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地方と都市のデジタル格差 ヒト編

地方と都市のデジタル格差をヒト・モノ・カネで読み解くシリーズ。最後はヒト編です。最も偏っているのがヒト。しかし、最も可能性を感じるのもヒトでした。

東京への圧倒的な一極集中

カネと同じく、ヒトも圧倒的に一極集中しています。デジタル人材の60%が東京圏に、従業員1000人以上のデジタル系大企業は80%が東京圏に本社があります。働く本社が東京にあり、暮らす家も東京圏にある。今までヒトは、都市部に固定され流動性がほぼない状態でした。

リモートワークと副業が生んだ流動性

この膠着した状況に変化がおきています。パンデミックでリモートワークが推進され、それにより、東京を離れる人、そして副業という新しい働き方にも注目が集まっています。

なかでも、このムーブメントの渦の中心的推進力がYahoo!。自社の副業人材、ギグパートナー募集に続き、副業マッチングサービスのβ版がオープンしています。先行エントリー9万人突破と期待値の高さがうかがえます。リモートワークと副業が当たり前になっていけば、地方自治体のプロジェクトに週1日だけ参加するという世界も夢物語ではありません。

実際、多くのデジタルサービスはオープンソースにより支えられ、オープンソースプロジェクトは世界中の多くの人の副業的なコミットにより支えられています。1990年代から活発になり30年の成功の歴史があります。なにより、公共性の高いプロジェクトはオープンソースと相性が良い。夢物語というより、働き方の常識の変化が実現可能への最後の1ピースだとも言えるでしょう。

デジタルツールでコミュニケーションの距離を解決

私の経営するwildcardはパンデミック以前の10年前からフルリモート、メンバーの居住地も様々でした。パンデミック後はその性質がさらに促進され、日本を代表する大手メーカーの数ヶ月単位のプロジェクトで対面どころかZoom会議すらせずに完了するものさえ生まれています。これは私達がリモートワークに慣れていることもあるのですが、近年のツールの進化の影響が圧倒的に大きいです。

流動的なコミュニケーションはSlack、ストックはNotion。これらをコミュニケーションのベースに、GitHub、Figma、Whsmicalなどのオンラインコラボレーションを前提にした専門ツールを使います。最近、オンラインでのホワイトボード+会議室のFigJamが完成度の高さで話題になりました。リモートワークを追い風にこれらのツールは凄まじい勢いで進化しています。日本人は対面のコミュニケーションを重視しがちですが、これらのツールを使い対面よりも濃密なコミュニケーションが生まれる場面に出会うことも多々あります。

NoCodeで参加者の裾野を拡大

NoCodeと呼ばれる専門知識がなくてもデジタルサービスが作れるツールが近年話題です。NoCodeツールの魅力は敷居の低さ。デジタルサービスを作るには高いIT専門知識と多様な専門家からなるチームが必要でした。しかし、これらのサービスを使うとエクセルを操作するようなIT知識だけで複雑なデジタルサービスが作れてしまいます。参入障壁が劇的に下がるのです。今までオープンソース文化は一部のプログラムが得意な人のみの文化でしたが、参加者の裾野の広がりが期待できるムーブメントだと期待しています。

最近私も「NoCode、LowCodeで作る公共サービス」というトライアルをはじめました。1月に地元のダッシュボードを作り、その後も週に数時間コミットし続けてみた結果、数ヶ月でちょっとしたポータルサイトにまで成長しました。まだ試行錯誤中ですが、NoCodeツールを使うと想像以上にインパクト/コミットの大きい成果を生み出せそうな手応えを掴んでいます。

労働人口の拡大解釈

最後に労働人口問題。いろいろなところで労働人口不足問題は話題にされます。15~64 歳で就労している人を労働人口と定義されますが、デジタル業界で、この定義は正しいのでしょうか?

筑波大学の履修システムが使えなくなり、その代替ツールを入学直後の1年生がわずか3時間で開発!」というニュースが話題になりました。開発者はわずか19歳。高校生の頃から有名なプログラマーだったと言います。人材が都会に集中しだすのは大学から。これは彼のような人材が全国の地方に点在していることを意味します。さらに、プログラミング教育が始まることにより、スーパー中学生のような人材もより多く生まれてくると思います。このように若くても力を発揮できるのがデジタル業界の特徴です。

一方で、シニアと言われる65歳以上。シニアのデジタルデバイドをどうするか?という議論もあります。しかし、3617万人、人口の28.7%を占める集団を十把一絡げに「デジタルが苦手な人達」とカテゴライズするのは早計です。現在の65歳はWindows95が登場した1995年には39歳。60歳は34歳。デジタル系の会社で働き65歳で引退した方たちは、デジタルが苦手どころかデジタル躍進の立役者です。人生100年の時代、まだまだ現役のはずです。

フルコミットは無理だとしても副業が浸透すれば、彼らが活躍できるマイクロプロジェクトも生まれてくるでしょう。

まとめ

データ・カネ・ヒトの中で最も都市部に一極集中しているヒト。しかし、リモートワークの推進により流動性が生まれ新た可能性が生まれています。キーワードは「副業」です。

副業が当たり前の世界になっていけば、都会にいながら週1日地方へコミットする働き方も可能です。デジタルはコミュニケーションの距離の問題を解決し、働くヒトをエンパワーします。

さらに労働人口を拡大解釈すれば若き才能、老練の経験も活かせるかもしれません。地方と都会のデジタル格差を突破する鍵はヒト。そして、新しい働き方にあるのではないでしょうか。

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