豆の話
豆の話
公園内でバザールが開催されていた。
カゴ盛りの野菜店、移動式サンドイッチ店などをひやかして歩く。
ある一角では、コーヒー豆の瓶詰めを飾っていた。
よく見れば、豆は一つずつ色が違う。焦げ茶、薄緑、黄、真っ黒。
豆はつぶらな目で、こちらを見上げる。小さな口が一斉に開く。
選んでー! 選んで選んで!
店主が、試飲を一杯、紙コップにいれてくれる。うまい。香りは青空と、吹き抜ける風にぴったりだ。
豆を買いたいが、彼らと目が合って、何となく選べない。
店主おすすめブレンドを頼んで、ひいてもらった。ばいばーい、美味しいうちに飲んでねー。豆は達観しているのか、そんな声をあげて、粉になった。
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