空っぽの空
空っぽの空
空っぽの空に落ちていく。春夏秋冬。霞がかり、朧月がそよぐ空。立派な入道雲。夕暮れの空。雪雲に覆われた空。
全部、君と過ごした空。
君を探して飛び回る。
雲や月、星はあるのに、鳥も飛行機も見かけない。
ぴぴぴっ。
「いかがでしたか?」
ゴーグルを取り上げて、店員がお仕着せの笑みを振りまいた。
「普段忘れている記憶にもアクセス可能。高度な瞑想体験をサポートします」
「貴方も、見ました?」
問いかけに、店員は曖昧に頷いた。
「昔の飼い猫を。顔がぼんやりしていましたけど、何度も繰り返すうちにはっきりするらしいです」
空っぽの空。
二人で見上げた空。
記憶は薄れて滲んでいく。
第四十三回のお題「空」#Twitter300字ss @Tw300ss
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