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映画『変な家』を観てきた

・ようやく観てきました『変な家』。今週逃すと絶対観に行けないまま終わっちゃうと思ったので、ド平日の午前中に観てきた。公開から一月半くらい経ってるから人少ないかな~って思ったけど意外といた。20人くらいはいた気がする。ド平日の午前中だぞ。客層としては20代~30代くらいが多めだったが年配の方もいた。ジャンプスケアあるらしいけど大丈夫そ?余計なお世話だろ。はぁい、すみません。



・わたしが一番最初に『変な家』に触れたのはオモコロの特集だ。この特集ってもう4年も前になるのか。雨穴さんのYouTubeチャンネルの動画も観たし、書籍化した後はもちろん小説も読んだ。


・賛否両論のある映画だというのは周りの感想などで嫌というほどわかっていたので『同名の別作品』と割り切って観ることに決めていた。ただひとつ気になっていたのが、原作は『ミステリー』なはずなんだけどホラー演出があるという噂。しかも自分が最も苦手とするジャンプスケアが…。でも「ジャンプスケアがある」という情報を事前に知っていれば、ある程度心構えができる。ありがとう、ジャンプスケアがあることを教えてくれて。


・以下、映画のネタバレをがっつり含む感想になります。ネタバレ嫌な方は読まないでください。なるべくストーリーの流れに沿って書こうとは思ってるのですが、たぶん思い出した順に書き連ねていくので話が前後することがあると思います。ご容赦ください。また、俳優さんのお名前を敬称略で書かせていただきます。予めご了承ください。






・正直、別作品と割り切っていたからか意外と楽しめた。詰め込みすぎってくらい詰め込まれてたのでダレることもなくテンポもよかった。尺の都合上、登場人物が多すぎると収拾つかなくなるというのもあるだろう。原作に出てきた人物が出てこなかったり、設定の改変はもちろんあった。が、ストーリーの進行上無理のない改変ではあったので、終わってみるとそこまで気になることはなかったように思う。

・原作は間取り図から浮かび上がる謎を中心に会話形式でストーリーが進んでいくが、筆者自身はあくまで語り手であってその『変な家にまつわる物語の人物』としての存在ではない。ただそれは文章の世界─記事や小説─や雨穴さんが創る動画の形式・世界観だからこそ成立することであって、2時間弱の映画ではそうはいかない。筆者が語り手ではなく物語の主人公として積極的にストーリーに関わっていく必要がある。

・そういう意味では、間宮祥太朗演じる雨宮(雨男)がオカルト専門のYouTuber─厳密にはYouTuberではないが便宜上そう表記しておく─という設定なのは悪くないと思った。動画の再生数に伸び悩んでいるというくだりが冒頭にあるのも、のちのち変な家に凸したり「ここで回すの!?」みたいなところで動画回したりするのも、「まあ、YouTuberだしな…」とか「まあ、撮れ高が必要だもんな…」と納得できてしまうから。

・冒頭のくだりといえば初っぱなからやってくれたなあ!ええ?おい。ジャンプスケアさんよお!まあでもあれくらいはね、余裕よ。こちとらできてるんで、覚悟が。ちょっと大きい音出されたくらいじゃビビらんわな。ただ、引っ掻く音よ。あの爪でキィーーーーッてやる音。それはダメだって。ゾワッてした。なに?そういう系もあんの???言うてやあ~~~!


・不快でいくと栗原さんの初登場シーン。パフェの食べ方どうにかならんかったんか。グチャグチャグチャグチャかき混ぜやがってよお~。栗原さんの奇人な部分と、この後のストーリー展開の暗喩でもあるのかなって思った。知らんけど。でも栗原さん、総じて良かったな~。佐藤二朗って最初聞いたとき絶対ふざけるやつじゃん~~って思っちゃったんだけど、奇人の過剰演出っぽさは多少あれど全然許容範囲だったし、ふざけなしの時の佐藤二朗の演技が好きなのでかなり良かった。

・間取り図の家を実物で見れたのも映画ならではって感じで良かった。立体になることでより奇妙さが際立った感もある。栗原さんの自宅での『イメージ』も映画ならではだな、と思った。栗原さんの語りから、雨宮が『イメージ』の中の人物になっていくグラデーション。こういう演出、かなり好きだ。その東京の家、売りに出されている物件なはずだけど土足で侵入してたのはいいのか…?不法侵入はもちろん子供部屋の散らかり具合もすごい。よくそのまま売りに出したな…売れると思うのか?傷やらなにやらついた状態で。隠し通路を隠す棚が思いの外小さくて、簡単に退かせられることにちょっと笑いそうになった。でも使い道を考えると、子どもでも動かせるような棚でないといけないからあれくらいでちょうどいいのかもしれない。適切な大きさの棚。

・話は前後してしまうが、雨宮(雨男)と柚希が初めて顔を合わせるシーン。素性がわからない同士なのに自宅で会うんだ!?という驚きと、覆面活動をしているのに素顔晒して会うんだ!?という驚き。驚きが二つある~。柚希が「なんでんかんでんSNSに書いちゃウーマン」だったらどうすんの!?「雨男の素顔、ドえらいイケメンでビビる(盗撮画像付)」とかツイートしてたらどうすんの!?してますか?リスクヘッジ。

・映画ならではの演出の良さといえば、東京の家に凸した際の、隠し通路を見つけた雨宮にかかってくる栗原さんからの電話。その電話で告げられる「宮江恭一に妻はいない」という事実。つまり宮江柚希と名乗る女性は存在しないのだ。じゃあ今、自分と一緒にいるこの女性は一体───?話の展開を知っているとはいえ、ここの演出は正直ゾッとした。雨宮の恐怖と視聴者の恐怖がリンクしたと思った。この後のカメラワークが、雨宮が回すカメラの映像で一人称視点になるのも良い。雨宮と自分が同化し緊張感が高まっていく。背後からは反則だろうがよ。脅かしターンが来るとわかっていてもビビるのはビビる。なんなんだよ柚希のその角度は。

・柚希といえば、雨宮の自宅に訪問した際の遠くからのカメラワークがえらいブレてて『誰かの視点』のようだと思った。まるで柚希を尾けてた人間が物陰からひっそり盗み見ているような…。考えすぎかも。


・わたしはホラー演出でジャンプスケアが苦手すぎるんだけど、もうひとつ苦手なものがある。日本人形や能面などのお面だ。笑っているお面だとなお怖い。女系、怨霊系の能面にどうしてもゾワッとしてしまう。なぜいきなりお面が怖いという話をしたか。


・出てくるんだよ、その苦手なタイプのお面が。しかも髪までついてるやつ。心臓キュッッッッッてなっちゃった。正直ジャンプスケアよりダメージデカい。なに??そういう系もあんの???言うてやあ~~~~!!!

・片渕一家のお向かいさんから見せてもらった写真、あんなの心霊写真じゃん。雨宮が明度上げた瞬間声出るかと思った。あんなん枕元におったら漏らす自信しかない。…とか思ってたら何?デジタルホラー?編集ソフトでそのタイプのバグってある??てか、え??心霊系は話変わってくるよ???王道ジャンプスケアだったけどなんとか耐えた。何かが『来る』確かな予感があったから。首刺されてますけど!?!?だからお面やめろし!謎のバケモン女の顔と怖いお面、似てない…?何…?え?てか心霊なの???なんなの???


・得体の知れない女に襲われても変な家を探ることを諦めない雨宮、わかりやすい警告をものともせず柚希と一緒に片渕本家に行くなんて胆力がありすぎるだろ。あとこれは勘違いだったら申し訳ないんだけど最初タクシーに乗らなかった?気づいたら雨宮が運転してたから????ってなっちゃった。雨宮おまえ車持ってたんか。いや、レンタカーの可能性もあるか。どうでもええわ。

・本家へ到着したときの近所の人たちの演出も良かった。余所者がやってきた時の訝しむような、閉鎖的な田舎特有の空気感。赤ん坊の泣き声がこの後起こることを予期させるようでいいですね。逆光になってる鉈か何かを手にした村人二人もいい味だしてた。視てるぞ、ってのが伝わる。


・人様の家にあがっても構わずカメラを回し続ける雨宮、撮れ高モンスターすぎる。あんなに家中見て回ってんのに誰も見つからないなんてことある?少なくとも住人は気づくだろって思ってしまった。重治たちと会話したあとの流れがよくわからない。喜江から話を聞いたあと雨宮たちの後を追ったにしても何と言って家に上がらせてもらったのかはわからないけど栗原さんがいつの間にかいるし、柚希は(雨宮も)薬を盛られて意識をなくしてたらしいし。どのタイミングで盛られてんのかがわからない。出されたお茶とか?お茶が出されてたかどうか覚えてないけど…。

・またまた話は前後するが、柚希が喜江に会いに行った際、喜江は頑なに綾乃のことはおろか本家のことも何も柚希に語ってくれなかったが、原作のように「柚希には何も知らないまま生きてほしい」という綾乃の気持ちくらいは話してあげてもよかったんじゃないかと思ってしまった。それがあったからこそ、喜江は頑なに話さなかったんだなって理解ができるから。何も話してくれないんならじゃあ本家行って確認してくるわ!ってなるよな、そりゃ。

・雨宮を襲ったのが喜江だというのが判明するわけだけど、先の違和感─柚希が雨宮宅を訪問した際の物陰から盗み見てるようなカメラワーク。もしかしてあれが喜江視点の映像ってことなのか!?雨宮宅を特定したところで喜江がどうやって侵入したかは現時点ではわからないんだけども。

・重治たちが外出したのを見計らって隠し通路に潜入するわけだけど、動かした仏壇は元に戻しとけよ!って思っちゃった。バレちゃうだろ。あと荷物も部屋に放置したままだし。仏壇を元に戻して荷物も持っていってれば「あれ?客人帰ったの?」って騙せたかもしれないのに。あと片渕家の闇に夢中になるあまり背後への警戒が疎かになりすぎ。警戒を怠らなければ清次に襲われることはなかっただろうに。まあそれやっちゃうと話が進まないんですけど。

・突然慶太の昔話に入るもんだから一瞬雨宮が学生時代いじめられていたのかと錯覚しちゃった。監禁されてるトウヤもあのお面をつけていたことでうっすらとした恐怖に包まれていたんだけど、この後のお面をつけた村人が本家に集まってくるシーンからなんかずっとじんわり心臓が痛いままだった。まさかジャンプスケア以上にダメージくらうものが出てくるとはマジで思ってなかった。トウヤもお面外してくれよ!怖いから!ねえ!頼むって!そのまま逃げんなって!


・噂のババアチェーンソー、あんなのギャグだろ。狭いところで振り回すから引っ掛かっちゃうんだよ!せっかく殺傷力高い武器持ってんだから1回引っ掛かったくらいで諦めてほしくなかった。ババアがんばってくれ。

・隠し通路を利用して村人をやり過ごすのはいいなと思った。でも片渕家の人間は隠し通路の存在を知ってるんだから見つかるのでは…?見つからんのかい。本家の人間以外は知らんかったんか?安心させておいてのバーンッ!ここはさすがに心臓ギュッッッッてなった。王道中の王道ジャンプスケア。てか首刺されても頭殴られても全力で動ける雨宮ってシンプルにフィジカルが強くない??雨宮、おまえが握るべきはカメラじゃなくて武器だよ。おまえなら勝てるって。

・清次の最後、いやおまえがトドメ刺すんかい。左手供養って誰でもいいのけ?じゃあトウヤにやらせんと最初から重治がやればよかったじゃんって思っちゃった。清次を殺し、その左手を切り落として既に火の手が回ってるであろう高間潮の祭壇へと戻っていく重治の姿に狂いを感じて良かった。

・駆けつけた喜江に雨宮たちは無事救出された。部屋に荷物置きっぱだし乗ってきた車どうすんねんとかいろいろ雑念が入ってしまって集中が途切れかけた。だからトウヤのお面はやく外してやれって!怖いから!外してくれたよかった。


・動画として十分すぎるほどの撮れ高を得たわけだけど「その家にはその家の秘密がある」として結局公開しなかった雨宮。いいんだ、張りすぎってくらい体張ったのに。栗原さんと仲良くなってるのもなんかいい。思えば柚希との親交よりも栗原さんとの親交に重きを置いてる描かれ方をしていたように感じる。映画化あるあるの要らん恋愛要素が勝手に組み込まれる、というのがなかったのは良かったなと思った。

・本家が焼け落ちて重治たちも死んだのに、まだ左手供養に囚われてる綾乃。「またお母さんがなんとかしてあげるから」という喜江の発言。視線の先には炊き出しに集まったホームレスたち。「また」とはどういう意味だろうか。そういえば2回目の左手供養の時、綾乃と慶太は何もしていないが本家に『左手』が送られてきたという話だった。その左手を送ったのは一体…?また、その手の持ち主は一体誰だったのか。


・喜江だろう。喜江がどこからか左手を『調達』し本家へ送った。ではどこから『調達』したのか。喜江はボランティアで炊き出しの手伝いをしている。いっぱいあるじゃないか。行方不明になっても、万が一遺体が見つかっても困らない『素材』が。適当なホームレスから『調達』し、それを本家に送ることで左手供養を終えたんだろう。でももう重治たちはいない。左手を調達したとて『供養』する人間がいなければ、その必要性は果たしてあるのか。

・慶太だ。唯一遺体の見つかっていない行方不明の慶太。慶太はきっと生き延びていて、喜江から送られてくる左手を待っているのだろう。『供養』のために。

・─そう考える余地を与えてくれる終わり方だと思ったのに。最後の最後、賛否が最も分かれるであろうシーン。雨宮の家もまた『変な家』だったというオチ。ここは正直なくてもよかったと個人的には思うけど、入れることで「あなたが住んでいる家は大丈夫ですか?」とこちら側に投げ掛けて案外他人事じゃないかもしれませんよ、と不安の種をばら蒔いている。あともうひとつ、雨宮の家を『変な家』にすることで喜江が雨宮宅にどうやって侵入したかの説明にもなると思った。


・軽~く感想を書くつもりだったのにめちゃめちゃ長くなってしまった。ここまで読んでくれた方どうもありがとうございます。あ!エンドロールのクレジット、ちゃんと見ました。かまみくを先に聴いてたから、みくのしんさんの名前があるの実際に見てにっこりしちゃった。


・これは完全に本筋と関係ない余談ですが『左手供養』のワードが出るたびに、オモコロチャンネル生放送「銀のさら回」での最悪の左手供養が頭を過って集中力が途切れる罠に嵌まってしまったことを報告いたします。

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