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「マスクは無駄」「コロナにかかることはない」 幸福の科学の"密"すぎる講演会

(Saitama, Japan)宗教法人・幸福の科学は12月7日(火)、埼玉県のイベント施設で講演会を行った。この「エル・カンターレ祭」と呼ばれる集会では、教祖・大川隆法の演説が行われた。平日の夜、コロナ禍にも関わらず1万人近くが動員されたと見られ、会場前では数千人が受付前に列をなして密集していた。また、当の大川氏は講演で「(マスクは着けても無駄です」「(新型コロナウイルスに)かかることはありません」と発言。同教団の新型ウイルス感染対策に対する意識の低さ、そして同教団の常軌を逸した教えの実態が明らかになった。
今回は新型ウイルスに関する話題を中心に、”密すぎる”現地レポートをお届けしよう。

(2020.12.14 pm9:39 記事を編集しました。一部の大川氏の発言が冗長だったので、直接引用するのではなく、筆者が内容を要約する形に変更しました。また、HSUに関する記述を追加しました。)

会場前で数千人が「密集」

筆者は当日の午後5時代に、会場の「さいたまスーパーアリーナ」前に到着。平日の夜にも関わらず、とてつもない長蛇の列だ。屋外で、ほとんどの人がマスクをしているとはいえ、こんなにも大勢が密集しているのは、危険ではないだろうか。(写真)

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写真は長い列の最後尾付近。横2列で連なっていた。ここはアリーナの二階に相当する広場であり、ここから地上に降りた後、会場内に入り、受付に到達するまで、およそ40分もかかった。ずっと写真と同様の間隔が保たれたわけではなく、もう少しだけ感覚が空いた時もあったが、やはり”密”に変わりはない。
受付前に到着するとアルコール消毒を促され、手荷物検査とボディチェック、そして液体物を持ち込んだ場合、一口飲んで毒見をする。その直後に受付を済ませ、ようやく入場完了だ。

本当は会場内の様子もお伝えしたかったが、教団側が一切の写真撮影等を禁じていたため、やむなく断念した。なにか写真を撮られたくない理由でもあるのだろうか。

観客席は1席ずつ間隔を開けていて、ほぼ満席だった。本来、さいたまスーパーアリーナは最大23,000人を収容できるが、その半分以下の来場者数だろう。それでもかなりの人数だ。

そして気になるのは、一階のアリーナ席。このエリアの座席は折りたたみイスであり、一席分の間隔は推定40-50cmしかない。これは、新型ウイルス対策に必要とされる距離・2mよりもはるかに近い。また、アリーナ前方の「特別席」は間隔を開けずにギチギチに座っていた。この座席は、教団に1000万円以上の献金をした人が特典として座ることが許されている席である。彼らは途方もない金額を布施したにも関わらず、窮屈な折りたたみイスにギュウギュウ詰めに座らされ、感染リスクにさらされるのだ。褒美というより"罰ゲーム"ではないか。
また、会場に連れてこられた幸福の科学学園・中高の生徒らも、間隔を開けずに座っていた。

講演会は、午後7時に始まる。タイトルは「With Savior (ウィズ・セイビア) 救世主とともに」。なんだか小池都知事が唱えた「ウィズ・コロナ」と似ている。なお、救世主とは大川氏のこと。

前座として大川隆法・作詞作曲の歌が2本披露されたが、はっきりいって聞くに堪えないものだった。「はい、ヤイドロン、ヤイドロン、ヤイドロン、ファイト!」という宇宙人の名を連呼する奇怪な歌詞は、「麻原正晃のマーチ」にも通じるものがある。
そののち、教祖・大川隆法氏が満場の拍手に迎えられ登壇した。

週刊誌に載って...

冒頭、大川氏は「今年はゴールデンエイジの始まりという事になっていたが、振り返ってみると、大変厳しい年だった」と発言。ゴールデンエイジとは、幸福の科学の教えであり、『2020年以降、日本は黄金期を迎え、神理(=幸福の科学)発祥の地として世界から賞賛される』という予言を指す。この予言だけでも驚きだが、実際のところ、今年、彼らは賞賛どころか、世間から怪訝な目で見られていた。

今年の2月以降、幸福の科学はコロナ禍にもかかわらず香川、仙台で相次いでイベントを行い、それぞれ約1000人を動員。すると、大川氏いわく「週刊誌に載って、〈大川隆法は1000人以上の講演会を平気でやっている〉と公安関係者から書くように伝えられた、と書いてあった。あららららら、1000人くらい集めただけで、いけない事になっているんですかと、私はびっくらこいこい」だそうだ。世間からは冷たい反応だという事だ。そして、大川氏の言うことが事実なら、公安からも良く思われていないことになる。

「しかし、それらの講演会でも、コロナウイルスなんか一人も出ませんでした。(会場拍手)ハハッ、ありがとうございます」

教団内に感染者はゼロ?

大川氏の問題発言は、まだまだ続く。
幸福の科学の職員や、参拝施設も、新型ウイルスを理由にした休業等は無かったという。実際に筆者が確認した参拝施設のスケジュールも、例年通り、毎日のように内部イベントが目白押しだった。それにも関わらず、感染者はいないという。

更に、系列の幸福の科学学園・中学高校についても「全寮制なので、休ましても寮にいるだけですから、そらあ、寮の中だけでじっとしてろと言ったらおかしくなりますので、通常通りの授業をやるように、という事で。全国でただ、うちの学園だけが一年中、入学式から卒業式まで全部通常通り。これも、内部の方で、かかった方はおりません。(会場拍手)」

ずっと寮にこもっているとおかしくなる、と主張した大川氏。それなら、生徒は保護者のもとに返せば良いではないか。

「ついでに言うとHSU※も、文科省の"支配下"に無いので、自由にやれるので、授業は毎日(通常通り)やり、文化祭もへっちゃらでやってしまったんですが、全然、感染者は出ておりません!(会場拍手)」

※HSUとは、当初「幸福の科学大学」としての開校を目指したが文部科学省の認可が得られず、私塾としてオープンした「大学もどき」。卒業しても大卒資格は得られない。東京都江東区にキャンパスを構えているが、オンライン授業を導入しなかったため、生徒が電車等で例年通り通ったと見られる。さらに11月には、千葉の長生キャンパスで2日間の文化祭を開き、かつてオウム真理教を擁護した宗教学者・島田裕巳の講演を行った。

これらはコロナウイルスに対する世間の流れと真正面から対立する、危険極まりない選択だ。それでも感染者は出ていないという、この”大本営発表”を我々は信じて良いのだろうか。なお、同教団内で体調不良者が出た場合、どのようにして教団本部に伝達が行くのか等の仕組みは公にされていない。

(また、今年8月にコロナ陽性になった「つるの剛士」氏は幸福の科学信者ではないかという説が浮上しているが、これについて言及はなかった。もし仮に彼が信者だとしたら、なぜ数に含まれていないのだろうか。参考:日刊ゲンダイ記事 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/278989)

「こういうことを考えると、私たちは客観的に”被験者”として、”資料”を提供しているだけ。今年の春、全国の学校が一斉休校になり、感染者ゼロ(当時)の岩手県まで閉めてしまった。これが正しいか、私は不思議に思ったんで、”実験”してみたんですが、全然かからなかった」

つまり大川氏は信者たちを、新型ウイルスの”実験”の道具にしたわけだ。なんと無慈悲な神だろう。また、なぜ信者たちは、自分たちを危険に晒す教祖についていくのか。

「今日、本会場は埼玉県の要請によりマスクいっぱいしてますけど、まあしても無駄ですけど、出来るだけしておいてください。会場貸してくれないといけないから、なるべくしておいてください。かかることはありません(会場拍手)ハハッ。」*1

とんでもない発言のオンパレードである。ここまでくると、もはや正気とは思えない。

*1なお、大川氏は通常、講演の後半に重要なメッセージを大声でがなりたてるという、ヒトラーにも似た演説スタイルが特徴だ。しかし、上記の発言はわりと控えめな口調だった。しかも会場では拍手が起きると、か弱くハハッと笑って「ありがとうございます」と口にした。ほんとうは大川氏自身も、今に感染者が出はしないかと不安なのではないか?

一体なぜ、大川氏はここまで大胆に「かからない」と宣言するのか。それは、この教団の教えと密接に関わっている。それを理解しなければ、この教団の真の実態は見えてこない。鍵となるのは、この後触れられる「信仰免疫」だ。

「信仰免疫」とは。信仰心があればコロナにかからない?

「当会には2000人の職員がいて、彼らが今年一年間、通常通り働いても誰もウイルスにかかっていない。学校もそう。なんでだろう?それは、私の言ってる通りです。当会の信仰免疫っていうのが、あるんです。これ最強なんです。宗教と言っても、感染するところもあるじゃないかという人もいますけど、宗教にも違いがあるんですよ。上から下まで。(会場拍手)」
「うちのは明らかに、悪なる物と戦って、それをせん滅する力を持っています。これは、『THE THUNDER ーコロナウイルス撃退曲ー』をはじめとする、大川隆法・作詞作曲の曲、それ以外にも、私の講演CD、DVD、本、全部ウイルスと戦う武器になっております。だから広げてほしいんですよ。本当に、合わなくなるんです。」(写真:YouTubeより)

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つまり大川氏は、コロナウイルス対策として自らの楽曲や講演の映像を観たり、本を読むことを勧めているのだ。
「何を言っているんだ。ただ本を読んだり、曲を聞くだけで、コロナにかからないなら苦労しないよ」、と思うのが普通だろう。ところが大川隆法氏は、これを「信仰免疫」あるいは「法力ワクチン」と呼んで、この一年間、大真面目に宣伝してきたのだ。

大川氏が今年5月に発刊した書籍『コロナ不況下のサバイバル術』から引用しよう。
「「信仰免疫」と書いてあるとおり、「神仏を信じる力」が免疫力になるのです。これが、昔から「信仰心で病気が治る」と言われている理由の一つです。(中略)実際に調べてみても、現実に高まっているのです。そのように、毎日、神仏の力、ご加護を信じ、信仰を実践して生きていると、免疫力が高まっていきます。そして、悪質なウィルスや病原菌などが体のなかに入ってきても、白血球が異常に活発になり、侵入してきた悪質の黴菌、ウィルス等と戦うわけです」
「自分は神の「光の天使」の一人だと思うような生き方をしていれば、免疫力は強くなります。そして、「使命あるかぎり、私を護りたまえ」という気持ちで生きていくことで、体内に入った悪いものを追い出すことができるでしょう」(p137-138)

また、今年2月の香川県での講演会で、大川氏は「(マスクは)全然要りません。コロナウイルスを死滅することも可能です。そういう法力を持っております」と発言。法力、つまり目に見えない宗教的パワーがあるから、コロナの心配はするな、と言うわけだ。(ザ・リバティWebの記事より。https://the-liberty.com/article/16834/
なお、後に記事の内容は改変され、当該記述は削除された)

更に、幸福の科学は「新型コロナウイルス感染撃退祈願」というものを、有料で行っている。(写真:祈願のチラシ)

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写真の通り、教団はこの祈願が「新型コロナウイルスの感染を防」ぐための祈願、としている。このような幸福の科学の驚くべき実態は、海外でも波紋を呼び、今年4月には、かの有名なアメリカの新聞「ニューヨーク・タイムズ」でも詳しく報道された。(記事リンク:https://www.nytimes.com/article/happy-science-japan-coronavirus-cure.html)

まるで、『このような「信仰心による免疫」や「祈願」が存在する。だから我々はコロナなど恐れない』と言わんばかりだ。そして現実に、彼らは今年一年間、例年通りのスケジュールで活動し、1000人規模の集会を行ってきたのだ。全くもって、通常の感覚では理解し難い世界である。そもそも、「信仰免疫」や「祈願」に効果があるという主張の科学的根拠は不明だ。これの一体どこが幸福の"科学"なのか、不思議である。

再び、エル・カンターレ祭の講演から引用しよう。

「効くものがハッキリあります。幸福の科学の教えと、天上界から来る、悪なるものを粉砕する力は本物です。アメリカの信者の親戚のおばさんが、アメリカでコロナ陽性になり、日本から祈って、治ったという事例があるのです。ものすごく強力です。だから、できたらもう少し早く広めておけば良かった。特に、ニューヨークがあんな修羅場になったのは残念でなりません」

そんなに「ハッキリ」効くというのなら、今からでも遅くはない。アメリカでは、今日も感染は拡大しているのだから、大川隆法氏自ら、ニューヨークでの感染減少を祈れば良いではないか。

まとめ

さて。以上の内容を総合すると、幸福の科学は、科学的根拠のない「信仰免疫」の教えを説いている。そして、その教えのもとに、平気で約1万人もの人を集め、「密」を形成している事になる。会場でのソーシャル・ディスタンシングなど、政府や地方自治体の唱える感染対策も一部機能していない。また、埼玉県が県内でのイベント開催者に「必ず導入」を要請している「接触確認アプリ」も、当日、現地での来場者に対する使用の呼びかけは無かった。(参考:埼玉県ホームページhttps://www.pref.saitama.lg.jp/a0401/covid19/eventtaio1119.html)

ちょうど今年、お隣の韓国では、宗教団体の新型コロナウイルス集団感染が大きく報道されたところである。日本社会は、このような幸福の科学の暴挙を、放置してよいのだろうか。

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