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百田尚樹氏が"支持表明"した「幸福実現党」。 彼らは人命を危険に晒し、"世界同時革命"を目指す狂気の集団だ

4月30日、作家の百田尚樹氏がツイッターで「「日本第一党」と「幸福実現党」が一議席ずつでも取れば、国会も少しは面白くなるのになあ…」とツイートした。
ベストセラー作家として大きな影響力を持つ同氏が、カルト宗教を母体とする政党に対し、事実上の支持を表明してしまったのだ。
なぜこんな事になってしまったのか、そして「幸福実現党」の驚愕の実態について、詳細をお届けする。

見出し画像:百田尚樹氏
(航空自衛隊ホームページ, CC BY 4.0<https://creativecommons.org/licenses/by/4.0>, via Wikimedia Commons)

問題のツイート

百田尚樹氏は日本の放送作家、小説家。テレビ朝日系列の人気番組「探偵!ナイトスクープ」の構成を務めるほか、小説「永遠の0」は300万部を超えるベストセラーとなり映画化もされた。
また、ツイッターの熱心な利用者であり、46万人のフォロワーを抱えている。特に政治に関する保守的な発言が多いことで知られる。

そんな彼が今回投稿したツイートがこれだ。

本記事執筆時点で1.2万もの「いいね」を獲得したこのツイートは、幸福実現党に議席を取ってほしいという思いが伺える内容であり、事実上の支持表明と受け取れる。

なぜこんなことに?

そんな百田氏が”支持表明”に至ったきっかけは「動画配信」と「アメリカ大統領選」である。

同氏はニコニコ動画やYouTubeなどで毎回ゲストを招きながら、保守的な政治談義を繰り広げる動画を、月に何本も投稿している。

事態が動いたのは去年11月、アメリカ大統領選でドナルド・トランプ氏が落選した時だった。トランプ氏は「選挙で不正があった」「票が盗まれている」と根拠のない主張を展開し、これに百田氏などの、いわゆる”ネトウヨ”が多く追随し、根拠のないデタラメ=陰謀論を並べ立てた。(ただ、一部のネトウヨはこの流れに反発し、陰謀論を信じる人々と信じない人々に分裂した)

そんな中、一人の人物が百田氏の目に止まった。YouTubeで”不正選挙”論を熱心に展開する「及川幸久」氏である。彼が陰謀論を唱える動画は、毎回30−50万回の再生数を誇り、政治系ユーチューバーとして一時トップの視聴数となった。そして、この男こそが、幸福の科学を母体とする政治団体「幸福実現党」の幹部なのである。

百田氏は及川に声をかけ、動画で共演。及川氏は明晰な頭脳と巧みな弁舌で、「米民主党が投票用紙を数える機械に細工した」などと、根拠のない陰謀論を唱えた。これは”不正選挙”を信じるネトウヨから多大な支持を集め、百田氏も及川に心酔する。

こうして及川をきっかけに、”不正選挙ネトウヨ”の間では「及川って人、見どころがあるな」「この人が所属する幸福実現党って、意外といいんじゃない?」という考えがジワジワと広まっていった。この流れは、既にバイデン大統領が就任して100日以上たった今日も続いているのだ。

そもそも幸福実現党とは

そんな幸福実現党とは何かというと、宗教法人「幸福の科学」を母体とする政治団体である。2009年の立党以来、反中国共産党、日本国憲法の全面撤廃、核武装・再軍備などの極右的政策を掲げてきた。ただし一方で、天皇制の廃止を訴えたり、天皇や皇后陛下の「霊言」を収録したり、億単位での移民受け入れを唱えるなど、既存の保守派とは全く相容れない「エセ保守」という側面もある。

国政選挙のたびに大量の候補者を擁立しているが、いまだに当選者は一人も出ていない。

政策は全て、幸福の科学の教祖・大川隆法のオピニオンがそのまま反映されており、党の最高位である「総裁」も大川が務める。

そもそも大川は、自身を地球上で最高の神であると位置づけており、仏教、キリスト教、イスラム教に代わる世界宗教としての地位を獲得するという、途方もない野心を抱いている。幸福実現党も、「自公政権ならぬ自”幸”政権」、つまり自民党と連立しての与党入りを目指すと明言している。宗教的にも政治的にも、壮大な野望を描いているのだ。

狂気の実態①「アグネス・チョウさん事件」

そんな幸福実現党は、驚くべき問題行動や発言をしている。代表的な例を三つあげよう。

一つ目は、「アグネス・チョウさん事件」だ。

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写真右:アグネス・チョウ(周庭)氏 (Iris Tong, Public domain, via Wikimedia Commons)

2019年、中国は香港への締め付けを強めようとし、これに反対する大規模なデモが起こっていた。そんな中、大川隆法は香港の民主活動家、アグネス・チョウ氏の「霊言」を収録した。これは、アグネス氏の「守護霊」が大川の肉体に憑依し、大川の口を通じて地上のアグネス氏本人の「本音」を語るという儀式である。

この中でアグネス氏(守護霊)は「香港に自衛隊を派遣してほしい」「アメリカ、イギリス、日本が軍隊を送ってきたら戦い続けることは可能」などと主張した。

数日後、幸福実現党は、あたかも地上の本人が「自衛隊派遣」を要請しているかのような誤解を与えかねないビラを都内各地でバラまいた。(写真)

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やがて事態は大ごとになり、中国共産党系のメディアCCTVがネット上で「アグネス氏本人が自衛隊の派遣を求めている」と誤報してしまった。

アグネス氏(地上の本人)はツイッター上で、「私の名を騙(られた)」「「自衛隊に香港を助けて欲しい」と言っていない」として、記事の「削除」を求めた

しかし、これに対し幸福実現党は、世間を驚愕させる対応に出た。なんと、ツイッターで声明を発表し、例のビラは「守護霊の発言を紹介したものであり、地上のご本人の発言ではない」と一蹴したのだ。
ビラに関しては、後に"守護霊"の発言であることを強調した訂正版を公開するに留めた。

以上が事の経緯である。

そもそも「霊言」なるもので他人の「本音」を捏造する行為自体が悪質である。加えて、アグネス氏は中国共産党から強く警戒されている”民主派”の活動家である。そんな彼女が、中国共産党系メディアに「自衛隊派遣を要請」と報じられれば、いよいよ中国は彼女を危険人物とみなすだろう。命を狙う可能性すらある
そのような事態にいたり、本人に抗議されたにも関わらず、ビラの内容を撤回せず、「守護霊が言ったことだから」という手前勝手な論理で開き直る。何せこの後、彼らはこの「霊言」を書籍化して販売までしているのだ。これが幸福実現党、厚顔無恥を極めた集団なのである

しかも、同党はアグネス氏に反対しているわけではなく、むしろ応援している。自分たちが、いわば「仲間」だとみなす人物にすら危害を加えるなんて、もはや悪質を通り越して狂気の沙汰だ。
百田さん、こんな危ない人たちに関わったら、あなたもいつか理不尽な目にあうかもしれませんよ。一度考え直してみてはいかがですか。

狂気の実態②中国も顔負け、5歳児に「”地獄”教育」

二つめは、党首・釈量子氏が去年投稿したツイート(削除済み)。幸福の科学信者である5歳児らに対し「幸福実現党」と「地獄実現党」のどちらかを選ばせる”模擬選挙”の様子だ。

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彼らの認識では、神が作った正しい政党である幸福実現党に対し、バラマキ政策を行う左派は「地獄」なのだ。彼らは本気でこのような世界観を持ち、年端も行かない幼児たちにこれを刷り込んでいる。中国共産党も顔負けの”トンデモ思想教育”が、現代の日本で行われているのである。

これらだけでも唖然とさせられるが、常軌を逸した実態はまだある。

狂気の実態③「神仏の心」と「世界同時革命」

最後、三つ目は「憲法」についてだ。これを見れば、彼らが一体どんな世界を作ろうとしているかが分かる。

大川は2010年、「新・日本国憲法 試案」というものを発表している。これは、現行の日本国憲法を撤廃し、新たに大川が提案した憲法を打ち立てるべきだという提言である。

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全16条からなる憲法の前文には、こう書かれている。「われら日本国国民は、神仏の心を心とし、日本と地球すべての平和と発展・繁栄を目指し、神の子、仏の子としての本質を人間の尊厳の根拠と定め、ここに新・日本国憲法を制定する」

ここに登場する「神仏の心を心とし」や「仏の子としての本質」といった文言は、幸福の科学の教義を反映したものである。また「神仏」とは何者なのか明示はされていないものの、教祖である大川隆法を指している可能性は高い。
つまり幸福実現党は、国の最高法規である憲法に、幸福の科学の教えを取り入れようとしている。その上で日本を、全ての国民が「大川の心を心とする」国に作りかえようとしている疑いが強い。

さらに、大川が2009年に発刊した著書『幸福実現党宣言—この国の未来をデザインする—』には、こう書かれている。

「マルクスが出した『共産党宣言』の向こうを張ったつもりです」
「『幸福実現党宣言』は、「神仏の存在を認め正しい仏法真理を信じる人々の力を結集して、地上に、現実的ユートピアを建設する運動を起こす。そして、その政治運動を、日本を起点として起こしつつも、万国の人々にもまた波及させていく、正しい意味での世界同時革命を起こすつもりである」という宣言です」

極右なのにマルクスを強く意識し、「革命」を目指すというのも甚だお笑いではある。だが実際、ここで言われていることは全く笑い事ではなく、かなり戦慄させられる内容だ。

「正しい仏法真理を信じる人々」というのは曖昧な言い方だが、彼らの中で「仏法真理」とは、幸福の科学の教義を指す。つまりこれは幸福の科学の信者のことである。
したがって、大川が目指しているのは「世界中の幸福の科学信者の力を結集して、マルクスもびっくりの世界同時革命を起こす」ことなのだ。

幸福実現党は「革命」を起こして、この日本を、そして全世界を、幸福の科学の教義と理念に基づいた世界に作りかえようとしているのではないか。こういった、恐るべき野望を追い求めている可能性に、百田氏は気づいているのだろうか。そうだと知った上でもなお、本気で「公明党より100倍いい!」と思って支持しているのだろうか。

最後に

百田氏は大川と違って、信者に一人何十冊も自著を買わせなくてもベストセラーを叩き出せる、本当の人気作家だ。大きな影響力を持つ彼が、こんな政党を応援してしまう悪影響は極めて大きいだろう。いま、彼の見識が問われている。

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