見出し画像

回避型、不安型愛着スタイルの後輩と働いて学んだこと

ほぼ会社勤めのない暮らしを送っているが、これまでの2年間だけ会社で勤務したことがある。

今日は、ずいぶん手を焼いたそのときの会社の後輩の話を記そう。

最初の頃、彼の印象は最悪だった。

彼の特徴といえば、

・常に眉間に皺が寄っており目つきが悪い
・人の話を聴けずに、貧乏揺すりをしたり指で机をトントン叩き出す
・人の話をさえぎり、自分が言いたいことを言いたいだけ言おうとする
・疎外感を覚えやすく、すぐに心を閉ざす
・責任を回避する
・地雷が多く、すねやすい

ざっと挙げただけでも、こんな感じ。

僕のあとに会社へ入ってきたこともあり、世話を焼く立場を任されたのだが、率直述べればものすごく難儀だった。

「こんな面倒なヤツがいるのか!?」というのが本音。

昔から人間関係に悩んだときは心理学の本を読むようにしているのだが、いろいろと調べているうちに彼が愛着に関するなんらかの問題を抱えているように感じ始めた。

僕も愛着不全の傾向があったので、彼の気持ちはなんとなくわかる気がした。

どこか自分と重なるところもあったのだ。

何か任せようとすると「自分にはできません」「無理です」と責任を回避しようとする。

でも人がやっていることにはいろいろと口出しして、論破する悪癖があった。

当然ながら会社では浮いてしまう。「困ったやつが入ってきた」と煙たがられていた。

彼が人嫌いでコミュニケーションを避けるタイプかといえば、そうでもない。

観察していると、どこかで人との関わりに飢えている感じがするのだ。

全身から、さびしさが漂っていた。

一度、飲みに行ってじっくり話を聴いてみようと思い、誘ってみると「まあ暇なんで、行ってもいいっすよ」という返事をもらったが、きっと内心喜んでいたのだろう。

彼の話を否定せずに聞いていくと、やはり親子関係がよくなく学校でもずっとひとりぼっちで過ぎしてきたという。

心を開くと、いろいろ話してくれた。

バイトで数百万円を溜めて家を出たものの、就職して社会人なるのが怖くてしかたなく数年間は何もしないまま暮らして、立ち行かなくなり勇気を出して会社に入ったらしい。

僕も不安から社会に出る前に、長らく立ちすくんだ経験があるので「自分と似ているところがあるなあ」と共感した。

それまでは彼に「人が不愉快になる行動はやめた方がいい」「相手の立場で考えてほしい」「相手の気持ちを想像しよう」みたいな声掛けをしていたが「長所にフォーカスしないと何も変わらないタイプかも?」と思い直したので、関わり方を根っこから変えた。

愛着形成が上手くいかなかった人には、心の安全基地が必要だという。

このあたりは精神科医の岡田尊司さんが、詳しく書いておられるので興味がある方はそれを読んでいただくとわかりやすいだろう。

自分に対して無価値と感じていたので「このプロジェクトを一緒にやろう」と寄り添う形で彼に仕事を任せてみた。

きっと「これひとりでやってくれる?」という頼み方だったら、難色を示しただろう。

彼はこの地球でずっとひとりぼっちで生きてきており、社会も他人も信頼できなかった。

不信の塊だったのだ。

不信を信頼に変えるには、変わらず温かく接してくれる人の存在が不可欠である。

地頭が良かったので自信がつくと、バリバリ成果を出すようになった。

もうしばらく会っていないのだが、違う会社に移り部署の中心的な働きをしていると伝え聞いている。

人は多面的なので、どこに焦点を当てられるかで人生が変わる。

短所にばかり目を向けられ「お前はダメな人間だ」「ここを改善しなさい」とだけ言われていると、腐るのは当然だろう。

そういえば、この前見た映画の『窓際のトットちゃん』で、こんな場面があった。

自由奔放でエネルギーがありすぎるトットちゃん(黒柳徹子さん)は、学校で問題児扱いされ転校をよぎなくされる。

新しい学校の校長先生は、トットちゃんの話を数時間にわたって、一切否定せずに聞き切ったあと「君は、ほんとうはいい子なんだよ」と優しく語りかける。

トットちゃんの存在を肯定し、光を当てる名場面だ。

このシーンを思い出すだけで涙があふれそうになるが、否定され「おかしい」「変だ」と言われ続けてきた人ほど、他者からの肯定に飢えている。

否定され続けてきた人ほど、自身で「自分はダメな人間」というネガティブなラベルを貼りがちだ。

だからこそ笑顔で「全然そんなことないよ」「あなたの中に素晴らしいことはたくさんある」と何度も伝えられる体験が大切なのだろう。

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?