見出し画像

心理が開業して思うこと(一年目編)

開業して一年余り過ぎたので、なんとなくつらつらと書いてみようと思う。もともと自分は開業なんて一ミリも考えていなかったし、やりたくもなかった。師匠に勧められても2年は粘った。非常勤の雇止めの恐怖が見えた時に、開業に踏み切った。結局雇止めにはならなかったけれど、人は結局最後はお金だ(というか生活)。

開業して思ったのは、開業に近いスタイルで働いていたとはいえ、やはり組織にいるということは非常に大きく守られているということだ。事務用品は自分で調達しなくてはいけないし、トイレ掃除は自分でやらなくてはいけないし、組織の傘はないし、ブランドもない。丸裸でやらないといけないのは結構辛い。いただいたお金の管理ももちろん自分でやらないといけない。事務の人が処理してくれるわけではないし、せっせと銀行に行って、釣札を用意しておかなければならない。これは結構面倒くさい。楽しいとも思うけれど。

開業にあたって心配だったのは立地だ。非常に不便な場所にあるうえ、場所柄もあまりよくない。下町と言えば聞こえがいいが、情緒あふれる下町は川向こうの話だ。ただ結論を言えば、近隣の人が来るわけではない。接続は関係するだろうが、信頼関係があれば、距離はさほど問題ではない。米国では飛行機にのってSVに行く事例だってあるわけだから、そこは心配すべきポイントではない。駅前になければ不利、ということもあまりないだろう。ただ、人の入りはかなり不安定で、来るときは来るし、来ないときは来ない。特に初めは。問題は、申し込みが来ないと自尊心の維持が難しいということだ。自信がなくなると、流石にやれない。自分は、大きな書斎ができたのだと思うことにしていた。

一年目を乗り切る資金の裏付けはあった方がいい。初年度の赤は気にしても仕方がないが、十分に生活していけるメインのお仕事があると、心の方は少し安定する。ランニングコストをにらみながら臨床を行うと、ノルマが出てクライエントに悪影響を及ぼすというのは信田先生の言だが、それはそうだろうなと思う。自分は幸いそれはさほど問題ではなかったけれど。ただ、今の職場を馘になってもやれる場所があると思うことは精神衛生に大きく貢献したと思う。

自宅開業の大きな利点は、通勤時間がないことと、ケースがなければ寝ていてもいいということだ。自分は脳に疾患を抱えているので、こういうゆとりは非常に重要だった。特に通勤というのは非常に体力を奪うことをこの一年思い知った。あれは、本当によくない。あと、定休日は作った方がいい。できれば連休があった方がいい。時間を埋めようと無理をしたり、休みをなくすとろくなことはない。あと何でも引き受けるのは現実的には難しい。それは組織の力が必要なこともしばしばある。

幸い、色々な出会いがあって、一年やってこられたと思う。本当にたまたま、運が良くて、一年をやり通すことができたんだなと思う。アクセス解析を見ていても、アクセス数と新規申し込みは相関するんだろうとは思うが、来て下さる方は来て下さる。一方で、半分くらいは中断となる。相性とかこちらの力不足とか、関係を構築できなかったことが大きな要因だろうと思う。ただ、どこで統計を取っても一般にそうなのだ。だから、継続的に来て下さるクライエントとしっかり関係を作っていくことが一番大事。これは基本的なことですけどね。みんなに開業どうですかと聞かれることが多いけど、本当に通勤がないことが一番の救いだと僕は思っている。開業ならではの事例もありますかといわれることもあるが、それはそうとも言えるし、そうでもないともいえる。ただ、ニーズはあるんだろうとは思う。


あと、自分の価値を安売りしないほうがいいですよ。強気のお値段設定の方が僕はいいと思う。安く設定すると、安くしたなりの逃げが出るかもなと思います。

よろしければ、サポートいただけると幸いです。気になる話題などの、ご要望お待ちしております。