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レーザー核融合ニュースの続き、課題

セミナーで自分が紹介した資料からもう一枚。レーザー核融合方式で、カプセルを圧縮するのに使う入力エネルギーを出力エネルギーが超える”点火(ignition)”という目標に近づきつつあるものの、核融合発電となるとまだまだ課題は多い。私見としてセミナーで発表した課題は、以下の3つ。

1つ目は出力エネルギーの増倍分(ゲイン G)。現状のデザインでは、入力エネルギーを超えるものは期待できるが、発電に使えるほどの高出力は得られない。これはターゲットデザインの問題で、今のターゲットではどう頑張っても不可能。さらに大きなゲインを得るには、新たに別のターゲットデザインが必要になる。

2つ目は、核融合反応を起こせる頻度、繰り返し。レーザーを使った方式の場合、核融合エネルギーが出力される時間は非常に短く、エネルギーが安定して発生するいわゆる定常運転のようにはできない。その為、レーザー方式では、1秒間に何回も核融合反応を起こして、いかにも連続で発生しているかのようにして発電につなげていくことになると考えられている。例えるなら、車のエンジンのシリンダーのように、1気筒(1つのピストン)だけじゃなく、気筒を繋げて、連続して燃料を燃やしていくようなイメージ。今回の最新研究に使われたレーザーは、世界最大のレーザーで、ショットができるのは、1日最大1発。核融合発電には、1秒間に数発は必要といわれている。

3つ目はエネルギーの取り出し。”核融合反応”といっても、出てくるエネルギーの形は中性子とアルファ粒子(ヘリウムイオン)。壁の外まで出てこれるのは中性子で、この中性子を熱に変えてエネルギーを取り出すことが考えられている。現状、中性子を測ることは出来ても、エネルギーを取り出す機構は実験室には設置されていない。中性子エネルギー変換の研究は行われていて、それをいつかの段階で実験装置付近に設置、検証する必要がある。2つ目に挙げたように、この施設は世界最大のレーザーで、設置するにもなかなか時間がかかる。

他にも課題は山ほどあるけど、このニュースが出てからちょっと分野内に新たな動きが出てきてるのは確か。11月にある学会で新たな情報が出てくるのかも。

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