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レーザー核融合実験のビッグニュース(2021/09)

9月の初めに、レーザー核融合研究の大きな発表があった(リンク(英語))。核融合研究は、将来的に発電を賄えるエネルギー源としての利用を目指していて、その1つがレーザーを使った方法。まだまだ発電までは道のりが遠く、現状、使用したエネルギーよりも核融合反応で発生させたエネルギーが上回ることを目指している。今年の春ぐらいに発表された論文によると、核融合反応による出力エネルギーは、使用したエネルギーの8%ぐらいとのこと。それが今年の8月の実験結果で、いきなり入力エネルギーに対して70%もの出力エネルギーが得られたとの報道がでた。8%になるまでにじわじわ上がってきてたのに、8%から70%にも増加したとの報道に分野の研究者が驚きまくり。しかも、報道が出たのが科学論文ではなくて、ニューヨークタイムズとかBBCとか報道のニュース(例えば、これ(Laser Fusion Experiment Unleashes an Energetic Burst of Optimism))やったから、何か虚偽の実験結果ではないか?との噂も出たり。一応報告として、自分のセミナーでも触れてみた(下図)。

9月に入り、この発表内容に関するセミナーが2回開催された。セミナーは同じ分野の専門家に向けたもので、実験、解析結果を出して説明と質疑応答。矢継ぎ早にされた質問に対して、研究チームが次々返答して、さらにセミナーの時間切れで答えきれなかった質問への回答が、今週、16ページにもわたる長文でセミナー参加者に送れられてきた。こういう質問を受けて答えるという、一見、当たり前のことを馬鹿正直に出来るのは評価できるし、この研究の信頼度が1つ上がる。過去にも、ビッグニュース!っていう報道、記者会見はあったけど、質問に答えれていないことが多く、5年以内に発電ができる!とか主張してた研究チームの現状は音沙汰なし、みたいなことも。

研究結果が飛躍的進歩と認知されるかどうかは、11月に予定される再現実験にかかっている。再現実験が成功すると、レーザー核融合による出力エネルギーが入力エネルギーを超えるいわゆるブレークイーブン(breakeven)を達成する可能性がいよいよ出てくる。再現されなくても、その結果を十分説明できるかどうかが、次につながる大事な点になるので、期待は大。

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