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007:『精油の化学』をなぜ学ぶのか?

既に、007までご覧いただいている方はご承知でしょうが、私は業界最高峰のIFA(国際アロマセラピスト連盟)と言うイギリスに本部のある老舗のアロマセラピストの団体に所属しています。
しかし、勉強を始める前、もちろん、私にも、アロマテラピーってなんですか?と言うような時期がありました。

出会いは人それぞれでしょうが、なんとなくいい香り。好きな香り。ずっとそばに置いておきたい香り。と、その心地よさから「アロマテラピー」と出会うかもしれません。
しかし、特別にアロマテラピーと言われなくても、私たちの日常には、香り(ニオイ)が溢れています。毎日食べる食事の匂い、草木の匂い、家族や、犬や猫の匂いなど、記憶と結びつくニオイ。
ガス漏れを知る為に都市ガスには匂いがつけられていますが、他にも食べ物が腐っている時のニオイなど、生死を瞬時に判断するためのニオイ。
嗅覚と言う感覚は、どちらかというと生きるという本能に忠実に働く感覚であると思います。

COVID19の長期にわたる後遺症のひとつに、味覚と嗅覚の喪失が言われていることで、少し身近に感じている人もいると思いますが、味覚の9割は嗅覚が補っているとも言われ、匂いを感じないと、味を感じないという人は多いです。

COVID19は、ハーバードメディカルスクールのリサーチによると、嗅上皮感染によって嗅覚喪失が知られていますが、同じように、嗅覚に異常をきたす疾患として無臭症があります。
無臭症は、一時的なものから、神経系の損傷によるものまで様々です。
この「嗅覚」に関しての研究は、五感の中でも、最近まで研究が遅れていた分野なので、特にこの10年、20年で、飛躍的に研究や考え方が変わりました。
その上で、アロマテラピー、つまり、嗅覚からの刺激を利用して体のどこに影響を及ぼしているか?と言うことと同時に、「何が」どう作用しているのか?と言う研究は近代になってからのものです。

「精油の化学」と言うと、アロマテラピーを少しでも勉強していると「成分表」と思われるかもしれませんが、実は、その成分表で何を判断しているか?も、非常に重要な要素です。しかし、精油の成分は、有機化学の分野から見ると、ものすごく限られた範囲の化合物で成り立っています。
薬学の歴史も出発点は、薬用植物から薬用成分を抽出し、有効成分を単離させるところからはじまったと言っても過言ではないでしょう。
つまり、この成分がこう言う作用をもたらす。と言うことは、外れてはいないと思いますが、全てではないのです。
精油は複数の成分が絶妙に配合されていることにより、自然のなせる技ですが、ラベンダーは、ラベンダーの。クラリセージは、クラリセージの。独自の香りになります。
成分を見比べると、酢酸リナリル、リナロールがどちらにも入っており、これらが、共通の作用である「鎮静作用」に関係していそうだ。と言うことも分かりますが、逆に鎮静のために酢酸リナリルやリナロールを単離成分として、香りを嗅いでも上手くはいきません。
精油に含まれている成分のバランスもとても重要であることがわかります。
また、嗅覚と言う感覚受容器が、匂いを知覚・認知するだけでなく、電気信号として視床を介さず直接、大脳辺縁系(海馬や扁桃体)に伝わり、視床下部、下垂体と伝達されることで、自律神経のバランスやホルモンバランスにも影響を与えられること。
香りを嗅ぐと言う行為は、呼吸を伴っており、同時に、微量ながらも、化学物質として口腔内、呼吸器系から粘膜吸収されること、肺でガス交換させること。
なども、近年になって分かってきています。
しかし嗅覚の解剖生理学上の影響は、薬理作用として伝統的にエビデンスがあるアロマテラピーに関してだけでなく、日用品に添加されている人工香料や付随する化合物でも同じことです。
日用品の人工香料では、アロマテラピーにはなり得ないことも、ここまでの話で、理解していただけるでしょうか?

精油にどんな成分が含まれているか?と言う事は、単離成分、例えば「リモネンが含まれているから血行促進作用がある。」では、精油の薬理作用の全体像を語ることもできないけれども、それでも精油がどういう成分を何割くらい含んでいるのかを学ぶことはとても重要なことです。
例えば、呼吸器系の不調に重宝されるユーカリプタスは、グロブレス、ラディアタ、ブルーマリなどなど、さまざまな小種名がありますが、いずれにしても、オキサイド類の1、8-シネオールが含有されています。この成分の含有量におけるユーカリプタスの長期多量使用への神経毒性が示唆されています。
用法用量を守れば、中枢神経への刺激強壮作用や呼吸器系の不調の緩和に役立ちますが、長期、あるいは、多量に使用すると、中枢神経系と呼吸器系へ有害に働きます。そう言った理由を明確に理解する為に、そして、長期や多量の目安を見定める為に、精油の化学や、人体の解剖生理学を学び、用法用量を守る必要が出てきます。

市販の本や、売り場の売子さんのおすすめで精油を使っても、目的を果たせなかった。例えば、安眠促進に薦められたラベンダーでは、眠れなかった。と言う話はよく聞く話ですが、それが「アロマテラピー」と、思ってがっかりされている方には、ちょっと違いますよ。と、言いたいところです。
そんなに浅い学問ではありません。

是非是非、体系的にしっかりと学んで、活用されるか、しっかりと学んだアロマセラピストを「かかりつけアロマセラピスト」として、頼ってくださいね。

そんなオルカさんでも、2023年春から超入門講座として「緑の薬箱」または「グリーンレメディーズ」として、実習材料を配布してのオンライン講座のコースを開催したいと思います。
テレビ番組の家庭の医学とか、主治医がどうのとかくらい簡単に説明できるように、ウネウネ考えてます。
どうぞよろしくお願いします。



ご支援ありがとうございます。いただいたご支援は精油の購入や「アロマケア」の臨床研究費としてありがたく頂戴して、研究成果を発表していけるように頑張ります。今後ともよろしくお願いします。