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【感想】能力を磨く by 田坂広志

まえがき

随分と書かない日が続いてしまいましたが、久しぶりに投稿。
最近は色々な人のおすすめの本を読むことにしています。

この本を直接お薦めしてもらったわけではないのですが、田坂先生の別の本が非常に読みやすかったので、こちらも手に取りました。

副題は”AI時代に活躍する人材「3つの能力」”となっており、AIに仕事を奪われる人が今後出てくるという予想がたくさんある中で、どうすれば、仕事を奪われないのか、ということを書いている本です。

知的労働の現場で仕事をするための5つの能力、そこからAIに取って代わりうる能力を示し、人間にしか持つことのできない能力を磨いていこうという趣旨でした。

本文

知的労働の現場で仕事をするための5つの能力

基礎的能力:知的集中力と知的持続力
学歴的能力:論理的思考力と知識の修得力
職業的能力:直感的判断力と叡智の体得力
対人的能力:コミュニケーション力とホスピタリティ力
組織的能力:マネジメント力とリーダーシップ力

このうち「基礎的」と「学歴的」の2つの能力は、確実にAIに代替されていくと言われています。
簡単に言えば、基礎的能力とはその仕事にどれだけ没頭できるか、継続できるかという能力、学歴的能力とは一般に「勉強ができる」と評される能力、つまり入試で試されるような知識の修得、あるいは修得力や論理的思考を指します。

なぜこれらがAIに代替されてしまうかというと、基礎的能力については、コンピュータは休みなく作業をし続けることができるし、入試で試されるような知識や論理的思考はコンピュータのほうが早く結果を示すことができるからです。あいまい検索や文章の校正など、AIを使った技術の開発がどんどん加速しています。
本書中にも「物知り」や「博識」が死語になってしまったとあり、ただ知識を憶えているだけでは褒められなくなっているとあります。
私も、血肉となっている知識はその人に自信を与え、信頼される要素などにもつながるので、知識があって困るというわけではないが、ただ知識を憶えているだけでは仕事ができなくなっていると感じます。

上記2つの能力はAIに代替されると言われているのに加え、「職業的」にもAIの力は及んできています。
それが「分析力」と「直感力」で、ビッグデータと呼ばれる大量のデータ処理技術(分析力)と深層学習の技術を組み合わせることにより、人間の直感的判断力に相当する能力を得ているとのことです。
工場での故障を予知する、犯罪の起きそうな地域、時間帯を予測し警備を強化する、タクシーで客が捕まりそうなルートを予想するなどすでに実社会にも活かれている例はいくつもあるようです。

ではAIに代替されない能力とは何なのか

AIに代替されない能力

職業的能力:直感的判断力と叡智の体得力
対人的能力:コミュニケーション力とホスピタリティ力
組織的能力:マネジメント力とリーダーシップ力

この3つの能力がAIに代替されない能力と言われています。
このような能力を持った人材とはどのような人材か、本書では

・長年の経験に裏付けされた高度なプロのスキルを提供できる人材
・顧客の心に触れる温かで細やかなサービスを提供できる人材
・そうした優れた人材を育てたり、マネジメントできる人材
としています。

またこれらの考えは海外の専門家でも同じような能力を指しており、
クリエイティビティ(創造力)
→直感的判断力に基づく知的想像力
ホスピタリティ(接客力)
→その根底に推察力や想像力に基づくコミュニケーション力がある
マネジメント(管理力)
→人間関係力や人間力に基づいて組織やチームを運営する能力

この3つが人間だけが発揮できる能力であり、AI革命の時代にも、人間に求められる能力であるとありました。

本書では、これらの能力が具体的にはどのような能力で、それを磨くためにはどのように振る舞えばよいのかをわかりやすく示しています。その中で、私が改めて大事にしたいと感じたことをまとめます。

”世界最高のシンクタンクは「創造性」ではなく「革新性」を求める”

その研究所では、どれほど創造的なアイデアを提案しても、それだけでは評価されず、そのアイデアを具体的に実行し、成果を出し、何らかのイノベーション(革新)を実現したとき、評価されるということでした。

実社会において、アイデアだけの人はなかなか評価されません。色々な人が色々なことを考えているわけで、そこからいかに具体的に行動できるか、行動できずともその指針を立てられるかが重要です。
歳を重ねるに連れ、知識や経験をつめる一方、実行力がなくなって口先だけになってしまう、そんな風にはならずにもう一歩を考える、あるいは実行できる人でいたいですね。

また、このような”アイデア実現力”というのは「目の前の一人の人間を納得させる力」や「組織を動かす力」を身に着けなければならないとあります。
つまり、職業的能力、対人的能力、組織的能力という三つの能力が、密接に結びついているのです。

”言葉を使わずに、どれだけコミュニケーションができるか”

言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションでは、非言語的コミュニケーションのほうが4倍伝わると言われている中で、相手の無言のメッセージをどれだけ受け取ることができているか、あるいは自分自身が無言のメッセージを伝えてしまっているかを考えることが大切とありました。

そして、この能力を身につけるためには「推察力」、「想像力」が求められるとあります。
AIが言語的コミュニケーションの部分を補うことができるようになるにつれ、言語を超えた部分をいかに察知してコミュニケーションをとっていく(忖度するということだけではありません)、そのためには相手の状況を想像する力が必要だということです。

また、本書では、AIがどれほど巧みに「共感しているような言葉」を語り、「共感しているような表情や仕草」を示しても、我々人間は、そこに何かの「違和感」を感じ、その言葉や表情や仕草に「共感」を感じない、とありました。
これらの能力は言い換えるならば「共感力」であり、人間にしかないもの、磨くべき能力として紹介されています。

この「共感力」ですが、相手の共感を得るよりも、まず、相手に深く共感することが大事であるとされています。
そして、共感は「同情」や「憐憫」ではなく、”相手の姿が自分の姿に思えること”とあります。

”苦労の経験が無ければ、本当の「共感力」は身につかない”

たとえ、その相手と同じ経験を持っていなくとも、自分自身にも、苦しい思いをしたり、辛い思いをした色々な苦労の経験があるならば、多少なりとも、その相手の気持を推測し、想像することができる。

人は苦労を経験して成長できると言われることがありますが、自分の人生に活かすだけでなく、他人を思いやれることもできるようになれるということですね。

”真のリーダーが抱くべき「究極の逆境観」とは何か”

人生において与えられる、すべての逆境には、深い意味があると覚悟を決めることであるとありました。
成長のために与えられたものだと思うことができれば、過剰に楽観的にならず、悲観的にもならずに進んでいける。そして、その経験すらも共感力に活かすことができますね。

”人間だけしかできない「究極のマネジメント」とは”

単なる管理業務の大半がAIによって処理される中、人間だけしかできないもの、それは「心のマネジメント」である。それは以下の3つからなります。

「共感協働のマネジメント」:部下やメンバーが、自発性や創造力、協調性や共感力を遺憾なく発揮し、互いに協力し合って優れた仕事を成し遂げられるようにすること

「働き甲斐のマネジメント」:部下やメンバーが、仕事に意味と意義を見出し、働き甲斐や生きがいを感じられるようにすること

「成長支援のマネジメント」:部下やメンバーの不満や不安、迷いや悩みに真摯に耳を傾け、その不満や不安、迷いを契機として、部下やメンバーが人間的に成長していくことを支えること。ある意味カウンセリングやコーチングと呼ぶべき仕事。

そして、心のマネジメントとして非常に役に立つのが、「聞き届け」という技法とあります。
単に表面的に相手の話を「聞く」のではなく、相手が語る話を、深い共感の心を持って、自身の心の奥底まで届くような思いで「聴く」というものです。
ただし、決して「そのまま鵜呑みにする」ということやその言い分に従って、何かの判断を下すという意味でもないというのが大切です。一度その主張、言い分を受け止め、共感した上で、リーダーとしてできることをやっていく、これがこれからのマネジメントに必要な力であると私も思います。

”AI時代の新たなマネージャー像とリーダー像を目指して”

先述のマネジメントに加えて、リーダーに必要な力は
「信念を持って魅力的なビジョンと志を語る力」
「誰よりも強く成長への意欲を持つ力」
「メンバーの持つ可能性を深く信じる力」
であるとあります。
部下にこの人と一緒に仕事をしたい、成長したい、成長して素晴らしい仕事を成し遂げたいと思われるようなリーダーになることが求められています。

あとがき

最後に、最近言われて嬉しかった言葉について話をさせてください。

”人は、経験したことしか共感できない事が多いのに、〇〇さん(私)は、まるで経験したようにその人の心に寄り添うことができるね”

今までの人生で苦労したことをもとに推測し、想像する、まさに共感力というものを褒められた気がしてとても嬉しかったです。

八方美人なところや人に怒られるのが嫌なところから、苦労した経験も、誰かの気持ちを考えて行動するという点においては、共感力を身につけるよい経験だったのかなと思えるようになりました。

今回、久しぶりに筆を執ったというのもこの気持ちを忘れないでいたいなと思ったからです、ありがとうございます。

2024年はまた色々な変化があると思いますが、一つ一つの経験を大切に生きていきたいです。

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