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Parlerを排斥する自由、トランプを支持しない自由

Parlerというサービスを怖いもの見たさで始めたのが2ヶ月弱前の話なのですが、検閲・モデレーションを行わないという方針が過激主義者の温床になる理由ともなっていました。そして遂に先日、Parlerのウェブホスティングを行っているAWSから排除され、アプリもAppleやGoogleから排斥され、その他決済サービス会社などからも拒絶されるようになり、事実上Parlerというウェブサービスは現状では存在しなくなりました。

Parlerの排斥が自由の侵害に当たるのかどうかは結構微妙だと思います。Parlerの存在意義である「何でも意見・思想を発出する自由」、そして「Parlerのようなウェブサービスが存在する自由」と、「民間企業がサービス提供を自由に行える、つまり特定の相手を拒否する自由」が衝突しているわけです。「民間企業が誰かのアカウントをBANする自由」はそもそも、思想の自由を制限するものなのか、それとも特定の思想を忌避する思想の自由を認めるものなのか。マトリョーシカみたいな話になってきてしまいますが、商業的自由が広汎に認められるはずのアメリカであれば企業の方が最終的には優先されるのではないでしょうか。

単にクラウド上のサーバが維持できなくなるだけなら、ローカルに設置したサーバでなんとかできなくもないでしょうけれど(サーバにかかる負荷や設置・運用費用は別として)、決済や広告関連のようにサーバ以外でもウェブ上から追放されてしまったら運営は立ち行かないでしょう。ドメインそのものはまだ生きているというか、ICANNとかレジストラからは消されていません。さすがにそこまではされないですかね。

ただ、ParlerがOSのプラットフォーム、クラウドサーバ、決済システムなどありとあらゆるサービスから削除されたのは明らかに先日のトランプ大統領支持者達による連邦議会侵入事件を受けてのものです。TwitterやFacebookからトランプのアカウントが削除されたのも同様の理由ですが、それなりにアメリカ国内では受け入れられているのでしょう。もちろん、ウェブサービスが制限するのは問題という非トランプ支持者の人もいます。そうは言っても今回の議会襲撃でトランプのライト支持層はそこまではやり過ぎだと判断して離れたのではないでしょうか。

秋にあった大統領選挙時に有権者の半分弱がトランプを支持していた状態とはかなり変わったのではないかと思います。

まだ20日のバイデン大統領誕生まで何が起こるか分かりませんが、とりあえずはバイデン政権は始まります。しかし、状況としてはバイデン支持が増えたというよりもトランプ支持が明確に減ったと言った方がいいでしょう。

バイデン政権が誕生してもそれでアメリカ社会が安定するとは思えません。先の選挙の不正がどうこうということではなく、そもそもトランプ大統領が2016年の選挙で勝ったこと、特に共和党の大統領候補になれたことの原因が残っています。

かつてオバマ政権を苦しめたティーパーティー運動はトランプ大統領ではなくペンス副大統領を生みました。副大統領だったバイデンももちろんよく覚えているはずですが、これから始まるバイデン政権の4年間で、ティーパーティー運動とトランプ復権運動との戦いが始まります。遅くとも来年の中間選挙までに対策を立ててそれらの運動が盛り上がらないようにしないと選挙で負けてしまい、オバマ時代に何度も起きた連邦予算の債務上限問題が復活するでしょう。

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