見出し画像

浜の真砂は尽きるとも世に接待の種は尽きまじ

法律や条令で規制される、あるいは官公庁の入札が命綱になるような産業では、政府と特別なつながりを求めてエリート官僚の定年後に天下りとして受け入れることはよくあります。企業だけではなくて、大学・公社・公団など官公庁の影響力の強い組織に行くこともあります。

今さら言及することでもないのでしょうけれど、数年前に大々的に摘発された、文科省における天下り仲介問題では他省庁の天下り斡旋も明らかになりました。

ゴキブリは1匹見つけたら30匹はいると言われますが、不正や汚職は発覚したときに氷山の一角と言われます。

これで天下りが根絶されたわけでもないでしょうし、それ以前にもあったでしょうけれど、業界団体と政府・官公庁の結びつき方は形を変えた、あるいは別ルートもあるのだろうなと思ったのが、先日の東北新社による総務省接待事件です。

今の菅首相が長男を東北新社に入れたのは2008年で、その翌年の総選挙後には官僚主導から政治主導を謳う民主党政権が誕生しました。

官僚中心の政治から官邸中心の政治になれば、官僚の天下りを受け入れるよりも有力政治家の子弟を受け入れる方が、許認可に左右される企業にとってはメリットが大きいでしょう。

先述の文科省天下り問題は2017年に起きましたが、東北新社のCS事業認定は2018年です。それらに直接的な関連はないでしょうけれど、法案作成だけではなく政治と企業の関わりも官僚主導から政治主導になっていっているのでしょうかね。

天下りしようがコネ入社だろうが、その人物を受け入れた企業や団体は政府とのつながりを持ち続けるには接待なり交渉なりは必要です。

だからこそ政府高官との会食を行うのですが、そりゃその場そのもので重要な政策や法案について情報のやり取りなんかしないでしょう。あくまで「交流を深める」ための儀礼的なものだったでしょうけれど、特定の企業が特定の官僚と特定な交際関係を持つことがそもそもアカンのですよ。

会食中の会話の中身に関係なく、会食自体が罰せられるのはそのためであって、弁明で何も無かったというのは弁明になっていないのですけれど。

そんなに一緒にメシ食いたいか、と言いたいですが、多分役人の方も企業の方も、内心では面倒くせえと思いながら飲み食いしてるんじゃないですかね。金のため、会社や同じ省庁の後輩やらのために飲み食いしているのだとしたらクソつまんないでしょうね。

役所と企業の線引きが出来なくなると不正が生まれるのは当たり前のことで、境界は守られるから境界たり得ます。

古代、新任の役人が地方に赴任する際に「坂迎え(境迎え)」といって赴任地の境界近くで、供応・接待される儀式があったそうです。接待というのは境界線上で起きるわけで、別に日本固有の不正でもないでしょうけれど、接待を防ぐには境界線を厳重に守るか、境界をいっそのこと無くすかするしかないですかね。

境界線を厳重に守っているのは、個人的なイメージではヨーロッパの一部の国々で、境界をいっそのこと無くしてしまっているのは、企業が議員を大っぴらに札束で殴っているアメリカです。前者は日本には無理そうだし、後者みたいになるのもちょっとなあ……。

第一、フジテレビホールディングスの外資比率問題では、東北新社とは状況が多少は異なるとはいえ、特別な接待をしていなくても総務省からは問題なしとのお墨付きをもらえました。接待しなくてもOKなほど、普段からそれなりにつながりがあるんでしょう。そう言えば、フジテレビには誰か政治家の子弟とか勤めていないんでしょうかね。そういった日常的に効果を発揮するようなコネクションがあるのなら、特別な接待なんか不要でしょうし。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?