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中央集権的なインターネット、分権的なその他の手段

今のインターネットは中央集権的です。と聞くと、想像するのは「1984」のような世界になりそうですが、通常誰もが利用しているサービスの大半が、特定の企業や団体が提供しているものです。

使っている分には何も気になりませんが、その特定の企業などでシステム障害・サーバ故障などトラブルが発生すると、そのサービスに依存している人たちの阿鼻叫喚がTwitterに溢れます。そもそもそのTwitter自体も当然ながらTwitter社が提供しているものです。

障害発生時だけの問題でもありません。利用している人のアカウントやその書き込みに関してその企業が停止や削除も基本的には思うままに出来ます。もちろん規約は存在しますが、たいていは何がどのように規約違反で使えなくなったかなんていちいち伝えてくれません。普通にしていればそうそうアカウント停止なんてならないと思いますが、あくまで権限は利用者側ではなく提供側に存在します。

そういう点から見れば、おそらくあらゆるSNSは中央集権的です。その逆として古くからある電子メールは、どこか特定の一つの企業が電子メールというサービスを牛耳っているわけではありません。

つまりは電子メールは中央集権的ではなく、分散的にサービスを利用出来ます。世界中の全ての人間が電子メールを一斉に使えなくなる自体ということはまず起こり得ません。

しかし、特定の個人をピックアップして考えると、電子メールを使えなくすることはそれほど難しくはありません。その人のメールアドレスを提供している企業(プロバイダやウェブメール業者)、ネット回線事業者が特定のメールアドレスを遮断・利用停止することは理論的には可能です。実際に行うかはともかくとして。

もっと大規模にするなら、ICANNのようなドメイン・IPアドレス・DNSを管理している団体が一つのドメインを潰すことも出来ます。もちろんそんなことしないでしょうけど。

想像しやすいのは、どこかの政府が反体制派の活動を妨害するために、ネット遮断やメール傍受したりすることでしょう。

電子メール以外のあらゆるサービス・アプリケーションでも、利用しているデバイスやOSで使えなくすることもあり得なくはないです。

例えば、スマホ・タブレットでは使用するアプリケーションは、iOSならApple、AndroidならGoogleの審査に通らないと配布できません。Androidなら野良アプリとして、apkファイルを直接ダウンロードしてインストールすることも出来ますが、iOSだと端末をいわゆる脱獄化しないと出来ません。第一、野良アプリや脱獄によってむしろセキュリティ的には弱まります。

結局のところ、インターネットを利用する限りはユーザーのみでの完全に自由な利用は保証されていません。

中国のグレートファイアーウォールはその最たる障害ですが、当局が本気で取り締まれば自由に利用できず、情報を得ることが出来なくなります。

今はあらゆる情報がネットから得ることが出来るようになりつつあります。しかし、二昔前くらいまでは、紙や口コミのリアル媒体でなければテレビ・ラジオがメインの遠隔での情報入手手段でした。

テレビやラジオを伝えてくれる電波はネット回線と異なり一方通行です。ただ、出力するアンテナと受信するアンテナの間には遮るものがありません。正常に送信されていれば、後は受信装置だけで情報を得ることが出来ます。

東西冷戦時代では、東側で情報統制されていた国の人々でも、アンテナさえあれば西側の放送を見聞きすることは出来ました。もちろん距離が近い必要はありますが。今でも北朝鮮向けに日本・韓国・アメリカが短波ラジオ放送を行っています。

電波妨害されることもありますが、インターネットを遮断する方が政府当局としても楽です。逆から言えば、短波放送は反体制的な活動には有利な情報伝達手段となります。ただし、普通に相手側にも受信されてしまいますので、極秘情報のやり取りには使えません。

デバイス間の近距離通信を目的とするBluetoothを用いて、スマホなどでのみのネットワークを形成するアプリ・サービスも存在します。実際に香港でのデモ活動でも使用されていたそうです。

そういうものを使えば、圧政下の反体制活動でも役立つでしょうけれど、テロリストによるテロ活動にも容易に利用出来てしまうところが悩みどころでもあります。

Bluetoothを使った、端末オンリーでのメッシュネットワークは間違いなく非中央集権的、分権的、分散したネットワークです。中央が暴走したときの防波堤になり得る強力な技術です。しかし末端が暴走するツールにもなり得ます。

結局、情報伝達手段においても、権力と秩序の関係は変わらないのですが、何か一つに手段を限るのではなく、ネットも電波もBluetoothも自由に利用出来るの方が、何かをどこかに停止や監視される状況よりも良いですよね。

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