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AIロボット時代における仕事に関するイメージに関するイメージ

 人工知能(AI)やそれを備えたロボットの登場により、人間の仕事が奪われるのではないか、という議論がここ数年かまびすしくなってきました。大まかに分類すると以下の三つに分けられる気がします。

・世の中のあらゆる仕事・作業はAIロボットによって代替されうるようになる
・世の中の一部の仕事(特に比較的低賃金のもの)はAIロボットに代替される
・AIやロボットには決して出来ない、人間らしい仕事が残る

 一つ目の意見については、さらにそこから二つに分かれます。一つは、将来の人間社会はコンピュータに事実上支配されるような世界になるという悲観的なものと、労働から解放された人間が「人間らしい」生き方をできるようになるという楽観的なものです。
 コンピュータに人間が支配されるという悲観的な未来は、ここ100年の間に様々な小説や映画や漫画やアニメで取り上げられているので、誰でも想像しやすいでしょう。人間対コンピュータの戦いであり、レジスタンスの結果、人間側が勝って大団円、といった感じですかね。個人的にはその後の社会をどうやって作っていくのだ、という気がしないでもないですが、それは野暮な話しかも知れません。
 一方、AIロボットが全ての仕事をやってくれるようになるので人間が働かなくて済むパラダイス的な未来は、さらに二つの見方から批判されます。一つは当然ながらコンピューターに支配されるのではないかという懸念と、もう一つは「働かざる者食うべからず」という倫理・道徳上の問題です。
 仕事をして収入を得てそれで生きていく、というのは人類が人類では無かった頃から存在する営みです。しかしその一方で、古代から近代まで、自分では具体的に飯の種を稼がない貴族階級が存在していました。ただ稼がないとは言っても、政治に関わっていたり、財産からの収入を得たりしていましたので、その点では現代の職業政治家や資産家と大差ないでしょう。
 まったく働かない、しかも人類の大多数がAIロボットからの「あがり」で飯を食うという社会が道徳的に許されるのか、そもそもそのような社会が訪れたときに、勤労という道徳観は維持できるのか、という問題になってきます。おそらく、そのような時代が来たら新しい道徳観が社会的合意を得ていることでしょう。

 二つ目の「一部の仕事だけAIロボットに代替される」という意見に関しては、よくマスメディアで「AI時代でも生き残る仕事はこれだ!」といった感じで取り上げられています。ただ、どれも的外れというか、そもそもAIロボットは進歩・進化していけばどんな仕事や作業でも行えるのではないでしょうか。どこかに限界があるのかも知れませんが、それはおそらく今の人類には分からないでしょうし、むしろ問題はどこまで代替させるかをAIロボットの能力的な限界では無く、サービスを受ける側の人間の忌避感が決めてしまうと思います。
 具体的には、
・医者がAIロボットになったとして、自分のガン手術を完全に任せることが出来ますか?
・自分のかわいい大切な子どもをAIロボットしかいない学校に進学させますか?
・ロボットが収穫しロボットが調理した料理だけを食べて生きていきますか?
 といった選択に直面したときに、人間はどちらを選ぶでしょうか? ロボットに任せたくない、あるいはロボットが人間の仕事を奪うべきではない、という考えからロボットを否定する人はいると思います。しかしその一方で、ロボットは生身の人間よりもミスが少なく、疲労もせず、おそらく長期的な費用は安く済みます。それでも人間を選びますか?
 あと、比較的低賃金の仕事(店員やドライバーなど)からAIロボットに代替されると言われますが、最初の頃のAIロボットは非常に高価でしょうから、むしろ高賃金の仕事(医者、金融関係、弁護士など)の方から先に変わっていくのではないでしょうか? 経営者の思考からすると、人件費を安く済ませたいのですから、高賃金の仕事をAIロボットに変えて安くして、低賃金の仕事を多くの人に奪い合わせてさらに賃金を安くする、と考えるのが妥当だと思います。AIロボットの費用が月に50万円かかるとしたら、月給100万円の医者と月給15万円のコンビニ店員のどちらをクビにしてロボットに替えるか、という問いに対しては答えは一つです(病院とコンビニを一緒に経営している経営者はいない、というツッコミは無しで)。

 三つ目の「人間でしか出来ない仕事がある」という考え方も、ある程度は事実でしょうがおそらくその期待の多くは裏切られると思います。人間の感情に関わる部分はAIロボットは理解出来ず、その範囲においては人間しか人間の相手は出来ない、と考えているのだと思いますが、そのような仕事は本当にごく一部だと思います。一般的には、教育やカウンセリング、人の心に寄り添い親身になって対応する仕事がAI時代でも生き残る、と思われがちですが、それも願望が強いのかな、と思います。相談や勉強中の人の脳波や脈拍など身体データを精密に測定してそれに応じて話しかける内容を細かく変更出来るとしたら、教育も相談も非常に強力な武器を得ていることになります。もちろん、そんなロボットに教えられたくないという気持ちは残ると思います。結局のところ、前述の通り、AIロボットの機能の上限で決まるのではなく、サービス受給側の人間の気持ちやかかるコストによって選択されるのではないでしょうか。

 以上、AIロボットの普及した未来予想についての意見についての意見を述べましたが、結局のところみんな自分が信じたいことを信じているような気がします。「将来AIに取って代わられる仕事」を記事として出しているメディアで、そもそもメディアの仕事、記者の仕事自体がAIに取って代わられる仕事として取り上げているケースもあまり無いんじゃないですかね。もしくは、既に取って代わられる仕事として覚悟を決めているのかも知れませんが。

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