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2010年代のACLを席巻した広州恒大(広州FC)の終わり?

サッカーファン、特にJリーグのACL出場経験があるクラブのファンやサポーターであれば、広州恒大という中国の強豪クラブのことを記憶している人は多いと思います。

2010年に、不動産企業の中国恒大集団がオーナーになってから改名し、大量の資金を投下して監督も選手も買いまくりました。翌年早速優勝してアジアチャンピオンズリーグに参戦。2013年にアジアチャンピオンになりました。現在ガンバ大阪に所属するキム・ヨングォンが何年もプレーしていましたし、2015年のACLではガンバ大阪を準決勝で破りそのまま優勝。あの時の広州恒大は強かったですね。2試合でのガンバの得点は相手のオウンゴールだけでした。その後も中国超級リーグでは連覇を重ねましたが、昨年は超級リーグもACLも変則開催だったからか優勝は出来ず。

今年のACLではそもそもリーグの方針としてコロナ禍もあってACL参加辞退となりましたが、それ以前に広州FC(今はサッカー協会の方針で企業名は強制的に外されています)というクラブどころか、恒大集団という企業そのものが倒産しそうになっています。

不動産事業以外にも多角化していましたが、大元の不動産事業が拡大に次ぐ拡大の方針がついに高転びしてしまい、経営悪化が知れ渡ると銀行からの融資が止まる上に、取引先企業への支払が延滞します。恒大集団からお金を受け取る側の企業は早め早めに決済を求めますし、逆に恒大集団に支払う側は当然足下を見ます。経営悪化がさらなる悪化を招くのはどこの企業でも同じですが、こうなると復活するにはどこかがお金を大量に入れるしかありません。

通常の資本主義国家であれば、事実上の身売りでスポンサー企業が買収して資金を投下するか、あるいはJALやゴールドマンサックスのように政府や金融当局が公的資金を注入します。

しかしどうやら恒大集団は対策が取れないようで、資産の投げ売りだけで手元資金を確保するのがやっとです。中国政府も一昔前みたいに大規模な破綻を絶対に防ぐ方針ではありません。地方政府の企業ですら社債のデフォルトを一部で認めるくらいになってきましたので、恒大集団の行く末も暗澹たるものに見えます。

破綻規模としてはかなりのものになりそうです。参考になるか分かりませんが、日本の不動産企業の破綻として代表的な、旧住専各社の負債総額は13兆円でした。実際に整理した後の回収不能な債権はその半分くらいでした。当時の日本のGDPは約500兆円でしたので、GDP比で1%〜2%程度の規模ということになります。

中国恒大集団の負債総額は8月末のBloombergの記事では1兆9700億元とありました。2020年の中国のGDPは約101兆6000億元だったそうですから、恒大集団の負債額はGDP比率で2%弱ですので、おそらくこの恒大集団の破綻が起きれば、日本での旧住専の破綻並みの混乱になりそうです。

実際に恒大集団が破綻するか、救済されるかは中国当局の胸先三寸ですが、ここまで経営状態が厳しくなると広州FCの選手・監督の爆買いは無理でしょう。広州FCは今はアリババグループとの共同経営だそうですが、アリババも少し前に政府に弾圧レベルの制裁を食らっています。

まさに栄枯盛衰というより他ありませんが、広州1チームの問題で済むとは限りません。今の中国政府の各界への締め付けを見ると、中国のプロサッカー自体も今後どうなるか、安心している関係者はいないでしょう。

習近平の独裁体制が近年さらに固まっていくに連れて、核心たる習近平思想に反する業界を、共産党や政府が締め付ける騒動がいくつも発生しています。私教育産業、ゲーム産業、IT産業、芸能産業は、第一次産業でも第二次産業でもなく、共産党としては思想的に叩きやすい業界です。第三次産業の一つであり、エンターテイメント業界の中でも目立つプロサッカーも槍玉に上げられる可能性もあります。

もしそうなれば、ACLでの中国クラブとの対戦も減るでしょうし、寂しくなりますね。今のガンバがそもそもACLに次いつ出られるか分からないということは置いておいて。

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