文化は常に同時代的であり、過去は変えられない

アイザック・アシモフにはSFもミステリも科学ネタのコラムもありますが、読んだ中で覚えているネタにこんなものがありました。

「読めるけど発音できない英単語は何か?」
というもので、正解は「POLISH」。

全て小文字で「polish」であれば、「ポリッシュ(磨く)」という動詞ですし、頭文字だけ大文字なら「Polish」で、これは「ポーランド語、ポーランド人の」という意味になり、「ポウリッシュ」と発音します。

では、全部大文字で表記されている「POLISH」だとどうなるか?

意味が分からないと読めても発音できない、ということで、膨大な知識とうんちくを持っていたアシモフらしいネタであり、これもミニミステリに使われていたものです。

英語の単語遊びというのは、英語文化圏ではよくある遊びで、子どもが勉強のためにするだけではなく、大人でも結構真面目に楽しみます。少し前から世界中で大流行りしている、wordleはまさにその代表格です。

昔のミステリーでも英語圏の言葉遊びはよくネタにされていて、アガサクリスティがマザーグースを使った作品をいくつも書いています。代表作は「そして、誰もいなくなった」で、マザーグースの「10人のインディアン」が出てきました。

こういう話は、没頭するにはその時代の文化や生活、歴史、時代背景を知らないと出来ませんので、現代日本人が自分のことのようにすんなり作品世界に入り込むことは難しいです。しかし、逆にその頃のイギリスの片田舎における社会の一端を楽しみながら感じることが出来ます。これは、辞書や学術書のような杓子定規な文章では味わえない利点です。

今生きている時代よりも遙か前に出来た作品を読み、聞き、観ることは、過去の文化や人々の暮らしぶりなど、数字上のデータでは感じられないものをまるで同時代におけるもののように感じることが出来ます。

現代の法律、社会、ルール、マナーに合わないことがあるのは当然のことで、その不適合を理由にその作品を拒絶したり改編(改悪)したり、あるいは消滅させたりするのは、まさに不合理なことです。

スピルバーグ監督が言っているのはまさにそういうことであり、ポリコレ的に過去の作品を許せない・存在してはいけないというのなら、そういうアレコレ言っている人らが、過去の名作を超えるような作品を新たに生み出せばいいんじゃないですかね。

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