ブータンみたいな観光税は導入できないとしても

ブータンは数十年前から観光税を課してきたそうで、観光客の数と単価をコントロールしてきました。それでも、コロナ禍前にはオーバーツーリズム気味だったそうで、2022年9月、新たに観光客を受入開始する際に観光税の仕組みを変更し、事実上の値上げを実施しました。

これにより、観光客の数をコントロールして、観光税から得られる財源を得ようとしていました。

しかし、この単価設定は上手く行かなかったようで、受入再開から1年経った2023年9月になって、この観光税を大幅に引き下げました。

もともと、外国人観光客の大半を占めていたインド人は観光税が免除されていて、昨年9月からの新制度でも非常に低額に抑えられています。それでも、ゼロ円から約2100円という「値上げ」もあって、インド人観光客がかなり減ったということです。

小さい国だからこそ可能な、観光税の細かな設定変更だと思いますが、これを日本、あるいは京都などの特定の自治体で実施しようとしても上手く行かないでしょう。というか不可能ですね。

外国人観光客は来てほしいが、特定の場所に一気に集中せずにまんべんなく散らばって欲しい、というのは受け入れ側の本音でしょうけれど、観光客側にしてみたらそう上手く行くわけがありません。みんなが行きたい場所・見たい場所に集中するでしょうし、それは日本国内から来る日本人観光客だって同じです。

むしろ京都でも大阪でも特に見るべきものも無さそうなビジネス街にも外国人観光客がいることの方が驚きです。日本人観光客の方が名所名物にこだわり過ぎているのかも知れません。

京都では事実上の観光税に当たる、「拝観税」の導入を目論むも強烈な反対を食らって失敗した歴史があります。かつての二の舞をしたくない京都市が観光税を導入するとは思えませんが、そもそも自治体レベルですと観光税を課すとしても、観光客から直接ではなく、施設経由での間接的なものにせざるを得ません。国家レベルの観光税なら、ブータンのように入国時に徴収することも出来るでしょうけれど。

また、先述のように何も無さそうなビジネス街でウロチョロしている観光客から、どうやって観光税を徴収するのか、とも言えます。拝観料や入場料がない場所で過ごす観光客は、地元にお金を落とさず、それでいて道路などのインフラは利用するフリーライダーみたいなものです。さすがに何かの飲み食いはするでしょうけれど、その場所ではなく東京のコンビニで買った飲食物を持ち込まれたら、地元に落ちるお金はゼロです。

円安が続く中、まだまだオーバーツーリズムの問題も続くでしょう。連邦制ではないからこそ実施出来たふるさと納税には、東京の自治体の不満は高まっていますが、日本全体で観光客が落とすお金と必要な負担を均衡させていく施策も必要でしょうね。

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