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八重桜の力強さ

自宅の近くに八重桜が道沿いに並んで植えられています。毎年、ソメイヨシノなどが散った後、
「桜も散っちゃったな」
と思ったくらいに綺麗に咲いてくれています。

一般的な桜として知られるソメイヨシノなどでは、満開の時までほぼ葉っぱは見かけません。ただひたすら薄いピンク色を輪郭も曖昧なまま一面に広げて目を楽しませてくれます。

しかしそれも数日で散り始め、葉桜の割合が増えていきます。

個人的には普通の桜の葉桜状態はあまり好きではありません。薄めの色の繊細な花びらと、命が今まさに噴き出そうとしている若々しい緑の葉っぱとの対比がバランスが悪く、葉の緑が勝ちすぎているように思えるからです。花:葉の割合が8:2くらいの状態でも前者の分が悪く見えてしまいます。

しかし、八重桜は牡丹桜という異名のように、密集しているので厚くぼてっとした重たい印象さえ与える花です。色も濃く、若い葉と競り合っても負ける気がしません。というか花と一緒に葉も付けます。八重桜は葉とコラボしているのが常態なので、違和感を覚えないのも当然かも知れません。

桜は散るから美しい、という人もいますが、八重桜にはすぐに散らない力強さもあります。これはこれで桜の良さ、というかこれも桜の良さでもあります。桜は儚さの象徴だけではありません。

今年の春は桜を楽しめるような状況ではありませんでした。外出自粛を無視して花見をしている人達についてはどうかしているとしか思えませんが、宴会ではない花見であっても、ただ道で咲いている桜の側を通っても、綺麗さを素直に受け入れるのも難しい状態でした。

そんな中でも近所で見かけた八重桜に、またいつもの「強い」桜を思い起こしました。

願わくば来年の春は桜に「強さ」も「儚さ」も普通に感じられますように。

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