人工知能の代表なくして課税無し?

人工知能、AIや高度化したロボットがいずれはあらゆる分野・作業・業務を行えるようになるでしょう。技術やテクノロジーはひたすら進歩していきますし、それを阻む圧力よりも進める圧力の方が強いはずです。人の仕事を奪うな、という倫理的かつ曖昧な主張よりも、経営層が人件費圧縮のためにAI・ロボットを導入することは資本家からは歓迎されます。日本のように出生率の低下に悩み、かつ大規模な移民の導入も出来ない国にとっては当然の選択肢のはずです。

それによって仕事を失う人が増えると、当然ながらその人が払っていた税金が減る国家や自治体にとっても死活問題になります。そうすると、「ロボット税」のような考えが出てきます。

ゲイツ氏の「ロボットに課税する」は正しいか 2017年3月23日
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/283738/031600039/
ゲイツもかつて提案した「ロボット税」、いまこそ導入すべき? 2019年6月13日
https://www.technologyreview.jp/nl/should-we-tax-robots-a-debate/
「ロボット税」は是か非か 雇用と税収めぐる難問  2020年1月9日
https://jp.wsj.com/articles/SB12101601170038884014404586129421397501248

引用記事には初出日も書いてみました。ロボットを導入して大幅に人件費を削減した企業に対して、特別なロボット税を課すべきだ、という意見は一部の人達から支持されています。

当然ながら産業界の大半からは無視あるいは反発されていますが、ベーシックインカムの議論同様に、今後は荒唐無稽な空想としてではなく、真剣な議論も始まっていくでしょう。

今あるロボットにしろAIにしろ、また将来的に実現していくそれらにしても、まだまだ人からの命令に従って動作するものですし、一から十まで自律して行動するレベルには達しませんが、いずれはそのようにもなるでしょうし、そうなるとますます人の仕事を代替していくでしょうし、さらにはますますそれらロボット・AIに対する課税を求める声も強くなるはずです。

しかし、それらのある程度自律し始めたロボット・AIに関して、ロボット税を課すことになったとすると、「税金」という概念を理解している人工知能がその課税に対する見返り・対価を要求し始めたらどうなるでしょうか?

ここまで考えを進めるとSFの世界にどっぷりハマりますが、事前に思考実験していてもいいでしょう。

AIやロボットに対する課税から生まれた税収を、生身の人間ではなくAI・ロボットのために使用するように要求されたら?

そしてその要求を他の人工知能群も支援したりボイコットやデモをしてきたりしたら?

アメリカ合衆国の独立前、イギリス本国からの干渉に対して
「代表なくして課税無し」
というスローガンが起き、最終的にはアメリカ独立に至りましたが、AIが政治への関与を求めてきたら?

現代社会は、血統や身分ではなく、能力や実績で立場・権限が与えられます。では、生身の人間よりも素早く思考し判断し行動することが出来るAI・ロボットは人間よりも優れた存在である、と認めなくてはならないのでしょうか?

人間を表す「ホモ・サピエンス」という言葉は、ラテン語の「賢い人」という意味から来ています。かつて存在した他の人類よりは、生き残った結果から考えると賢かったのだと思いますが、人類よりも賢い、自律的な存在が生まれてもなお、人類は「賢い人」という称号を保ち続けられるのでしょうか。


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