収支トントンは本当のトントンではない

会社経営の経験がある人や経理業務に携わっているような人であれば容易に分かることと思いますが、収支トントン(黒字でも赤字でもない)ような決算・経営は、本当の意味ではトントンではないのですよね。

マジで書類上の収支(損益計算書上であろうとキャッシュフロー・キャッシュストック上であろうと)がプラマイゼロだと、もし何か特別な出費があった時に即座に窮することになります。単年だけ決算上で赤字になっても、内部留保なり緊急融資なり受けられればその場はしのげますが、それがずっと続いていけばいつかは破綻します。

さらに問題は、何かあったときにヤバいという状況は、何か新しいチャレンジをする余裕が無いのです。今の事業がそれなりに収益をもたらしているとしても、いつまでも同じとは限らず、必ず景気の上下はあり、さらに業界全体が沈下することもあり、会社単位だけでは将来は計算できません。

だからこそ、新しい事業、商品、サービスに手を出す余裕が常に必要で、その余裕が無ければジリ貧です。いつかは市場からアウトを宣告されてしまいます。

ということで、収支トントンなんて幻想であり、儲けた上でそれを新しく利益を生むものに投資した上で、赤字になっていなければようやくそれで本当の意味での収支ギリギリトントンといったところになります。

これは大企業レベルでも個人商店レベルでも同じ話です。まあ個人商店の場合は儲からないので畳むのも簡単ではあります。借金がかさんでも自己破産してしまえばなんとかなります。その後は大変ですが。

多くの日本企業が内部留保を貯め込んでいることを批判されがちですが、生産や人的投資もせずに貯め込んでいるのなら確かに批判されてしかるべきかも知れません。ただ、大昔の吉野家みたいに、今から売上が無くなっても1年2年は社員を養える、というくらいの覚悟を持って貯めているなら、別に良いんじゃないかなあとも思います。

もちろん、株主にしてみたらふざけんなと言いたくなるでしょうけれど、そうなってくると上場企業よりも市場シェアの大きい非上場企業の方が従業員を大事にしているケースも多いのでしょうか。非上場のためにガバナンスもコンプライアンスもグチャグチャな企業もあるので、結局はケースバイケースになんですよね。

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