見出し画像

天下泰平な時代とは

どれくらい平和が続いたら天下泰平と言えるでしょうか?

日本は1945年から、対外戦争も内戦も起きていません。75年経ちましたが、世界的には大戦はなくとも紛争は絶え間なく続いていますので、イメージ的にはあまり平和感はありませんが少なくとも日本においては歴史的に見れば平和な時代と言えるでしょう。

天下泰平の代表格とも言える江戸時代では、1638年に島原の乱が終わってから大政奉還まで平和だったと思われがちですが、その間にも様々な戦いが起きています。

1643年のヘナウケの戦い
1669年のシャクシャインの戦い
1789年のクナシリ・メナシの戦い
1806年の文化露寇
1807年のシャナ事件
1837年の大塩平八郎の乱

などなど、ペリー来航から始まる幕末の混乱以前にも内乱・外寇はありました、大阪で起きた大塩の乱以外は全て今の北海道に当たる地域ですので、正確に日本国への侵略、日本国内での内乱と言えるかどうか微妙かも知れませんが、そもそも国境という概念は近代国家が成立してからの話ですので微妙なのは当たり前です。

それでも、1669年から1789年の120年近くは大きな内乱・事件もありませんでしたので、現代の75年の平和を比べて考えると、まだまだ遠い存在です。

江戸時代以前はどうかというと、室町時代は省きましょう。半分は戦国時代ですし残り半分もほとんどが南北朝の争乱ですからひたすら戦い続けた時代と言えます。

鎌倉時代でも1221年の承久の乱と二度の元寇(1274年・1281年)がすぐに思い浮かびますが、その間でもその後でも、
1247円の宝治合戦
1285年の霜月騒動
1305年の嘉元の乱
など、御家人と北条得宗家との戦いはいくつも行われています。やはり天下泰平とは遠い時代でもあります。

それ以前となると平安時代となりますが、源平合戦以前でも

935年〜941年の承平天慶の乱
1019年の刀伊の入寇
1156年の保元の乱

など歴史の教科書に必ず載っているレベルの争乱と平行して、蝦夷征討が坂上田村麻呂の時代から後三年の役まで300年以上あったわけですので、やはり数十年レベルでしか平和な時代がありませんでした。

もちろん、これら明治より前の時代における戦いは、19世紀末から20世紀にかけて成立した「総力戦」とは全く異なります。戦い自体が局所的である上に、戦いに関わる人も武士(軍人)階級プラス徴発された人達くらいでした。「欲しがりません勝つまでは」のスローガンで代表されるような、銃後における国民総動員体制というのは第一次世界大戦から始まるものです。ヨーロッパでもそれ以前は貴族と傭兵が戦争の主力でした。経済への悪影響や重税・徴用によって一般人も迷惑は被りましたが、戦争そのものが国民一人一人の関心事になったのは近代国家からです。

だからといって昔の方が良かったと言うわけでもありません。それ以外の不便さや問題点が半端ないですし。江戸時代はこんなにスローライフだった!とかゆったりした時代だったとか言う人がいますが、そんなわけない。武士に無礼を働けば斬り殺されるし、火事と喧嘩は江戸の華だし、そもそも何度も大飢饉が起きて餓死者も相当出ているし。

ともかく、今の日本は平和です。こう書くと偽りの平和だとかもうすぐ戦争が起きそうとか言われかねませんが現実にそうですし。ただこの平和が平和ではなくなるかも知れない、という危機感があってこその75年の平和だとは思います。泰平の世に慣れて当然のものと思うことの方が平和を破ってしまうことになるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?